第21話 ポーカー・フェイス

文字数 1,768文字


 すげぇ速ぇええ!

 舐めてかかっていてまた殺されるところだったとアイリ・ライハラは(きも)を冷やした。

 だけど、なんだか見たことのある剣技(けんぎ)だと少女は同じ(わざ)を使っていたやつを思いだそうとした。

 勝てなかったら────だめだ。剣戟(けんげき)は負けると意識した時から負けが始まるとアイリは強く思った。

 そうだ! あの時、天使と打ち合う銀眼の魔女を見て同じことを思ったんだ!

 打ち返されては打ち込んでくる赤毛の娘の(やいば)をアイリ・ライハラは(ソード)一振りで返し()()った双刀(そうとう)使いの鼻先を(ブレード)が紙一重で抜けた直後、双刀(そうとう)使いは側転からバク転し間合いを取った。

 ノッチとヘルカ・ホスティラを横目で見るとノッチは(いぶ)し銀の甲冑(アーマー)とヘルカは軽装の奴と一進一退を繰り返していた。

 太刀筋(たちすじ)を見えるようにしただけでは駄目なのかと思いアイリは双刀(そうとう)使いを追い込むべく啖呵(たんか)切った。

「さあ、本気でいこうじゃん!」

 そう少女が言い放った直後、双刀(そうとう)使いの目が座った。

 やっぱり余力持ってやがった。

 だがこっちの隠していた力はこんなものじゃねぇ────そうアイリは自分に言い聞かせた一閃(いっせん)土埃(つちぼこり)も上げずデアチの黒騎士を倒した時と同じ爆速へと駆け込んだ。見えている双刀(そうとう)使いが残像引いて取り残される。一瞬で背後に回り込んだ。双刀(そうとう)使いの頚椎(けいつい)(ねら)い振り込んだその刹那(せつな)────双刀(そうとう)使いは振り向いて左腕の(つるぎ)でアイリの振り抜こうとする(ブレード)を弾き上げアイリ・ライハラの喉笛めがけ右手の(つるぎ)を振り抜いた。


 赤毛の双刀(そうとう)使いの胸蹴り込んで()()った騎士団長の胸の上を双刀(そうとう)使いの(やいば)が走り抜け蹴り倒された双刀(そうとう)使いは(おのれ)(つるぎ)を引き込んで顔を(こわ)ばらせ尻餅をついた。

 バク転したアイリ・ライハラが残像残し地面蹴り込んで座り込んだ赤毛の双刀(そうとう)使いの喉元へ(ブレード)を振り切った。

 それを三人組のリーダー格の少女は仰向(あおむ)けになりアイリの(ソード)(かわ)しバク転し跳び上がると青髪へ二口(ふたふり)(つるぎ)構えた。

 その一閃(いっせん)、アイリ・ライハラは双刀(そうとう)使いの背後に一瞬で回り込み今一度その頚椎(けいつい)めがけ(ブレード)打ち込んだ。

 (かわ)しきれぬ速さだった。

 そのはずだった。

 赤毛の双刀(そうとう)使いの瞳が銀色になった瞬間、振り切ろうとするアイリ・ライハラの(ブレード)二口(ふたふり)(やいば)で打ち上げその上がった腕の(すき)に踏み込み横に振り抜いた(つるぎ)を引き戻し残像すら見せぬ青髪の騎士めがけ闇雲に打ち込んだ。

 跳び離れ(わず)かに速度落とし双刀(そうとう)使いの背後へと残像を幾つも残し回り込みフルに加速し一周し元の場所に戻ると残像を目で追う赤毛の騎士が(みずか)らアイリへと背を(さら)した。


 張ったり(ブラフ)だった。


 至近距離で(うなじ)見せた赤毛の双刀(そうとう)使いに(かわ)す余裕も(つるぎ)で打ち()らす機会も与えなかった。





「さあ、本気でいこうじゃん!」

 そう言い放たれこれからが本番だと赤毛の三人組長女のタルヤ・ジンデルは目を座らせた。

 はっきりと見えていた青髪の剣士が急激に回り込む残像を目にしタルヤは一瞬で振り返り左手の(つるぎ)を振り上げ敵の(ブレード)を弾き(かわ)すと青髪の喉笛めがけ右手の(つるぎ)を振り抜いた。

 赤毛の長女の胸蹴り込んで()()った青髪の残像が見えその胸の上をタルヤの(やいば)が走り抜け蹴り倒された長女は(おのれ)(つるぎ)を引き込んで顔を(こわ)ばらせ尻餅をついた。

 座り込むことで自由の大方を手放したタルヤはバク転した青髪が残像残し地面蹴り込んで座り込んだ彼女の喉元へ(ブレード)を振り切ってくるのが見えていた。

 それを三人組のリーダー格の少女は仰向(あおむ)けになり青髪の(ソード)(かわ)しバク転し跳び上がると二口(ふたふり)(つるぎ)構えた。

 その一閃(いっせん)、背後に一瞬で回り込んだ青髪が再びその頚椎(けいつい)めがけ(ブレード)打ち込んで来ると直感が(ささや)いた。

 タルヤ・ジンデルの瞳が銀色になった瞬間、振り切ろうとする青髪の(ブレード)二口(ふたふり)(やいば)で打ち上げその上がった腕の(すき)に踏み込み横に振り抜いた(つるぎ)を引き戻し残像すら見せぬ青髪の騎士めがけ闇雲に打ち込んだ。

 跳び離れ(わず)かに速度落とし背後へと残像を幾つも残すのが授かりし能力(ちから)で見えており(すき)を与えてなるかと身構え気づいた。


 張ったり(ブラフ)だ!!!



 (みずか)ら青髪へと背を(さら)した。

 至近距離で(うなじ)見せた赤毛の長女タルヤは(かわ)す余裕も(つるぎ)で打ち()らす機会も手放したことに気づいた。

 衝撃を受け自分の甲冑(アーマー)が見え足元から首を失った(からだ)見上げ薄れゆく視界にタルヤ・ジンデルは思った。

 凄い! 首を(ほとん)ど飛ばさず叩き()った────────。



 (おのれ)に相応しい相手だったと銀眼から聞いた名前を思い出して意識が途切れた。





ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

 アイリ・ライハラ

珍しい群青の髪をした15歳の美少女剣士。竹を割ったようなストレートな性格で周囲を振り回し続ける。

 イルミ・ランタサル

16歳にして策士策謀の類い希なるノーブル国変化球王女。アイリにくるんくるんだの馬糞などと言われ続ける。

 ヘルカ・ホスティラ

20歳のリディリィ・リオガ王立騎士団第3位女騎士。騎士道まっしぐらの堅物。他の登場人物から脳筋とよく呼ばれる。

 イラ・ヤルヴァ

21歳の女暗殺者(アサシン)。頭のネジが1つ、2つ外れている以外は義理堅い女。父親はドの付く変態であんなことやそんな事ばかりされて育つ。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み