第4話 伝えるもの
文字数 1,792文字
「イルミ、銀盤の魔女ってどうやって人を襲うんだ?」
アイリは馬の上下に合わせ
「伝承は様々ですよ。とんでもない魔法を使うのに始まり、中には鉄を嫌う魔女でありながら剣の使い手というものまであります」
だけど変だと思った。
「見た奴を片っ端に殺すような女なのになんでそんなに伝承が沢山あるの?」
イルミは
「きっと何かの抜け道──
アイリはイルミの話しに耳を奪われた。何のかんの言ってもくるんくるんはものをよく見ている。
いつも悔しい思いをさせられるが、頭はきれるのだ。
祖国ノーブルに
「────恐怖を拡散させたくて故意に生き証人を増やしているのかもしれませんね」
「それでは魔女ミルヤミ・キルシと大して変わらぬ
先頭を行くテレーゼ・マカイがそう指摘した。
「
嬉しそうにヘルカ・ホスティラが話しに加わり最後にノッチがとんでもないことを付け加えた。
「銀盤の魔女────ルースクース・パイトニサム────銀眼の魔女は相手を倒すことで優越感に浸る手合いじゃない」
「ルースクース・パイトニサム? あらどうして名をご存じなの?」
イルミ
「それは俗称だ。名をミエリッキ・キルシという。悪人や悪魔のような悪意はない」
4人が引き込まれ黙ってしまい悪意がないという意味をそれぞれが考えた。
じゃあ、目的はなんだろう!?
不気味なものが胸を
悪意があれば罰せられるが、なければどうやって裁く!?
「まさかすべて過失で済ます奴とか?」
ぼそりとアイリが言いイルミが軽い笑い声を上げた。
「アハハハッ、面白いわ。殺しておいて済みませんでしたで終わらせようとする────間抜けだわ」
振り向いたアイリが見たのは親の
だけど名前まできちんとあってどうして怖れられる伝承なのだろう、とアイリは思った。
「
ぼそりと告げたイルミ・ランタサルの言い方がそのものだとアイリ・ライハラは鳥肌立った。
トンミ────。
集落の中では1番貧しく、目立たず、部族の誰とも交じりたがらない老齢の男。
トンミの粗末な部屋は汚く他の村にさえあるような色柄のものがまったくなかった。
人と交われば、あいつが戻ってくるとトンミは
1度逃れられたのは理解できない何かの幸運だった。だがその幸運が人生を大きく狂わせ最大の不幸になっていた。
集落の大人、子ども、男、女、それが瞬く間に殺された。
吹雪の
だが触れることもできずに大人たちは次々に手、
トンミはその光景に心底
雪に染まる血がいたるところに白と黒のコントラストで闇に
その水溜まりに浮かぶ落ち葉を渡り歩くようにあいつは逃げ惑う集落民を追い詰めていった。
トンミは吹雪く中、明るくなるまで
それが不幸の始まりだった。