第8話 迷妄(めいもう)
文字数 1,781文字
「あなた達が──これほど辛い思いを────」
地面に両膝 落とし呟 くイルミ・ランタサルの肩にアイリ・ライハラは手をかけ慰 めた。
「なれっこだ。くるんくるん、お前初めてだったから辛く思えるんだ」
イルミ・ランタサルは頭 振った。
「なれっこだなんて────死がこれほどに辛いものだなんて────」
王妃 の前にヘルカ・ホスティラが片膝 ついてイルミ・ランタサルに言い切った。
「慣 れなくてよろしいです王妃 様。斬り合い命危険に曝 すのは剣持つ我らが務め。ご心配ありません」
だがイルミ・ランタサルは俯 いたまま顔を上げようとしない。
「母君 が死ぬ前にアイリと出逢っていれば────」
絞りだすようにか細い声で吐露 するイルミにアイリは顔を寄せて言い聞かせた。
「天国に行った女王様を連れ戻せやしないだろ」
頷 いて立ち上がった王妃 からアイリは手を放しヘルカ・ホスティラが片膝 着いたままイルミ・ランタサルを見上げた。
「さあ立ちなさい。魔女の塒 はすぐそこです入り口を探しましょ」
女騎士も大丈夫とみて立ち上がった。
イルミ・ランタサルはアイリの腕つかみ引き寄せると頬 に短く口づけした。
それをじっと見つめるヘルカ・ホスティラにアイリは言い切った。
「俺に殴りかかるなよ」
「ば、馬鹿いうな。拙者 はそんなに器量なしではないぞ」
それから5人はその大きな髑髏 をぐるりと1周したが出入り口らしいものはなかった。
「これでは攻めようがございません」
そう女騎士ヘルカが言い捨てるとイルミが提案した。
「なければ作ればよいのです。壁を叩きながら廻って最も響くところを壊しましょう」
ヘルカとテレーゼが剣 の握り手後端──ポメルで壁を叩 いてゆき反響のある部分を見つけた。
「ヘルカ、出来ますか?」
王妃 にできるかと問われ大柄な女騎士は首を振らなかった。剣 を両手で握るとポメルをガンガンにぶつけ始めた。
十数回殴りつけると急に罅 が縦に走った。
そこにヘルカ・ホスティラは肩から体当たりすると1回で人が通れるほどの穴が開いた。
中にまずヘルカが入り次にテレーゼが入るとテレーゼが出入り口から顔を出して外の3人に伝えた。
「中は結構冷えます。1枚羽織った方がよろしいかと」
イルミとアイリが1枚羽織り中へ入ると真っ暗ではなかった。
「氷を通し陽の明かりが差し込んでいるのですね。でも暗がりに気をつけましょう。魔女がどこに潜むかわかりません。気をつけて」
そうイルミが注意を促 すと皆 が頷 いた。
中は部屋というより洞 に近かった。家具などなくただの空間だった。
隣の部屋への短い通路は1つでそれが左右に分かれている。
「左へ行きましょう」
そう王妃 が指示し剣 を抜いてヘルカとテレーゼが先へ向かうと隣の部屋にも何もなかった。イルミは通路に出ると最初の部屋の出入り口両方の袖壁にナイフで印をきざんだ。
そうして次の部屋を覗 き込みまた出入り口の両壁に前回とは違う印をきざんだ。
それから18つ部屋を覗 き込んでイルミは嫌な予感がしだした。
部屋に繋がる通路は真っ直ぐでどこにも曲がり角はなく湾曲もしていない。
だが表にいたときは髑髏 の大きさは城より小さく館 ほどだった。
先を行くヘルカが次の部屋に入ろうとして出入り口の印に気づいた。
「王妃 様、印をした部屋です」
イルミが出入り口の印を確認すると最初の外から入り込んだ部屋だった。
真っ直ぐに廊下を歩き引き返しも曲がりもしてない。進む先に最初の部屋があるのが変だった。
さらにその最初の部屋にあるはずの外への出入り口が消え失せていた。
「戻ってくるわけが──ヘルカ、テレーゼそれぞれ通路の反対へ向かい歩きなさい」
イルミがそう指示すると薄暗い通路に2人の背姿が消えしばらくして2人とも出たのとは逆側から歩き戻ってきたのでイルミ・ランタサルは眼を細め呟 いた。
「参ったわね。全員魔女の術中に落ちたわ」
「そしたらヘルカとテレーゼ、2人とも通路の反対へ向かい歩いて時々振り向いて私達が見えるぎりぎりで立ち止まって私達を確認し見えなくなったら少し戻って」
言われるままにヘルカとテレーゼは通路の逆方向に歩き出し王妃 が見えるぎりぎりで立ち止まった。
「私 に声が聞こえますか!?」
そうイルミが大声をだすと2人とも両方から聞こえると言い張った。
ああ、失敗した。どこで術中に落ちたのだとイルミ・ランタサルは困惑した。
地面に
「なれっこだ。くるんくるん、お前初めてだったから辛く思えるんだ」
イルミ・ランタサルは
「なれっこだなんて────死がこれほどに辛いものだなんて────」
「
だがイルミ・ランタサルは
「
絞りだすようにか細い声で
「天国に行った女王様を連れ戻せやしないだろ」
「さあ立ちなさい。魔女の
女騎士も大丈夫とみて立ち上がった。
イルミ・ランタサルはアイリの腕つかみ引き寄せると
それをじっと見つめるヘルカ・ホスティラにアイリは言い切った。
「俺に殴りかかるなよ」
「ば、馬鹿いうな。
それから5人はその大きな
「これでは攻めようがございません」
そう女騎士ヘルカが言い捨てるとイルミが提案した。
「なければ作ればよいのです。壁を叩きながら廻って最も響くところを壊しましょう」
ヘルカとテレーゼが
「ヘルカ、出来ますか?」
十数回殴りつけると急に
そこにヘルカ・ホスティラは肩から体当たりすると1回で人が通れるほどの穴が開いた。
中にまずヘルカが入り次にテレーゼが入るとテレーゼが出入り口から顔を出して外の3人に伝えた。
「中は結構冷えます。1枚羽織った方がよろしいかと」
イルミとアイリが1枚羽織り中へ入ると真っ暗ではなかった。
「氷を通し陽の明かりが差し込んでいるのですね。でも暗がりに気をつけましょう。魔女がどこに潜むかわかりません。気をつけて」
そうイルミが注意を
中は部屋というより
隣の部屋への短い通路は1つでそれが左右に分かれている。
「左へ行きましょう」
そう
そうして次の部屋を
それから18つ部屋を
部屋に繋がる通路は真っ直ぐでどこにも曲がり角はなく湾曲もしていない。
だが表にいたときは
先を行くヘルカが次の部屋に入ろうとして出入り口の印に気づいた。
「
イルミが出入り口の印を確認すると最初の外から入り込んだ部屋だった。
真っ直ぐに廊下を歩き引き返しも曲がりもしてない。進む先に最初の部屋があるのが変だった。
さらにその最初の部屋にあるはずの外への出入り口が消え失せていた。
「戻ってくるわけが──ヘルカ、テレーゼそれぞれ通路の反対へ向かい歩きなさい」
イルミがそう指示すると薄暗い通路に2人の背姿が消えしばらくして2人とも出たのとは逆側から歩き戻ってきたのでイルミ・ランタサルは眼を細め
「参ったわね。全員魔女の術中に落ちたわ」
「そしたらヘルカとテレーゼ、2人とも通路の反対へ向かい歩いて時々振り向いて私達が見えるぎりぎりで立ち止まって私達を確認し見えなくなったら少し戻って」
言われるままにヘルカとテレーゼは通路の逆方向に歩き出し
「
そうイルミが大声をだすと2人とも両方から聞こえると言い張った。
ああ、失敗した。どこで術中に落ちたのだとイルミ・ランタサルは困惑した。