第16話 王道縦走(おうどうじゅうそう)
文字数 1,832文字
6歳の時に連なる大人達を母とともに見つめていた。
この男らはがちゃがちゃと身につけたものを言わせどこに行くの?
みな口を真一文字に引き結び虚ろな眼差しを城門の外へ向けている。
この人らは何をしに行くの?
あるものは腰に剣 を提げ、あるものは肩に星球武器 を乗せ、あるものは立てた槍 を時折杖のように地面に突き立て、取り憑 かれた如 く足を繰り出し続ける。
このもの達は皆 帰ってくるの?
母に尋 ねると私たちの命と暮らしを守るために神のご加護のもと悪いものらを倒しに行くのだと教えられた。
兜 の面の隙間 から視線向けた人に駆け寄り手にした一輪の花を差し上げた。
その男は列から離れ片膝 を地につき御守りにすると告げ受け取った。
6歳の時に戦 へと連なる大人達を見つめていた。
それ が不快なものから見覚えのある第6騎士に変貌 したのは間違いなく、アイリ・ライハラの紛 い物だろうと、縦 しんば本物だろうが、そんなことは関係なく、今、眼の前で両腕を高々と上げアイリ・ライハラを逆さ宙吊りにするなにか は人の類 でなく魔性の敵 だと女騎士ヘルカ・ホスティラは直感で悟 った。
アイリ・ライハラでなくとも民 には変わりない。
ましてやアイリ・ライハラなら命かけ守るべき騎士団長 ということになる。
逆さになって振り回されるアイリ・ライハラが足首振り上げる剣竜騎士団のエステル・ナルヒ擬 きの腕をつかもうと必死で足掻 きながらヘルカ・ホスティラに怒鳴った。
「逃げろヘルカぁ! こいつはそこいらの魔物とわけが違う! 見てくれ以上に手に負えない! 殺されるなぁ!!!」
警告直後、そのエステル・ナルヒ擬 きは細い腕に見合わぬ速さと力で振り下ろしアイリ・ライハラを大理石の床に叩 きつけた。
ノーブル国ランタサル家と教会の剣 としてこの道を歩み始めた時に決めていた。
民 護り、騎士道を外れる行いを恥 じ、誇りを持って王家をお支えするノーブル国リディリィ・リオガ王立騎士団の一員が取るべき道はただ1つ。
女騎士ヘルカ・ホスティラは唇を真一文字に引き結び短剣のグリップ後端のポメルエンドに左手のひらを当て、見てくれだけの第6騎士へと走り込んで胸元に刃 を打ち込んだ。
根元まで短剣が突き刺さった寸秒エステル・ナルヒ擬 きが振り向き口を大きく開き人のものと思えぬ叫聲 響かせヘルカ・ホスティラを威嚇 した。
一撃で利 かぬならさらに打ち込むまでと短剣を引き抜いてヘルカ・ホスティラは顔を強ばらせた。
青い薄明かりに見えたのは刃 にタールのようなものが絡まり伸びて短剣が離れるのを拒んでいた。
同時にその人ならざるものは叩 きつけられ朦朧 とするアイリ・ライハラを振り回し女騎士へぶつけ弾き飛ばした。
馬10数頭ほども飛ばされ大理石に叩 きつけられ派手に滑ったヘルカ・ホスティラは服の下に身につけた甲冑 に守られ衝撃を受けただけで滑り止まると1度頭 振って一気に立ち上がり、暗闇に青く仄 かに輝 くアイリ・ライハラの髪の明かり目掛け駆けだした。
女騎士が駆けだしてすぐ、青い光が振り回されふたたび大理石の床に叩 きつけられた。
あんな衝撃を受けていたら身が保 たない。
もう一度、アイリ・ライハラが叩 きつけられる前にあれ を倒せずともアイリ・ライハラを奪い取る!
駆けて行く先で暗がりに溶け込みそうなエステル・ナルヒ擬 きが振り向いたので女騎士は叫んだ。
「いざ勝負! 我こそはリディリィ・リオガ王立騎士団第3騎士ヘルカ・ホスティラなりィ!!!」
相手がアイリ・ライハラを振り回してくる前に懐 に飛び込み首に刃 打ち込む。
そう念じて駆け込んだ女騎士の足が空を切った。
人ならざるもが片腕振り向けヘルカ・ホスティラの顔面を鷲掴 みにしていた。
朦朧 する意識の中で、アイリ・ライハラはヘルカ・ホスティラが喚 き顔つかむ腕に何度も切りかかるのが見えていた。
駄目なんだぁヘルカ。
こいつに刃 は意味がねぇ。
「我 ──こそ────2百万の夜を渡りきりし神ぞ────か弱き生き物──分 を────きまえよ」
なにかが砕ける音が聞こえ顔をつかまれ吊り上げられた女騎士が両腕を落とし手から短剣が離れ硬い床に金属音が響いた。
ヘルカ・ホスティラ。駄目じゃん。逃げろって言ったのに。
そうかぁ。2百万の夜かぁ。
じゃあ、俺っちの足元にも及 ばないじゃん。
吊りさげられたアイリ・ライハラが片側の口角を上げほくそ笑んで血を流す唇を僅 かに開いて呟 いた。
「ステップ・レス」
刹那 、群青の煌 めきが闇を引き裂いた。
この男らはがちゃがちゃと身につけたものを言わせどこに行くの?
みな口を真一文字に引き結び虚ろな眼差しを城門の外へ向けている。
この人らは何をしに行くの?
あるものは腰に
このもの達は
母に
その男は列から離れ
6歳の時に
アイリ・ライハラでなくとも
ましてやアイリ・ライハラなら命かけ守るべき
逆さになって振り回されるアイリ・ライハラが足首振り上げる剣竜騎士団のエステル・ナルヒ
「逃げろヘルカぁ! こいつはそこいらの魔物とわけが違う! 見てくれ以上に手に負えない! 殺されるなぁ!!!」
警告直後、そのエステル・ナルヒ
ノーブル国ランタサル家と教会の
女騎士ヘルカ・ホスティラは唇を真一文字に引き結び短剣のグリップ後端のポメルエンドに左手のひらを当て、見てくれだけの第6騎士へと走り込んで胸元に
根元まで短剣が突き刺さった寸秒エステル・ナルヒ
一撃で
青い薄明かりに見えたのは
同時にその人ならざるものは
馬10数頭ほども飛ばされ大理石に
女騎士が駆けだしてすぐ、青い光が振り回されふたたび大理石の床に
あんな衝撃を受けていたら身が
もう一度、アイリ・ライハラが
駆けて行く先で暗がりに溶け込みそうなエステル・ナルヒ
「いざ勝負! 我こそはリディリィ・リオガ王立騎士団第3騎士ヘルカ・ホスティラなりィ!!!」
相手がアイリ・ライハラを振り回してくる前に
そう念じて駆け込んだ女騎士の足が空を切った。
人ならざるもが片腕振り向けヘルカ・ホスティラの顔面を
駄目なんだぁヘルカ。
こいつに
「
なにかが砕ける音が聞こえ顔をつかまれ吊り上げられた女騎士が両腕を落とし手から短剣が離れ硬い床に金属音が響いた。
ヘルカ・ホスティラ。駄目じゃん。逃げろって言ったのに。
そうかぁ。2百万の夜かぁ。
じゃあ、俺っちの足元にも
吊りさげられたアイリ・ライハラが片側の口角を上げほくそ笑んで血を流す唇を
「ステップ・レス」