第15話 温情
文字数 1,692文字
「アイリ、本当にこいつ魔女キルシの孫なのですか?」
テレーゼに問われアイリはぼそりと答えた。
「イラ・ヤルヴァが言ったんだ。天使にはお見通しなんだよ」
「打首にして魔女への手みやげにしましょう、アイリ」
首を
アイリはヒルダの抜きかかる
アレクサンテリの裏切りは裏切りだが、身内を助けるのは
「
アイリの決断を耳にして数人の騎士がざわついた。
「生かして自由にすると魔女に我々のことを知らせ
若い騎士がアイリに
「ひん
別な騎士が手心を示した。
「どちらも駄目だ。以前にキルシを縛り上げ野原に放置したら野犬の群れに襲われて魔女は顔にひどい傷を負ったんだ。そのことでもあいつは私を憎んでいる」
先に
「首を
どうしてデアチ出身の騎士は安直に命を奪う方へと発想するのだとアイリは眉根を寄せた。
「さっさと
成り行きを聞いていた後手に
アイリは困惑げに裏切りものを見つめどうしたものかと悩んだ末、アレクサンテリの前に腰を折って
「なあ、アレクサンテリ──お前も騎士なら教会の名の下にこの道に入ったんだろう」
裏切りものは騎士団長が切りだした話しの内容に動揺したのか見つめられている瞳を
「それが──どうした!?」
「なら信仰心はあるんだよな」
「教会を信じるのと祖母を信じるのは別なことだからな!」
アイリは
「天使はすべてを見ていてお前の今後を決めなさる。教会の下で騎士になったお前が人の道に外れるなら未来永劫、地獄の業火でお前をお焼きになる」
アレクサンテリが唇を曲げ視線を落とした。
「見ただろう────飛んできた山すら簡単に逸らすことのできる天使がお前の非業をお見逃しになると? お前が地獄に落ち焼かれるのをお前の
何も言い返せず
「アレクサンテリの
ぷいと裏切りものに背を向け離れてゆくアイリを見つめ剣士ウルスラことテレーゼ・マカイはずいぶんと騎士団長が大人びて見えることに感心した。
アイリの後を追ってテレーゼとヒルダがついて行くとアイリが半身振り向いた。
「休憩にならなかったな」
そうアイリに
「アイリ殿の一面を知る思いです」
そうヒルダが告げるとアイリは自分の馬の
「裏切られたからと
「アイリ、それも温情なのですよ」
テレーゼに言われアイリは眉根を寄せた。
温情をかけることが今一つわからんとアイリが思いながら馬を歩かせると、テレーゼとヒルダはそれぞれの馬に急いだ。