第16話 楽姫(がくひ)イルミ・ランタサル
文字数 1,428文字
傍聴人らが左右について割れ、アイリ・ライハラが振り向くと間を麻袋 を顔に被せられた男──服装からだと思う──がノーブル国の騎士達に小突かれ法廷へとよろめきながら突き出された。
少女はその顔わからぬ男の着意に愕 いた。
白のローブ に胸から肩に回した十字架の刺繍された帯 ──あぁ、赤いローファー 、腰に回した帯 の端近くにある刺繍────三重冠の下で交差する金と銀の鍵 ────もしかして────。
枢機卿 !?
間違いなく首座司教!!!
ノーブル国リディリィ・リオガ王立騎士団23位のヨーナス・オヤラに肩を押され、その麻布 の男がよろめき足をもつれさせ前に倒れると、ミイラみたいな包帯だらけの女騎士ヘルカ・ホスティラが「あっ!」と思わず声を出し、すぐに駆け寄り立たせながら麻布 に顔を寄せ囁 いたのがアイリ・ライハラには聞こえていた。
「すまぬ、リク────」
後の方はよく聞き取れなかったが、居丈高 なヘルカが介抱の手を差し伸べすぐに謝るぐらいなので、教皇 様に間違いないと少女は思った。
「さあ、ヘッレヴィ・キュトラ。このものに先に口を割らせたならそなたも無実の少女を魔女嫌疑で死刑に貶 めようとした策謀 の共犯とし極刑! そなたがこのものを見切り、名を白日の下にさらすなら恩情! 選びなさい!!!」
イルミ・ランタサルが突きつけた条件に女異端審問官ヘッレヴィ・キュトラは顔中に冷や汗を浮かべ目を游 がせている。
四苦八苦する審問官からアイリがくるんくるんに視線を移すと横に立つ女はしきりと指を順番に曲げ伸ばししている。
決定的な証拠を突きつけながら、イルミは一体何を貶 めようというの?
若くても女。
あっ!
アイリ・ライハラは女の勘 で閃 いてしまった。引き出された枢機卿 ────こいつ元騎士団長リクハルド・ラハナトスだぁ!
「あのぉ、イルミさん──」
少女は横に立つ大嘘つきに小声をかけた。
いきなり横に王妃 のスカートが大きく揺れアイリは衝撃を受け椅子ごと横に倒れそうになり片足を横に突っ張り堪 えた。
「頭巾被せたおっさんって────」
イルミから刺さるような冷たい横目で睨 みつけられた。
やっぱりそうじゃん!
どうすんだぁ!?
法王をでっち上げ裁 いたら大変なことになるぞ!
傾いた椅子でバランスを取る少女は引き攣 った顔で口をパクパクさせイルミに警告しようとした刹那 、王妃 からひっくり返された。
倒され少女が椅子を壊したその音が法廷の視線を集めアイリ・ライハラは顔を上げると蒼白 の異端審問官ヘッレヴィ・キュトラと視線が絡み合った。
「逃げろヘッレヴィ!!!」
少女が怒鳴った寸秒、女異端審問官が傍聴人らへと駆け出し顔を振り向け追うイルミ・ランタサルが大声で命じた。
「逃がすな! 殺して構わん!!」
群衆の中に紛れていたデアチ国の兵士らがスクラマサクス(:一般的な西洋剣よりやや短めの剣)を引き抜き構えるのが見えた須臾 少女アイリ・ライハラは短い付き合いながらイルミ・ランタサルの意図が少しだけわかった。
わたしに助けさせ、ヘッレヴィ・キュトラを魔女嫌疑を命じたものへと導かせる。
王妃 の真の狙いは、最大の力────お前の懐刀 ────俺を削 ぐ勢力を根絶やしにすること。
逃げ戸惑う群衆の方へ駆ける女異端審問官に一瞬にして走り並んだ少女は折れた椅子の足2本を両手に持ち剣 振り込んで来る兵士らを叩 き伏せくるんくるんの弾く曲に合わせ踊り始め理解した。
あの指の動きは運命のハープを爪弾いているのだと。
少女はその顔わからぬ男の着意に
間違いなく首座司教!!!
ノーブル国リディリィ・リオガ王立騎士団23位のヨーナス・オヤラに肩を押され、その
「すまぬ、リク────」
後の方はよく聞き取れなかったが、
「さあ、ヘッレヴィ・キュトラ。このものに先に口を割らせたならそなたも無実の少女を魔女嫌疑で死刑に
イルミ・ランタサルが突きつけた条件に女異端審問官ヘッレヴィ・キュトラは顔中に冷や汗を浮かべ目を
四苦八苦する審問官からアイリがくるんくるんに視線を移すと横に立つ女はしきりと指を順番に曲げ伸ばししている。
決定的な証拠を突きつけながら、イルミは一体何を
若くても女。
あっ!
アイリ・ライハラは女の
「あのぉ、イルミさん──」
少女は横に立つ大嘘つきに小声をかけた。
いきなり横に
「頭巾被せたおっさんって────」
イルミから刺さるような冷たい横目で
やっぱりそうじゃん!
どうすんだぁ!?
法王をでっち上げ
傾いた椅子でバランスを取る少女は引き
倒され少女が椅子を壊したその音が法廷の視線を集めアイリ・ライハラは顔を上げると
「逃げろヘッレヴィ!!!」
少女が怒鳴った寸秒、女異端審問官が傍聴人らへと駆け出し顔を振り向け追うイルミ・ランタサルが大声で命じた。
「逃がすな! 殺して構わん!!」
群衆の中に紛れていたデアチ国の兵士らがスクラマサクス(:一般的な西洋剣よりやや短めの剣)を引き抜き構えるのが見えた
わたしに助けさせ、ヘッレヴィ・キュトラを魔女嫌疑を命じたものへと導かせる。
逃げ戸惑う群衆の方へ駆ける女異端審問官に一瞬にして走り並んだ少女は折れた椅子の足2本を両手に持ち
あの指の動きは運命のハープを爪弾いているのだと。