第16話 残穢(ざんえ)
文字数 1,832文字
リディリィ・リオガ王立騎士団の騎士20騎を引き連れアイリ・ライハラはノーブル国北東部にあるホンラッド公爵の館に襲歩 で向かった。
────御師匠 、ホンラッド公爵をどうなさるおつもりで?
横を浮遊してついて来るイラ・ヤルヴァに問われアイリは答えた。
「亡国へと手引きした罰則は簡単だ。命をもって償うしかない」
アイリはくるんくるんや自分に言い寄っていた馬鹿息子アフレッドを思いだした。親のホンラッド公爵が主犯なら息子は資財没収でノーブル国を追放。二人とも荷担してるなら揃って打首。
罪に罰はひつようだが、無益な殺生をしてはならぬとアイリは思った。
それで腹の虫は治まろうと、広がった暗示が消え去るわけではない。
では民 と国王の呪いをどうやって解くのか?
「イラ、国民と王の暗示を解きたい。何かを燃やしたり壊して済むならいくらでも探す。どうやったらいいの?」
────それは多くの国民の前で呪いが消されたと新たな暗示をかける必要があります。
「皆 の前で魔女を打ち首で殺すとか? でもあの魔女は殺したんだぜ。代わりにホンラッド公爵を打ち首にしても駄目だろ」
────あながち駄目ではないかも。やってみることです。
先頭を走る騎士団長がしきりと横を向いて話してる様をみていて誰と話していると困惑しながら第2騎士ユハナ・マルカマキは馬を煽 り騎士団長の向いている反対側に追いついた。
「騎士団長、独り言ですか?」
「いや、天の啓示を────」
いきなりユハナが鞍 から落ち掛けアイリは身を乗り出し慌 てて腕を伸ばし第2騎士をつかみ引き戻した。
「ありがとうございます。ですがあなた様が凄いとは人伝に知っておりましたが公然と神の啓示をお受けになられるなんて!」
「神? いや天使だよ。ノーブルに広がる呪いの解き方を教わっていた」
「頭が下がる思いです。で、如何様 にすれば良いのですか?」
「それは公爵家に着いてからにしよう。襲歩 で馬走らせているいるんだ。前を見て」
そう言われユハナ・マルカマキはまた礼を述べた。
アイリは騎士団長を仰 せつかってもあまりノーブルのリディリィ・リオガ王立騎士団員に親しくなかった。そのため引き連れる多くの騎士を第2騎士のユハナに任せた。そのユハナが尋ねた。
「騎士団長、いつもご主人を連れて行かれるのですか?」
「ああ、腕が立つからな」
アイリがそう言うと後に続くノッチが手綱 握りしめ顔を崩 した。
あと二時 も走ればホンラッド公爵の荘園 領地に入る。だが夕暮れも近くホンラッド公爵を逃がさぬことが肝要だった。
「騎士団長、ホンラッド公爵は警固の兵も少なくこちら20騎で十分に囲めましょう」
第2騎士に言われアイリは問い返した。
「少ないって、傭兵 何人いるの?」
「10人に満たぬ人数のはずです」
「じゃあ、前周でなく東西南北4方を固めよう。傭兵 が集中するようならそこへ残りの半数が応援に入る。公爵逃亡を捕らえるのは残った人数で十分だろう」
「御意 ──ふと思ったのですが、騎士団長お1人でも傭兵 すべて倒せるのでは?」
「どうして?」
「デアチ国の第2から4位までの騎士を倒し、赤竜を1撃で倒されたとか」
「ああ、でも噂には尾ひれつくからな」
「ご謙遜 を。裏の魔女キルシも捕らえられたのでしょ」
「ああ、でも根はいい奴だったよ。姉は大違いだったが」
「表の魔女ミエリッキ・キルシです────」
!!? アイリ・ライハラが横を振り向くと喉をかきむしりユハナ・マルカマキが卒倒し馬から落ちた。
アイリ・ライハラが手綱 引き馬を止め鞍 から飛び降りて息を確かめると頭打った第2騎士が気を失っていた。
「そうか! 暗示の呪いなので死ぬ前に気を失うと効果がないんだ」
アイリと倒れたユハナのまわりに他の騎士が集まりだした。見上げた少女は皆 の心配げな面もちに応えた。
「心配はいらぬ! ユハナが気を取り戻すまで休みなさい」
第2騎士を置いては行けなかった。
どの道、ホンラッド公爵には自分たちが来てることは知られていないので慌 てる必要がなかった。
道はしの緑地にノッチと二人がかりで気を失った騎士を運びマットを枕にして寝かせるとノッチが不気味なことを言い張った。
「暗示にしては強い残穢 だな」
「残穢 ?」
「ああ、汚 れさアイリ。この悪辣 さ、あの銀眼の片割れが残っているのかも」
見上げたアイリ・ライハラが眼にしたのは立ち上がった夕焼けの赤みに照らされたノッチの顔だった。
あんな面倒な奴とまた顔を合わせるのかとアイリはうんざりとなった。
────
横を浮遊してついて来るイラ・ヤルヴァに問われアイリは答えた。
「亡国へと手引きした罰則は簡単だ。命をもって償うしかない」
アイリはくるんくるんや自分に言い寄っていた馬鹿息子アフレッドを思いだした。親のホンラッド公爵が主犯なら息子は資財没収でノーブル国を追放。二人とも荷担してるなら揃って打首。
罪に罰はひつようだが、無益な殺生をしてはならぬとアイリは思った。
それで腹の虫は治まろうと、広がった暗示が消え去るわけではない。
では
「イラ、国民と王の暗示を解きたい。何かを燃やしたり壊して済むならいくらでも探す。どうやったらいいの?」
────それは多くの国民の前で呪いが消されたと新たな暗示をかける必要があります。
「
────あながち駄目ではないかも。やってみることです。
先頭を走る騎士団長がしきりと横を向いて話してる様をみていて誰と話していると困惑しながら第2騎士ユハナ・マルカマキは馬を
「騎士団長、独り言ですか?」
「いや、天の啓示を────」
いきなりユハナが
「ありがとうございます。ですがあなた様が凄いとは人伝に知っておりましたが公然と神の啓示をお受けになられるなんて!」
「神? いや天使だよ。ノーブルに広がる呪いの解き方を教わっていた」
「頭が下がる思いです。で、
「それは公爵家に着いてからにしよう。
そう言われユハナ・マルカマキはまた礼を述べた。
アイリは騎士団長を
「騎士団長、いつもご主人を連れて行かれるのですか?」
「ああ、腕が立つからな」
アイリがそう言うと後に続くノッチが
あと
「騎士団長、ホンラッド公爵は警固の兵も少なくこちら20騎で十分に囲めましょう」
第2騎士に言われアイリは問い返した。
「少ないって、
「10人に満たぬ人数のはずです」
「じゃあ、前周でなく東西南北4方を固めよう。
「
「どうして?」
「デアチ国の第2から4位までの騎士を倒し、赤竜を1撃で倒されたとか」
「ああ、でも噂には尾ひれつくからな」
「ご
「ああ、でも根はいい奴だったよ。姉は大違いだったが」
「表の魔女ミエリッキ・キルシです────」
!!? アイリ・ライハラが横を振り向くと喉をかきむしりユハナ・マルカマキが卒倒し馬から落ちた。
アイリ・ライハラが
「そうか! 暗示の呪いなので死ぬ前に気を失うと効果がないんだ」
アイリと倒れたユハナのまわりに他の騎士が集まりだした。見上げた少女は
「心配はいらぬ! ユハナが気を取り戻すまで休みなさい」
第2騎士を置いては行けなかった。
どの道、ホンラッド公爵には自分たちが来てることは知られていないので
道はしの緑地にノッチと二人がかりで気を失った騎士を運びマットを枕にして寝かせるとノッチが不気味なことを言い張った。
「暗示にしては強い
「
「ああ、
見上げたアイリ・ライハラが眼にしたのは立ち上がった夕焼けの赤みに照らされたノッチの顔だった。
あんな面倒な奴とまた顔を合わせるのかとアイリはうんざりとなった。