第11話 どいつもこいつも船頭
文字数 2,084文字
なんだか騒がしい。しかもゆさゆさと────。
ハッと気づいて瞼 開くと屈強な兵士に背負われていることにクラウス・ライハラは驚いた。
確か記憶喪失の娘に連れ去られアイリのいる場所に────ああ、あの記憶喪失の娘はどこに行った? とんでもない魔女だと皆 に知らせないと。見回すと剣 を抜いた兵士だらけだった。
「うぎゃぁ! 馬鹿やろうぶち殺してやる!」
「おらぁ! さっさともう1発お見舞いしやがれ!」
その乱暴な口利きにアイリの父は視線を向けると兵士らの先に見覚えのある甲冑 を着て歩くものが見えた。あれはアイリにこしらえた甲冑 だとすぐに思い当たった。
「下ろしてくれ。自分で歩ける」
アイリの父は兵士の群衆の先頭を歩く娘の方へ走り出した。騎士や兵士らを躱 しながらどうしてデアチ国の騎士や兵士らが馬を持たぬのか怪訝な面もちになった。
どうやってこいつらは国境 近くまで来たのだ!? まさか歩いて来たのでもあるまい。
「アイリ! アイリ!!!」
そうクラウスが声かけると縛 られている小娘の縄 をつかんでいる騎士が振り向いて顔色を変えプイと顔を逸らした。
父親は娘に追いつくと問いただした。
「どうして──どうして無視するんだ!?」
「クソ親父! お前、この魔女を手助けしてただろう!」
「手助け!? いいや私はその魔女に掠 われてきたんだ。手助けなどしてない」
いきなりアイリは振り向いて下唇を突き出した。
「クソ親父、お前、落ち掛けたこいつを空飛ぶベッドに引き上げようとしただろぅ!」
父親は思い出し困惑した。
「ち、違うぞ。あれはその魔女の手を引き剥 がし落とそうとしてたんだ」
娘の眼が座って非難めいたものに見えた。
「アイリ、お前は何を見ていた。お前の父親は本当に魔女を落とそうとしてたぞ」
2度も吹き飛ばされ首が痛むのか女剣士ウルスラ・ヴァルティアを気取るテレーゼ・マカイが首を揉みながら口添 えした。
唇をへの字に曲げ小鼻をひくつかせたアイリは当たるように捕縛 された魔女の尻を剣でつついた。
「痛い! 魔法を放ってるではないか!」
キルシが攻撃するとかなり先で爆発し新たに迫ってきていた騎馬隊が土砂諸 とも吹き飛ばされ高いところからバラバラと地面に落ちた。
「アイリ、お前どこの兵と争っているのだ!?」
惨たらしい光景に思わずアイリの父が問うと女騎士ヘルカ・ホスティラが答えた。
「クラウス殿、我々は侵入してくるイルブイの兵士らを駆逐しているのだ」
それを知ってアイリの父は顔を強ばらせた。
蛮族は総勢で数十万の兵がいると聞いた事があった。それをたった5、60の兵で迎え撃つなど常識では考えられないことだった。だが今し方吹き飛ばされたのは30騎ほど。遠方の土ぼこりから本体はもっといる。
クラウスがそう考えている矢先にたった1人で向かってくる騎馬が見えた。
だがそのものの馬の首の際から見ると鎧 は身につけておらず僧侶 ぽい服装をしている。もしや魔導師 と気づきクラウス・ライハラが危険だと叫ぼうとした矢先に爆炎が向かってきた。
「痛い! 馬鹿野郎がぁ!!」
アイリが腰縄 を握る捕縛 された魔女が喚 いた寸秒前方の空気が濁り爆炎が壁にぶつかったように上と左右に弾かれた。
「上手い! うまい!」
剣をプスプス突き立てていたアイリが手のひらを返したように誉めるとキルシが半身振り向いて頭 振った。
「我 じゃないぞ──誓って我 じゃ─」
それを聞いたアイリは、じゃあ誰だと顔を巡らせ父親で視線を止めた。そのクラウス・ライハラが両手を突き出したまま固まって娘に苦笑いを浮かべアイリがキレた。
「やっぱりお前、攻撃魔法使えるじゃん!治癒魔法 しか使えないって散々今まで嘘こいていたな!」
アイリが喰ってかかっているといきなり騎士や兵士を合わせたアイリら全員が氷の壁に取り囲まれた。
「ほらぁ! 何してる!? さっさと壁吹き飛ばせよ!」
悪辣 な魔女にそう命じるとキルシは振り向いて言い返した。
「そしたらここにいる全員吹き飛ぶんだぞ! いいのか!? いいんだな!?」
アイリは慌 てて魔女の綱 を手繰り寄せると耳元に囁 いた。
「いいわけないじゃないか。お前、死んだら苦悩の河 に放り込んでやるぞ。帰り道知ってるのは俺だけだからな」
それを聞いて目を丸くしたキルシは否定した。
「そんなわけ──あるか! 黄泉から帰るなんて嘘っぱちだ!」
2人の会話を聞いていた女剣士ウルスラ・ヴァルティアことテレーゼ・マカイが口を挟んだ。
「嘘ではないぞ。我 はあそこからアイリに連れて来られたんだ」
その打ち明け話に女騎士ヘルカ・ホスティラがガッツリ食いついた。
「き、貴様ぁ! 得体の知れぬ剣士だと思っていたが、ゾンビだったとは! その首叩 き斬 ってくれるわ!」
「だぁ! 誰がゾンビだぁ! 脳筋の貴様などに落とされる首など持たぬわ!」
「いいんだな! お前ら全員吹き飛ぶんだぞ!」
魔女にだめ押しされこの期 に及 んで好き勝手なことばかり言い合うものらにアイリは目眩 を感じ始めた。
「お前ら皆 めんどくさい!」
そう言い捨てアイリ・ライハラは片手握る長剣 をブンブンに振り回しだした。
ハッと気づいて
確か記憶喪失の娘に連れ去られアイリのいる場所に────ああ、あの記憶喪失の娘はどこに行った? とんでもない魔女だと
「うぎゃぁ! 馬鹿やろうぶち殺してやる!」
「おらぁ! さっさともう1発お見舞いしやがれ!」
その乱暴な口利きにアイリの父は視線を向けると兵士らの先に見覚えのある
「下ろしてくれ。自分で歩ける」
アイリの父は兵士の群衆の先頭を歩く娘の方へ走り出した。騎士や兵士らを
どうやってこいつらは
「アイリ! アイリ!!!」
そうクラウスが声かけると
父親は娘に追いつくと問いただした。
「どうして──どうして無視するんだ!?」
「クソ親父! お前、この魔女を手助けしてただろう!」
「手助け!? いいや私はその魔女に
いきなりアイリは振り向いて下唇を突き出した。
「クソ親父、お前、落ち掛けたこいつを空飛ぶベッドに引き上げようとしただろぅ!」
父親は思い出し困惑した。
「ち、違うぞ。あれはその魔女の手を引き
娘の眼が座って非難めいたものに見えた。
「アイリ、お前は何を見ていた。お前の父親は本当に魔女を落とそうとしてたぞ」
2度も吹き飛ばされ首が痛むのか女剣士ウルスラ・ヴァルティアを気取るテレーゼ・マカイが首を揉みながら
唇をへの字に曲げ小鼻をひくつかせたアイリは当たるように
「痛い! 魔法を放ってるではないか!」
キルシが攻撃するとかなり先で爆発し新たに迫ってきていた騎馬隊が土砂
「アイリ、お前どこの兵と争っているのだ!?」
惨たらしい光景に思わずアイリの父が問うと女騎士ヘルカ・ホスティラが答えた。
「クラウス殿、我々は侵入してくるイルブイの兵士らを駆逐しているのだ」
それを知ってアイリの父は顔を強ばらせた。
蛮族は総勢で数十万の兵がいると聞いた事があった。それをたった5、60の兵で迎え撃つなど常識では考えられないことだった。だが今し方吹き飛ばされたのは30騎ほど。遠方の土ぼこりから本体はもっといる。
クラウスがそう考えている矢先にたった1人で向かってくる騎馬が見えた。
だがそのものの馬の首の際から見ると
「痛い! 馬鹿野郎がぁ!!」
アイリが腰
「上手い! うまい!」
剣をプスプス突き立てていたアイリが手のひらを返したように誉めるとキルシが半身振り向いて
「
それを聞いたアイリは、じゃあ誰だと顔を巡らせ父親で視線を止めた。そのクラウス・ライハラが両手を突き出したまま固まって娘に苦笑いを浮かべアイリがキレた。
「やっぱりお前、攻撃魔法使えるじゃん!
アイリが喰ってかかっているといきなり騎士や兵士を合わせたアイリら全員が氷の壁に取り囲まれた。
「ほらぁ! 何してる!? さっさと壁吹き飛ばせよ!」
「そしたらここにいる全員吹き飛ぶんだぞ! いいのか!? いいんだな!?」
アイリは
「いいわけないじゃないか。お前、死んだら
それを聞いて目を丸くしたキルシは否定した。
「そんなわけ──あるか! 黄泉から帰るなんて嘘っぱちだ!」
2人の会話を聞いていた女剣士ウルスラ・ヴァルティアことテレーゼ・マカイが口を挟んだ。
「嘘ではないぞ。
その打ち明け話に女騎士ヘルカ・ホスティラがガッツリ食いついた。
「き、貴様ぁ! 得体の知れぬ剣士だと思っていたが、ゾンビだったとは! その
「だぁ! 誰がゾンビだぁ! 脳筋の貴様などに落とされる首など持たぬわ!」
「いいんだな! お前ら全員吹き飛ぶんだぞ!」
魔女にだめ押しされこの
「お前ら
そう言い捨てアイリ・ライハラは片手握る