第13話 渦の真ん中
文字数 1,888文字
ウルマス国王は相変わらず伏せっていた。
だが去年よりいくぶん楽そうでアイリとノッチが寝室に入ると上半身を起こし2人の侍女 が背にクッションをあてがった。
「ウルマス国王──お加減はいかがでしょう」
そう片膝ついたアイリが気遣うと王が応えた。
「よく来てくれたのアイリ・ライハラよ。そちの活躍をよく耳する。ありがとうな。ところで一緒にいる青年はお会いしたことがないようにお見受けするが────」
見えているのかとアイリは苦笑いを一度浮かべウルマス国王に紹介した。
「夫のノッチ・ライハラです」
「そうか結婚おめでとう。祝賀会を催 さなければな」
そう話す王の首についた白いチョーカーにアイリは視線据えたまま切りだした。
「ありがたきお言葉────ところでノーブル国中に呪いがかけられたとお聞きしました。本当でしょうか」
ウルマス国王は眉根寄せアイリへ教えた。
「うわさは本当じゃ。魔女の名を誰かが口にするとそのものは命落とし我 の首のこれが締まる」
それを聞いてアイリは小さくため息をついた。
「その魔女が──見せかけは若いその魔女が殿下の前に現れて脅したのですか?」
「そうじゃない。誰かに怨 みある所業じゃないと言っておった」
怨 みなけれど嫌がらせかとアイリは思った。
銀眼の魔女は間違いなく殺したのだ。ではどうやって呪いを維持 してるのだろう。魔石のように何かに呪力を封じ込めてどこかに隠しているとか。
「ウルマス国王、わたくしがなんとか解決します。しばしご猶予 を」
そう告げアイリとノッチが立ち上がるとウルマス国王が呼び止めた。
「久しぶりに里へ帰ったのじゃ。ゆっくりしてゆけアイリ・ライハラ」
王には見えずともアイリは微笑んでノッチと共に出入り口へ後ずさりった。
居間を抜け廊下へ出たアイリは他のものの眼がないことを確認し、ずっとつきまとうだけで口を差し挟まぬイラ・ヤルヴァに問いただした。
「イラ、状況は分かったか? 銀眼の魔女の呪いはどのようにかけられていると思う?」
ふらふらとさまよっている元女暗殺者 がす──っとアイリに近づいてきて床に足を下ろした。
────呪いではなく暗示ですよ。
暗示!? 国民全員に暗示をか!? とアイリは愕 いた。
「ノーブル国10万の民 すべてに暗示をかけたというのか?」
────う──んちょっと違います。1人に暗示をかけそれを広めたんです。
「国王にか?」
────いや、ウルマス国王じゃないです。えぇっと、国王に近く民にも近い。
謎解きのようになってきてアイリは眼を寄せた。こいつもしかしてわかっていながら遠まわしにしてるんじゃねえのかとアイリはいきなりイラ・ヤルヴァの腕をつかんで激しく揺すった。
────うぉぉぉぉっ、何をなさるのですかぁああ!?
「お前、わかっててはぐらかしてるだろう」
────いやぁあああ、えへへへへへぇ。
アイリは天使にヘッドロックをかけ締め上げた。
────こうさん──降参ですぅ。
「誰がそそのかされてる?」
────レニタ侍女 長。
アイリはイラ・ヤルヴァを放り出ししゃがみ込むと頭を抱 えた。
「くっ、くそう! 1番めんどくさいやつじゃん!!」
────えっ!? どうしたんです御師匠?
「イラ! お前、行って、何とかしてこい!」
────あ~れぇ~~~えぇえええ? レニタ侍女 長苦手なんすかぁ?
アイリは片手で額を押さえて天使になってまでつきまとう元女暗殺者 を片手で祓 った。
「俺、あいつ苦手なんだよ──お前行って、よし!」
────御師匠、天使はパシリじゃないんすよ。国王にわたくしがなんとか解決します。しばしご猶予 をって言い切ったじゃないすかぁ。
「あいつなぁ、俺のこと騎士団長どころか、騎士とさえ思ってねぇんだよ。いまだに上から目線で見下すんだよぉ」
イラ・ヤルヴァは敬愛するアイリ・ライハラの背から腕を首に回して囁 いた。
────ギブ・アンド・テイク。わたくしの望みを聞いてくれるなら。何とかしましょう。
いきなり、シャキ────ンと立ち上がったアイリ・ライハラはイラ・ヤルヴァへ譲歩した。
「言ってみろ! 望みとやらを!」
にま────と笑みを浮かべたイラ・ヤルヴァはアイリ・ライハラに頼んだ。
────わたくしと一緒に天国へ────ぇええっ?
アイリ・ライハラは半堕天使へ振り向くと言い切った。
「聞いてやったぞ。何とかしてもらおうじゃん!」
────あぁああ! 汚ぇえええ。インチキ! ペテン師! 詐欺師!
イラ・ヤルヴァの後ろに呆れかえって床に胡座 かいて座っているノッチがアイリへ腕振り上げ何か指摘したがアイリ・ライハラは両耳ふさいで知らぬ顔を決め込んだ。
だが去年よりいくぶん楽そうでアイリとノッチが寝室に入ると上半身を起こし2人の
「ウルマス国王──お加減はいかがでしょう」
そう片膝ついたアイリが気遣うと王が応えた。
「よく来てくれたのアイリ・ライハラよ。そちの活躍をよく耳する。ありがとうな。ところで一緒にいる青年はお会いしたことがないようにお見受けするが────」
見えているのかとアイリは苦笑いを一度浮かべウルマス国王に紹介した。
「夫のノッチ・ライハラです」
「そうか結婚おめでとう。祝賀会を
そう話す王の首についた白いチョーカーにアイリは視線据えたまま切りだした。
「ありがたきお言葉────ところでノーブル国中に呪いがかけられたとお聞きしました。本当でしょうか」
ウルマス国王は眉根寄せアイリへ教えた。
「うわさは本当じゃ。魔女の名を誰かが口にするとそのものは命落とし
それを聞いてアイリは小さくため息をついた。
「その魔女が──見せかけは若いその魔女が殿下の前に現れて脅したのですか?」
「そうじゃない。誰かに
銀眼の魔女は間違いなく殺したのだ。ではどうやって呪いを
「ウルマス国王、わたくしがなんとか解決します。しばしご
そう告げアイリとノッチが立ち上がるとウルマス国王が呼び止めた。
「久しぶりに里へ帰ったのじゃ。ゆっくりしてゆけアイリ・ライハラ」
王には見えずともアイリは微笑んでノッチと共に出入り口へ後ずさりった。
居間を抜け廊下へ出たアイリは他のものの眼がないことを確認し、ずっとつきまとうだけで口を差し挟まぬイラ・ヤルヴァに問いただした。
「イラ、状況は分かったか? 銀眼の魔女の呪いはどのようにかけられていると思う?」
ふらふらとさまよっている元女
────呪いではなく暗示ですよ。
暗示!? 国民全員に暗示をか!? とアイリは
「ノーブル国10万の
────う──んちょっと違います。1人に暗示をかけそれを広めたんです。
「国王にか?」
────いや、ウルマス国王じゃないです。えぇっと、国王に近く民にも近い。
謎解きのようになってきてアイリは眼を寄せた。こいつもしかしてわかっていながら遠まわしにしてるんじゃねえのかとアイリはいきなりイラ・ヤルヴァの腕をつかんで激しく揺すった。
────うぉぉぉぉっ、何をなさるのですかぁああ!?
「お前、わかっててはぐらかしてるだろう」
────いやぁあああ、えへへへへへぇ。
アイリは天使にヘッドロックをかけ締め上げた。
────こうさん──降参ですぅ。
「誰がそそのかされてる?」
────レニタ
アイリはイラ・ヤルヴァを放り出ししゃがみ込むと頭を
「くっ、くそう! 1番めんどくさいやつじゃん!!」
────えっ!? どうしたんです御師匠?
「イラ! お前、行って、何とかしてこい!」
────あ~れぇ~~~えぇえええ? レニタ
アイリは片手で額を押さえて天使になってまでつきまとう元女
「俺、あいつ苦手なんだよ──お前行って、よし!」
────御師匠、天使はパシリじゃないんすよ。国王にわたくしがなんとか解決します。しばしご
「あいつなぁ、俺のこと騎士団長どころか、騎士とさえ思ってねぇんだよ。いまだに上から目線で見下すんだよぉ」
イラ・ヤルヴァは敬愛するアイリ・ライハラの背から腕を首に回して
────ギブ・アンド・テイク。わたくしの望みを聞いてくれるなら。何とかしましょう。
いきなり、シャキ────ンと立ち上がったアイリ・ライハラはイラ・ヤルヴァへ譲歩した。
「言ってみろ! 望みとやらを!」
にま────と笑みを浮かべたイラ・ヤルヴァはアイリ・ライハラに頼んだ。
────わたくしと一緒に天国へ────ぇええっ?
アイリ・ライハラは半堕天使へ振り向くと言い切った。
「聞いてやったぞ。何とかしてもらおうじゃん!」
────あぁああ! 汚ぇえええ。インチキ! ペテン師! 詐欺師!
イラ・ヤルヴァの後ろに呆れかえって床に