第1話 しゃれこうべ
文字数 1,700文字
情報提供者の漁師が殺され、翌朝大陸から離れたイウネ族の島からさらに北の海へむかうこと舟の櫓 を漕 い続けて午後。
「まだ見えてきませんね」
舟中ほどに座るイルミ・ランタサルは眉 に片手のひらの親指当て弱々しい陽射し遮 り舳 の方向をじっと見続けていた。
「それに靄 が出てきました。ノッチ方角は誤りませんよね」
櫓 を漕 ぐアイリの亭主にイルミが問うと彼が応じた。
「大丈夫です王妃 様。朧気 にも陽が見える間は」
そうノッチが言い切った直後徐々に靄 が濃さを増して前後左右の見通しが馬車 3台ほどになった。
「王妃 様、私 には方向がわかりません」
そうイルミの背後に座るヘルカ・ホスティラがか細い声で訴えるとイルミが応えた。
「私 とて同じです」
そう告げ王妃 は陽はと仰ぎ見たが、どこもかしこも乳白色の光り放ち朧気 にも陽の差してくる向きさえわからない。
かたんかたんと音がしてイルミが顔を下ろすと前の席でアイリ・ライハラが船底に倒れたナイフを見つめていたのでイルミは尋ねた。
「何をしてるのですアイリ?」
「いやぁ、倒れたナイフの向きでわかるかなぁと。でも毎回違う方へ倒れるんだ」
「当たり前です」
そう言い捨てイルミ・ランタサルは少女の頭を閉じた扇子 で叩 いた。
「いてぇ──」
アイリが喚 くと舳 寄りの最前列に座るテレーゼが声を上げた。
「正面に岩礁 が!」
手荒くノッチが舟の向きを変えると小屋ほどもある流氷が横を通りすぎた。
「冷えるはずです。ノッチ、方角は大丈夫ですか?」
そう王妃 が問うと彼がとんでもないことを言いだした。
「大丈夫です王妃 様。海の果てから落ちることはありませぬ」
ヘルカ・ホスティラが立ち上がろうとして舟が激しく揺れて女騎士は慌 てて座り込んだ。
「何を言うかぁ!皆 、貴君の判断に命かかっているのだぞ!」
ノッチは下目づかいでヘルカを見下しながら海面から引き抜いた櫓 を両手で振り上げた。
「文句は言えて、お願いしますとは言えぬか────さもしいやつめ」
ヘルカが剣 を引き抜こうとして王妃 から扇子 の角で頭を強 かに叩 かれた。
「ひぃいい!」
「静かにしないならこの冷たい海に反省するまで放り込みますよ」
その半眼の眼差しに振り向いていたヘルカ・ホスティラは前へ座り直し謝った。
「申し訳ございませんでした。配慮が欠けておりました」
「ひぃいいっ!!」
ノッチがヘルカの後ろから頭の上に櫓 を突きだし傾け雫 を頭に落としていた。
「ノッチ殿ぉ────舟から下りたいですかぁ!?」
イルミが脅すと彼は櫓 を後ろに回しまた漕 ぎ始めた。
このままでは半日と皆 の精神が持たぬと王妃 は冗談半分に皆 に告げた。
「あぁ、岸の匂いがする」
突然に靄 の中から白く大きなものが見えてノッチが舟を止めた。
見上げたイルミ・ランタサルはそれが島に載ったちょっとした城並みに大きな白い氷の髑髏 に見えて息を呑んだ。
ラモ族の長 が目印をそう教えていたのを王妃 は思い返した。
何の欺 きだ!?
鼻で笑い睨 み据える。
銀眼の魔女はふざけた奴だ。
霧 に覆われていなければ攻めて来てくださいと言ってるようなものだとイルミは顎 を引いてその城ほどの氷の髑髏 を睨 み続けた。
砂浜に乗り上げまず飛び下りたテレーゼ・マカイが足元を見下ろしまだ舟に乗ってるもの達へ告げた。
「ここの浜辺────砂じゃないです」
先に下りたヘルカ・ホスティラの腕に抱き上げられたイルミ・ランタサルが下を眼にして瞳を丸めた。
大きく育った氷の結晶が浜一面に広がっていた。
どうして凍ってくっつき合わない!?
どうして波に洗われて溶けてしまわない!?
これすべてが銀盤の魔女の力ならとんでもない能力だった。
もしも────打開策がなければ、この時点で引き返していた。
「アイリ・ライハラ、まだ駄目だぞ」
そう告げノッチが先に舟を下りてアイリを乗せたまま流されないように舟を氷浜に引っ張り上げアイリが飛び下りた。
「わかってるよ」
まだ駄目!? 何のことかと抱き上げられたままのイルミ・ランタサルは顔をノッチへ振り向けた。
少女の亭主は稲妻の剣 のことも卓越した剣技 のことも片鱗すら匂わせなかった。
アイリ・ライハラと何を隠している!?
「まだ見えてきませんね」
舟中ほどに座るイルミ・ランタサルは
「それに
「大丈夫です
そうノッチが言い切った直後徐々に
「
そうイルミの背後に座るヘルカ・ホスティラがか細い声で訴えるとイルミが応えた。
「
そう告げ
かたんかたんと音がしてイルミが顔を下ろすと前の席でアイリ・ライハラが船底に倒れたナイフを見つめていたのでイルミは尋ねた。
「何をしてるのですアイリ?」
「いやぁ、倒れたナイフの向きでわかるかなぁと。でも毎回違う方へ倒れるんだ」
「当たり前です」
そう言い捨てイルミ・ランタサルは少女の頭を閉じた
「いてぇ──」
アイリが
「正面に
手荒くノッチが舟の向きを変えると小屋ほどもある流氷が横を通りすぎた。
「冷えるはずです。ノッチ、方角は大丈夫ですか?」
そう
「大丈夫です
ヘルカ・ホスティラが立ち上がろうとして舟が激しく揺れて女騎士は
「何を言うかぁ!
ノッチは下目づかいでヘルカを見下しながら海面から引き抜いた
「文句は言えて、お願いしますとは言えぬか────さもしいやつめ」
ヘルカが
「ひぃいい!」
「静かにしないならこの冷たい海に反省するまで放り込みますよ」
その半眼の眼差しに振り向いていたヘルカ・ホスティラは前へ座り直し謝った。
「申し訳ございませんでした。配慮が欠けておりました」
「ひぃいいっ!!」
ノッチがヘルカの後ろから頭の上に
「ノッチ殿ぉ────舟から下りたいですかぁ!?」
イルミが脅すと彼は
このままでは半日と
「あぁ、岸の匂いがする」
突然に
見上げたイルミ・ランタサルはそれが島に載ったちょっとした城並みに大きな白い氷の
ラモ族の
何の
鼻で笑い
銀眼の魔女はふざけた奴だ。
砂浜に乗り上げまず飛び下りたテレーゼ・マカイが足元を見下ろしまだ舟に乗ってるもの達へ告げた。
「ここの浜辺────砂じゃないです」
先に下りたヘルカ・ホスティラの腕に抱き上げられたイルミ・ランタサルが下を眼にして瞳を丸めた。
大きく育った氷の結晶が浜一面に広がっていた。
どうして凍ってくっつき合わない!?
どうして波に洗われて溶けてしまわない!?
これすべてが銀盤の魔女の力ならとんでもない能力だった。
もしも────打開策がなければ、この時点で引き返していた。
「アイリ・ライハラ、まだ駄目だぞ」
そう告げノッチが先に舟を下りてアイリを乗せたまま流されないように舟を氷浜に引っ張り上げアイリが飛び下りた。
「わかってるよ」
まだ駄目!? 何のことかと抱き上げられたままのイルミ・ランタサルは顔をノッチへ振り向けた。
少女の亭主は稲妻の
アイリ・ライハラと何を隠している!?