第13話 皆さんそろって
文字数 1,993文字
イルブイ国遠征隊唯一の
軍国デアチを裏切ったのであれば、イルブイの味方。
「お主、なは何という?
「名前はキルシ。ほどけば手を貸すぞよ」
それを聞いてティモ・ヴェストラは汚らしい笑みを口元に浮かべ、内輪もめを続けるデアチ国の騎士らを見ながら細長い節くれだった指で小娘の
「お前1人かイルブイの魔導師は?」
蛮族の魔導師から問われ裏の魔女キルシは不機嫌そうに応えた。
「魔導師? 私は魔導師じゃない魔法使いだ。貴様は蛮族の魔導師か?」
「蛮族──ふん。蛮族ではない。誇り高い種族だ」
「どうでもいい。手を貸したらお前を殺さない」
「条件が違う────
「漆黒の溶けし岩石流、闇の王の足下、大陸をも灰で埋め尽くす赤竜の息吹き────」
悪辣な魔女が魔法呪文
「魔女が逃げたぞ!」
ふん! 逃げるものか! 貴様を殺さずに逃げるものか! そう意識がそれた寸秒、キルシは
「──爆裂の帝王、天空の──あっ! 違う────」
その瞬間、
「ひぃいいいい!?」
こ、こんな巨大な
辺り一帯に地鳴りが響き渡り言い争っているものらが顔を強ばらせ地面を見つめるといきなり立っていられないほど足下が揺れ動いた。
「お────い、みんな────さっさと逃げろ────」
声に振り向いたアイリ・ライハラは親父がなんであんなに遠くから声かけてるんだと唇をねじ曲げた。
一瞬、土石流を吹き上げ熔岩が空中高くへ飛び上がり巨大な岩が周囲へごんごんと降り始めた。
なっ、何かわからんが、攻め入る先で噴火が始まったのは魔導師ティモ・ヴェストラを向かわせたからか、とイルブイの遠征隊女大将ヒルダ・ヌルメラ目を丸くした。
しかしあの不甲斐ない魔導師1人の力であれほどの偉業を成し遂げることが────あっ、いかん!
地割れがすぐ目の前にまで広がってきた!
女大将ヒルダ・ヌルメラ慌てて行軍を止め退却を命じた。今や爆発は火山の様相を示し噴煙に混じり大きな岩をどんどん吹き上げて周囲へどすどす落としていた。
もうデアチ国の領土へ侵略するなどできる状況ではなくなり
あの馬鹿魔導師め! 被害が身内に出てどうするのだ!?
ヒルダ・ヌルメラが馬の腹を蹴って走らせようとした矢先に地割れから溶岩が吹き出し兵士達が飲み込まれ悲鳴をあげだした。
失策だった。
今回の侵略はどう見ても失策だった、と思いながら後足を流砂に取られたように溶岩が見える地割れに馬ごとずり落ちながら女大将は王に謝った。
「サロコルピ4世、失策をお許しあれ!」
直後イルブイの指揮官は真っ赤に焼ける溶岩流に飲み込まれた。
ふと気づくとヒルダ・ヌルメラは
ここはどこだ──? 噴煙あげる火口に落ち
女大将が
「お──い! 待ってくれ!」
だがすぐにその人影は見えなくなった。
どこに行けば道を見つけられるだろうか、とヒルダ・ヌルメラは考えると河を見つけそこを渡るということを思いついた。1度考えついたアイデアは消し去ることができず。彼女は
だがいくら歩いても人に会わず、困惑と焦りが募ってくるといきなり
その着てる
通り過ぎてゆく団体には見慣れたイルブイ国のものも見つけ彼女は最後尾の1人の後ろに忍び寄り口を押さえ込み列から引き剥がした。
木の幹の陰に引っ張り込んでヒルダ・ヌルメラは捕まえた男と顔を合わせると見知った男だった。
「大将!?」
「しっ! ここはどこだ!? お前がついて行ってた一行はどこに向かっている!?」
「こ、ここは黄泉の境です。大将、あの集団を追えば元の世界に戻れ────」
「黄泉だと! 死者の世界か!?」
女大将ヒルダ・ヌルメラは顔を引き