第21話 おかしいんじゃねぇのか?
文字数 1,981文字
引っ張られる移動牢 の鉄格子 に走り寄ってくるおばん やおじん にアイリ・ライハラは顔引き攣 らせ反対の鉄格子 に逃れると後ろから頬 を引っ張られ振り向かされた。
「あなたの信仰心が試されているのですよ! このような逆境から逃れるには入信しかありませんことよ!」
ハンパねぇ!
まるで押し倒される寸前の草食獣に群がる狼のようだ!
見も知らぬヘッレヴィ・キュトラよりも年上の女が目をギラギラさせ熱く語るは教会の民 たれとはわかるが、牢 に入れられたものにまで入信を迫るこいつらはハヒゥランタの街人 以上に怖 ぇええ! と少女は思った。
「アイリ、これがヴィツキン市国──イズイ大陸のカラサテ教最大の宗派の総本山であり──」
何を平静にうんちく垂れてるんだとアイリは元異端審問官を足で蹴り小走りに移動牢 に追いすがり入信書を両手で広げる男女3人へ押しつけるとヘッレヴィは服をつかまれ鉄格子 に引き寄せられ息を吸い込みながら悲鳴を上げた。
「は、放せぇえええ──我 をなんと心得るかぁ、デアチ国元 異端審問官のぉおおお──ヘッレヴィ・キュトラなるぅぞぉ」
その抗議を逆手に取られた。
「元だろ! じゃあ入信しかない。神に祈らなければ異端審問官の職に返り咲けないぞ!」
ヘッレヴィの父親ほどの年齢の男に上着の襟首つかまれ脅迫のように聞こえる口上に役人落ちは鉄格子 に両手を突っ張り逃げようとじたばたした。それをケタケタ笑う少女の耳元に後ろの鉄格子 の間から女が脅した。
「他人を笑うものは他人からも笑われます! それは不信仰心が招く不幸。呪いの輪廻から逃れる方法は1つです。入信しなさい!」
何だか腹立たしくなりアイリはその女の顔面に鉄格子 の間から猫パンチを喰らわせた。あっという間に女が転ぶと代わりに小太りのおばさんが走り寄ってきた。
「あなたぁ! そのような粗暴 も信仰心が足らぬ証拠。入信すればぁ────ぁあ!」
少女から顔に蹴りを入れられおばさんがひっくり返った。それを待ってたとばかりにアイリと同じぐらいの女の子が走り寄ってきた。
「ねぇねぇ一緒に教会行かない? 心洗われて──」
猫パンチ!
小娘がいなくなり別なおっさんが鉄格子 にしがみつきアイリは牢 の中央にヘッレヴィと背をくっつけできるだけ市民から離れた。そうして少女は頭おかしくなりそうだと頭を抱え込んだ。
まるでこいつら物の怪 で悪魔の囁 きに聞こえてくる。親父 と教会行ってたときはこんなこと全然思わなかった。
こいつらこんな生き方で幸せなのか?
こいつらこんなことやってて楽しいのか?
絶対におかしい。
信者を獲得すればより神や天国が近づくと擦 り込まれている。
助けてくれる神を歪 め信じている気がしてくる。なら変えてしまえばいいか? こいつらを含めて何もかもひっくり返せばいいのか?
自信はない。
教皇 をイルミ・ランタサルやヘッレヴィ・キュトラにすげ替えたら信者達は────考え込む少女は何か見えたような気がして顔を上げた。
いつの間にか鉄格子 に群がっていたもの達がいなくなり、移動牢 ががくりと揺れて動きが止まった。
兵士ら30人あまりが両側の鉄格子 を取り囲み槍 の刃口 を向け構えた。そうして1人の兵が鍵束 をじゃらつかせ、ヘッレヴィに近い方の鉄格子 の一部を開いた。
「出ろ! 大人しく従 わないと一斉に槍 を打ち込む!」
鉄格子 を開いた兵がそう告げ後退 さった。
元異端審問官に続いて牢 から出た少女は取り囲んでいるのが30人どころではないことに驚いた。その周りに千人はいる兵が剣 や弓矢を構えていた。
アイリは自分1人なら暴れ逃げおおせるが、ヘッレヴィを連れてだと無理だと思った。まあ、やるときはやるけどと腕を上げ背伸びをした。
一瞬に向けられた30本の槍 を突き出し兵士らが数歩進み出た。
「背伸びしただけじゃん──」
アイリは憮然 と兵士らに言い放った。
「アイリ、刺激するな。殺す口実をこいつらに与えることもあるまい」
役人落ちが少女へ顔を傾け言い聞かせた。
兵士らをかき分け馬から下りた数人の騎士が近づいてくると兵士らに命じた。
「このものらに枷 を!」
直後あっという間に手に枷 と足に鎖 で繋がった重りを付けられアイリはこれじゃあ暴れられないと眉根を寄せた。
「これから猊下 様にお目通しして頂く。発言は許可を受けするように。身勝手な言動は即 斬首 とするので心おけ」
少女が顔を上げると兵士の先に城の城壁ほどは高くない居館 が見えていた。その3階のテラスに法衣を纏 った数人のものらが現れ取り囲んでいる兵士の居館 側のものらが左右に分かれた。その先の高台中央に立つのが教皇 だと少女は思った。
少女はてっきり歳いったおっさんだと思っていた。生まれ始めて眼にする総主教は冷ややかな青い目で見下ろす年のいった女だった。
「アイリ・ライハラとはどちらだ?」
慇懃 に神の僕 たる女が問いかけた。
「あなたの信仰心が試されているのですよ! このような逆境から逃れるには入信しかありませんことよ!」
ハンパねぇ!
まるで押し倒される寸前の草食獣に群がる狼のようだ!
見も知らぬヘッレヴィ・キュトラよりも年上の女が目をギラギラさせ熱く語るは教会の
「アイリ、これがヴィツキン市国──イズイ大陸のカラサテ教最大の宗派の総本山であり──」
何を平静にうんちく垂れてるんだとアイリは元異端審問官を足で蹴り小走りに移動
「は、放せぇえええ──
その抗議を逆手に取られた。
「元だろ! じゃあ入信しかない。神に祈らなければ異端審問官の職に返り咲けないぞ!」
ヘッレヴィの父親ほどの年齢の男に上着の襟首つかまれ脅迫のように聞こえる口上に役人落ちは
「他人を笑うものは他人からも笑われます! それは不信仰心が招く不幸。呪いの輪廻から逃れる方法は1つです。入信しなさい!」
何だか腹立たしくなりアイリはその女の顔面に
「あなたぁ! そのような
少女から顔に蹴りを入れられおばさんがひっくり返った。それを待ってたとばかりにアイリと同じぐらいの女の子が走り寄ってきた。
「ねぇねぇ一緒に教会行かない? 心洗われて──」
猫パンチ!
小娘がいなくなり別なおっさんが
まるでこいつら物の
こいつらこんな生き方で幸せなのか?
こいつらこんなことやってて楽しいのか?
絶対におかしい。
信者を獲得すればより神や天国が近づくと
助けてくれる神を
自信はない。
いつの間にか
兵士ら30人あまりが両側の
「出ろ! 大人しく
元異端審問官に続いて
アイリは自分1人なら暴れ逃げおおせるが、ヘッレヴィを連れてだと無理だと思った。まあ、やるときはやるけどと腕を上げ背伸びをした。
一瞬に向けられた30本の
「背伸びしただけじゃん──」
アイリは
「アイリ、刺激するな。殺す口実をこいつらに与えることもあるまい」
役人落ちが少女へ顔を傾け言い聞かせた。
兵士らをかき分け馬から下りた数人の騎士が近づいてくると兵士らに命じた。
「このものらに
直後あっという間に手に
「これから
少女が顔を上げると兵士の先に城の城壁ほどは高くない
少女はてっきり歳いったおっさんだと思っていた。生まれ始めて眼にする総主教は冷ややかな青い目で見下ろす年のいった女だった。
「アイリ・ライハラとはどちらだ?」