第16話 真意
文字数 1,834文字
大きな魔物を倒し4人の一行はさらに奥へ向かって進んでいた。女騎士ヘルカ・ホスティラはサイクロプスを倒せたことで一度気分が高揚したがそれはすぐに困惑にすり替わった。
またアイリ・ライハラが
自分を偽り手柄を独り占めするなど騎士としてのプライドが許さなかった。
アイリ・ライハラが聞くほどに強いのなら、どうして騎士である他のものを立てる必要が──なぜ立てるのだ?
先頭を怖じずにすたすた進む少女の後ろ姿を見ていてヘルカはあれこれ考えたが理由がわからず落ち着かなくなった。
「ライハラ」
女騎士に名を呼ばれ歩きながらアイリがわずかに顔を振り向けた。
「なんだ、ここにトイレはないぞ」
言った直後、少女は慌てて手に握っていた
「お前、いま殴ろうとしただろ!」
ヘルカ・ホスティラは口をへの字に曲げて
「今、殴ろうかなと本気で思った」
とたんにアイリはヘルカから走り逃げようとして叫んだ。
「なぁなな殴るな!」
「誰が殴るかぁぁぁ! 面倒なやつめ! 騎士は意味のない暴力は振るわん」
女騎士に離れて少女が尋ねた。
「意味があったら殴っていいのか!?」
「ライハラ、お前、誰を殴るんだ?」
「頭の壊れてる髪の毛くるんくるん女」
女騎士は瞳を寄せ思い当たりアイリにアドバイスした。
「我の見てない時にやれよ」
とたんにアイリはヘルカの
「おい──その、だ────どうしてお前、魔物を他のものに倒させたりしてるんだ?」
「
「かごの鳥──?」
ヘルカ・ホスティラが問い返そうとするとアイリは
「イルミ王女のことですよ」
どうしてイルミ・ランタサルが
「どういう事だイラ?」
「おわかりにならないんですか?」
「謎かけはやめてくれ。イライラする。はっきり言え」
「あなた達騎士が、騎士道に忠実たれとするのと同じくイルミ王女はあなた方や民という
言われヘルカはイルミ王女のことを振り返った。ウルマス国王が伏せってから
「イラ、王女はおまえ達に──お前やアイリにそうこぼしているのか? がんじがらめだと」
「私は聞いた事がないですし、アイリもそんな話をした事がないです。ですが────」
「アイリ・ライハラの圧倒的な強さはものを見る眼が確かだからだと私は思います」
ヘルカは
女騎士ヘルカ・ホスティラはふと、イルミ・ランタサルの歩む先の闇を少女が気づいているのではと思った。
まわりからがんじがらめにされたイルミ王女の歩む先は闇そのものなのだ。
そうだ──イルミ王女は先行きのわからぬ国の行く末を切り開くために護りの礎を鍛え上げ、大国デアチへ挑もうとしている。
アイリ・ライハラはその事を見切り、国を、民を、イルミ王女を護る我々が強くあれと願っている。
ヘルカ・ホスティラが微笑ましく思っている矢先にいきなり少女の群青の輝きを放つ髪が残像を残し立ち消えた。
慌ててその場に駆け寄る女騎士ヘルカ・ホスティラと若い男の騎士も走り寄ると上の闇から小さく丸い赤く輝く光がすっと下りてきた。