第16話 持ちつ持たれつ
文字数 1,746文字
41階層を前にアイリ・ライハラ率いる騎士団は疲弊していた。
「アイリ、もう無理だと思わないか」
ヘルカ・ホスティラに言われアイリ・ライハラは何をコイツと睨 み言い返した。
「騎士らを引き連れて地上に戻れよ」
「そう言う貴君こそボロボロじゃないか」
アイリ・ライハラは何のかんの言っても親父が凄いと思った。年端もゆかない自分を連れて100階層以上を下りていたのだ。
「あきらめない──」
「怪我人だけで死者の出ていない今こそが決断のしどころじゃないのか。イルミ・ランタサル王妃 も理解してくれる。ここまで来られて上等だろう」
アイリ・ライハラは唇を噛んで俯 いた。
「イルミは関係ない。5歳の俺が行けた場所に15の俺が行けないことが悔しい」
ヘルカ・ホスティラはため息をついた。
「仕方ない。20階層下りたらまた聞くからな」
「なあ、ヘルカ。攻め落とせない城があったら戦争を諦めるか」
「諦めん! ってお前、攻城戦とこれを一緒にすなっ」
アイリ・ライハラは頭 振った。
「おんなじや──諦めたら一生、傷になる。じゅくじゅくとした治らない傷だ」
いきなりヘルカ・ホスティラはアイリ・ライハラの手をつかんで引っ張り寄せると抱きしめた。
「貴君、どうして我 が貴君の下にいるか考えたことあるか」
「しらん」
「馬鹿かぁ。イルミ・ランタサルの命令を守ろうとするその心意気を信じてるからだ」
「ちゃう──投げだしたら────自分が嫌いになるからや!」
アイリ・ライハラはヘルカ・ホスティラの腕を振りほどくと立ち上がり先折れした長剣 を引き抜いた。
「これより先は地獄の如 き魑魅魍魎跋扈 する階層なるぞ。我が身を大切にするものは止めない。地上に戻れ。走破決意するものは立ち上がれ」
アイリ・ライハラを中心に座り込んでいた騎士らがぽつりぽつりと立ち上がると加速するようにその数が増えてゆく。18名の配下の騎士が立ち上がり気勢を上げると最後にヘルカ・ホスティラが腰を上げアイリに尋ねた。
「41階層の魔物はなんだ」
「モンドラゴン──竜の山」
「り、竜の、や、山だぁ!? もしかして洞窟 一杯の竜なのか!?」
「そう──とびきりでかい7つ首の──」
ヘルカ・ホスティラは肩を落としうなだれ呟 いた。
「お城に帰りたい」
「20 ステップ!」
アイリ振り回す先折れした長剣 が空を切り次々に竜の首を斬 り落とした。最後の首をヘルカ・ホスティラ振る長剣 が捉え断ち斬 ると大きすぎる魔物が霧散して拳 大の魔石が転がった。
両膝 に手をついて喘 ぐ騎士らは顔を上げ勝利を喜んだ。
ヘルカ・ホスティラは肩を叩 かれ振り向くとアイリ・ライハラだった。
「みろ。一丸で戦うとモンドラゴンさえ敵じゃないじゃん」
女参謀長は悟 った。騎士団長 が華を持たせてくれたことを。アイリ・ライハラを支えているつもりが折れかけた自分を支えていたのは他ならぬアイリ・ライハラ本人だったのだと。
アイリ・ライハラの胸当 を叩 き返しふらついた彼女の手をつかみヘルカは支えた。
「アイリ────貴君という奴は──」
「なんだよヘルカ。惚れ直したか」
「ひっくり返っていろ」
そう告げつかんでいた手を放すとアイリ・ライハラは後ろにひっくり返り派手な音を立てた。
仰向けにひっくり返りアイリ・ライハラは思った。イルミ・ランタサルに命じられているから迷宮探査にこだわっているんじゃない。
100階層制覇 したらここに来た連中の仲間意識が一層高まるだろう。
にやついているアイリ・ライハラを腰に手を当て見おろすヘルカが問いかけた。
「42階層の魔物は何だ」
「雑魚ざこ。心配するな」
いきなりヘルカ・ホスティラに甲冑 を蹴られてアイリ・ライハラはぼやき始めた。
「ちょっと待てヘルカ! 何で蹴るんだぁ」
跳び起きた騎士団長 を無視して疲弊した騎士らに声をかけて回った。
「大丈夫ですか騎士団長」
中堅騎士イスモ・ヤラに声をかけられアイリは苦笑いを浮かべた。
「イスモ、余力はあるか」
「もちろん。倒れるまで騎士団長に付いて行きます」
「よ────し! ヘルカ・ホスティラを捕まえて羽交い締めにしろ!」
「聞こえたぞアイリ・ライハラ!我 を取り押さえて仕返しするか」
遠くでヘルカ・ホスティラが口を尖 らせるとアイリは腕振り上げ指さして言い返した。
「待ってろヘルカ!」
「アイリ、もう無理だと思わないか」
ヘルカ・ホスティラに言われアイリ・ライハラは何をコイツと
「騎士らを引き連れて地上に戻れよ」
「そう言う貴君こそボロボロじゃないか」
アイリ・ライハラは何のかんの言っても親父が凄いと思った。年端もゆかない自分を連れて100階層以上を下りていたのだ。
「あきらめない──」
「怪我人だけで死者の出ていない今こそが決断のしどころじゃないのか。イルミ・ランタサル
アイリ・ライハラは唇を噛んで
「イルミは関係ない。5歳の俺が行けた場所に15の俺が行けないことが悔しい」
ヘルカ・ホスティラはため息をついた。
「仕方ない。20階層下りたらまた聞くからな」
「なあ、ヘルカ。攻め落とせない城があったら戦争を諦めるか」
「諦めん! ってお前、攻城戦とこれを一緒にすなっ」
アイリ・ライハラは
「おんなじや──諦めたら一生、傷になる。じゅくじゅくとした治らない傷だ」
いきなりヘルカ・ホスティラはアイリ・ライハラの手をつかんで引っ張り寄せると抱きしめた。
「貴君、どうして
「しらん」
「馬鹿かぁ。イルミ・ランタサルの命令を守ろうとするその心意気を信じてるからだ」
「ちゃう──投げだしたら────自分が嫌いになるからや!」
アイリ・ライハラはヘルカ・ホスティラの腕を振りほどくと立ち上がり先折れした
「これより先は地獄の
アイリ・ライハラを中心に座り込んでいた騎士らがぽつりぽつりと立ち上がると加速するようにその数が増えてゆく。18名の配下の騎士が立ち上がり気勢を上げると最後にヘルカ・ホスティラが腰を上げアイリに尋ねた。
「41階層の魔物はなんだ」
「モンドラゴン──竜の山」
「り、竜の、や、山だぁ!? もしかして
「そう──とびきりでかい7つ首の──」
ヘルカ・ホスティラは肩を落としうなだれ
「お城に帰りたい」
「
アイリ振り回す先折れした
ヘルカ・ホスティラは肩を
「みろ。一丸で戦うとモンドラゴンさえ敵じゃないじゃん」
女参謀長は
アイリ・ライハラの
「アイリ────貴君という奴は──」
「なんだよヘルカ。惚れ直したか」
「ひっくり返っていろ」
そう告げつかんでいた手を放すとアイリ・ライハラは後ろにひっくり返り派手な音を立てた。
仰向けにひっくり返りアイリ・ライハラは思った。イルミ・ランタサルに命じられているから迷宮探査にこだわっているんじゃない。
100階層
にやついているアイリ・ライハラを腰に手を当て見おろすヘルカが問いかけた。
「42階層の魔物は何だ」
「雑魚ざこ。心配するな」
いきなりヘルカ・ホスティラに
「ちょっと待てヘルカ! 何で蹴るんだぁ」
跳び起きた
「大丈夫ですか騎士団長」
中堅騎士イスモ・ヤラに声をかけられアイリは苦笑いを浮かべた。
「イスモ、余力はあるか」
「もちろん。倒れるまで騎士団長に付いて行きます」
「よ────し! ヘルカ・ホスティラを捕まえて羽交い締めにしろ!」
「聞こえたぞアイリ・ライハラ!
遠くでヘルカ・ホスティラが口を
「待ってろヘルカ!」