第4話 ステップ
文字数 2,249文字
イルミ王女に言われ近衛兵達の
王女はドレスの上からでもわかるほど胸を上下させ瞳を耀かせている。それを眼にしてアイリは口をへの字に曲げた。その背後で近衛兵長のライモが王女に
「勘弁してくださいよ王女様。俺がそんな子どもを叩きのめしたら町で後ろ指さされるじゃないですか」
子どもと言われアイリは振り向いて背の高い近衛兵長を
「あら、ライモ。怖じ気づくの? こんな可愛い女の子に」
そう言いイルミ王女は少女の被るフードを後ろから引っ張り脱がせた。
それを無視するようにアイリは中央に行くと手早く両足に履く浅い靴を脱いで腰を折り横に長剣を置いて靴を肩幅に並べた。左の靴をやや前に出しそれぞれの爪先を軽く外へ振る。
何を始めるのだと男らの冷やかしが陰をひそめた。
そうしていきなり左の靴の中敷きの中央に釘を立て振り上げた金槌で一打ちした。指ほどの長さの釘がその一撃で
アイリは長剣をつかむとおもむろに立ち上がり動かぬ靴を履いた。
それを見ていて近衛兵長のライモは少女がやろうとしていることを理解し閉じた口をへの字に曲げると右手を横に突き出した。
「俺の訓練刀を!」
「そんなオモチャで──瞬殺されたいの?」
少女の嘲りともとれる言い草にライモは口をあんぐりと開くと木剣の切っ先を相手に向けやり返した。
「お前、その
「
顔を赤らめふたたび閉じた口を
「ライモ! 口先でなく真剣で相手をしておあげなさい! それでも貴方の手にあまるから」
王女の言い分にライモの眼が座ると彼のそばに3人の兵が歩み寄り、1人が近衛兵長へ
「隊長、王女様は1対1とは
耳にして集まった4人にアイリは言い放った。
「私はここから一歩も動かぬ! お前達4人の着るそのチェインメイルに傷を入れるまでな」
「その果物ナイフで? 笑わせるぜ!」
近衛兵長へ
近衛兵長が木剣を床に投げ捨てるのを合図にその4人が剣を振り回しやすい間隔をとりそれぞれが武器のハンドルを握りしめアイリへ間合いを詰めようとした
その様を出入り口見つめるイルミ・ランタサルはたまらない興奮に両手の
その時だった。
「ワン・ステップ──」
近衛兵長ライモは何のマジックだとよく見ようと眼を強ばらせた。
剣はどこだ!?
だが剣が消えているのに少女が握るハンドルと末端の尖ったポメルが見えていた。いいや、違う──とライモは気づいた。
握るハンドルが、つかむ
「かかって来いやぁ!」
アイリが挑発した瞬間、近衛兵長が止めようと口を開いた前で3人の兵が剣を引き抜き振りかぶり少女に詰め寄った。その
3人の兵の胸や腹から派手に火花が飛び、男らは後ずさりしそれぞれがチェインメイルに刻まれた真新しく深い傷に眼を丸くした。
「さがれ!」
ライモ近衛兵長にそう言われなくても男らの戦意がすでに砕け散っていた。
このチビは恐ろしく速く動ける。
だがその小柄な腕のリーチと長剣とはいえチビの身長に満たない剣の届く範囲は大人のしかも大柄の自分が伸ばす
「ガキ──おかしなことをやるな!」
ライモがそう言い放った瞬間、前に下がった
「トゥ・ステップ──」