第11話 併合(へいごう)
文字数 1,912文字
百年以上にイルベ連合を苦しめてきた大魔族が滅んだことでイルベ連合は大騒ぎになった。
首都に戻ったアイリ・ライハラと狼娘、それに手負いのヘルカ・ホスティラと兵団2千は凄まじい歓待を受けた。
だが妖魔3体を小柄なアイリ・ライハラとヘルカ・ホスティラだけで倒したと知ると役人らは少女と女騎士を腫れ物に触るような扱いになった。
「すまない。アイリ────」
ボロボロになりベッドに横たわり養生する友に横の椅子に座るアイリは慰めた。
「大したもんだよヘルカ。1人で2体の幹部クラスの魔物を倒したんだからな。ゆっくり休んで傷を癒 せよ」
「ヘルカちゃん、一咬みしましょうか。狼族 になったら傷もすぐに治りますよ」
アイリの横に座る狼娘リーナがそう言い口を大きく開くとアイリがリーナの首に腕を回し締め上げた。
「ダメだろうがリーナ! やたらと咬むなって言っただろうが」
リーナにヘッドロックかけた少女にヘルカは苦笑いすると尋 ねた。
「お前1人に役人らを任せてすまない。大変だろう」
「ああ、それか。実はなぁ、ノーブル国にイルベ連合を併合する事にしたんだ。でないと統括官 にされそうで」
狼娘から腕を放した少女がそう説明すると、女騎士がじっとアイリを見つめた。
その無言の間 に堪えかねてアイリは問うた。
「な、なんだよ。おっかないなぁ」
「我が国に併合するなら────イルミ・ランタサル王妃 が乗り込んで来るのか?」
アイリは苦笑いを浮かべた。
「いやぁ、もう報せは走らせてあるんだ。2週間ぐらいしたらくるんくるんやって来るだろうよ」
それを聞いてヘルカは上半身を起こそうとして痛みに呻 きアイリは慌 てて女騎士を枕に押し戻した。
「こんな無様な醜態を王妃 様に見せられぬ────痛たたたっ」
「無理すんな。お前、身体が穴だらけなんだぞ。普通なら死んでるとこなんだぞ。まだ1週間しかたってないんだからな」
「なんのこれしき────」
また上半身起こそうとする女騎士の額にアイリは人さし指を押し当て頭を枕に戻させた。
「ほらみろ。今のお前は指一本に負けるんだから。くるんくるんが来る頃には傷もけっこう癒えているさ」
悔しそうに顔を歪 めるヘルカ・ホスティラに少女は苦笑い浮かべた。
その寝室の扉がノックもされずいきなり開かれ中年の役人が部屋に走り込んできた。
「大変ですアイリ殿、連合庁舎上空にワイバーンが!」
ベッド横の椅子に座っていたアイリは困惑げな面もちで役人へ振り向いた。
火刑人ヴェラを倒された魔族が復讐に現れたかと少女は思って椅子から立ち上がった。
「アイリ、こんな有り様だ。頼む────」
ヘルカ・ホスティラに言われアイリは女騎士へ顔を振り向けた。
「心配するな。斬 り倒してくる。リーナちゃんと看病しろよ」
そう元気づけアイリは役人の後に続いてヘルカ・ホスティラに貸し与えられている住居の寝室を出て役人に問うた。
「ワイバーンは何匹攻めてきてる?」
「1頭です」
「楽勝じゃん。剣 投げつけて落としてやる」
「頼 もしいですアイリ殿──ですが、ワイバーンの背に数名の魔物が乗っているようなのです」
アイリはやっぱり魔族の復讐だと思った。
役人に案内され庁舎へ行くと玄関前の広場に近衛兵が20人ほどスピアを手に集まって上空へ顔を上げていた。
アイリは見まわしたがそれらしい翼竜は見あたらず役人に尋 ねた。
「いないじゃん。偵察に来たのかも」
アイリは役人と上空を見まわしているといきなり庁舎の屋根の陰から緑色の胴が居館 ほどもあるワイバーンが飛んできた。
でけぇ!剣 1振り投げ上げて落とせる魔物じゃねぇ!
アイリが困惑していると大きな円を描くように飛んでいた翼竜は庁舎前の広場に下り掛かり近衛兵らが慌 てて広がり逃げだした。
着地したワイバーンの背には馬の鞍 と同じ方法で籠 が背に着けられており、戸を開いて数人の男がまず翼竜の背から尾の方へ滑り下り、最後に派手なドレス着た盛り髪の女が滑り下りた。
アイリ・ライハラの眼が点になった。
翼竜から下りた女にどうも見覚えがある。少女が見ているとドレスの女は腰に両手当て周囲を見回しアイリに気づいて激しく手招きした。
「アイリ! アイリ・ライハラ!」
少女の隣にいる役人が横へ振り向き尋 ねた。
「魔族にお知り合いですか?」
魔族ではなかった。
「いや、あいつイルミ・ランタサル──王妃 だ。くるんくるんだよ」
アイリがなかなか来ないのでイルミ・ランタサルは家臣 3人引き連れてずんずんと少女へと歩いてきながら問いただした。
「アイリ! イルベ連合を我がノーブル国に併合ですって!?」
問われた少女はそんな話より、あの翼竜どうしたんだよと怪訝 な面もちで王妃 を出迎えた。
首都に戻ったアイリ・ライハラと狼娘、それに手負いのヘルカ・ホスティラと兵団2千は凄まじい歓待を受けた。
だが妖魔3体を小柄なアイリ・ライハラとヘルカ・ホスティラだけで倒したと知ると役人らは少女と女騎士を腫れ物に触るような扱いになった。
「すまない。アイリ────」
ボロボロになりベッドに横たわり養生する友に横の椅子に座るアイリは慰めた。
「大したもんだよヘルカ。1人で2体の幹部クラスの魔物を倒したんだからな。ゆっくり休んで傷を
「ヘルカちゃん、一咬みしましょうか。
アイリの横に座る狼娘リーナがそう言い口を大きく開くとアイリがリーナの首に腕を回し締め上げた。
「ダメだろうがリーナ! やたらと咬むなって言っただろうが」
リーナにヘッドロックかけた少女にヘルカは苦笑いすると
「お前1人に役人らを任せてすまない。大変だろう」
「ああ、それか。実はなぁ、ノーブル国にイルベ連合を併合する事にしたんだ。でないと
狼娘から腕を放した少女がそう説明すると、女騎士がじっとアイリを見つめた。
その無言の
「な、なんだよ。おっかないなぁ」
「我が国に併合するなら────イルミ・ランタサル
アイリは苦笑いを浮かべた。
「いやぁ、もう報せは走らせてあるんだ。2週間ぐらいしたらくるんくるんやって来るだろうよ」
それを聞いてヘルカは上半身を起こそうとして痛みに
「こんな無様な醜態を
「無理すんな。お前、身体が穴だらけなんだぞ。普通なら死んでるとこなんだぞ。まだ1週間しかたってないんだからな」
「なんのこれしき────」
また上半身起こそうとする女騎士の額にアイリは人さし指を押し当て頭を枕に戻させた。
「ほらみろ。今のお前は指一本に負けるんだから。くるんくるんが来る頃には傷もけっこう癒えているさ」
悔しそうに顔を
その寝室の扉がノックもされずいきなり開かれ中年の役人が部屋に走り込んできた。
「大変ですアイリ殿、連合庁舎上空にワイバーンが!」
ベッド横の椅子に座っていたアイリは困惑げな面もちで役人へ振り向いた。
火刑人ヴェラを倒された魔族が復讐に現れたかと少女は思って椅子から立ち上がった。
「アイリ、こんな有り様だ。頼む────」
ヘルカ・ホスティラに言われアイリは女騎士へ顔を振り向けた。
「心配するな。
そう元気づけアイリは役人の後に続いてヘルカ・ホスティラに貸し与えられている住居の寝室を出て役人に問うた。
「ワイバーンは何匹攻めてきてる?」
「1頭です」
「楽勝じゃん。
「
アイリはやっぱり魔族の復讐だと思った。
役人に案内され庁舎へ行くと玄関前の広場に近衛兵が20人ほどスピアを手に集まって上空へ顔を上げていた。
アイリは見まわしたがそれらしい翼竜は見あたらず役人に
「いないじゃん。偵察に来たのかも」
アイリは役人と上空を見まわしているといきなり庁舎の屋根の陰から緑色の胴が
でけぇ!
アイリが困惑していると大きな円を描くように飛んでいた翼竜は庁舎前の広場に下り掛かり近衛兵らが
着地したワイバーンの背には馬の
アイリ・ライハラの眼が点になった。
翼竜から下りた女にどうも見覚えがある。少女が見ているとドレスの女は腰に両手当て周囲を見回しアイリに気づいて激しく手招きした。
「アイリ! アイリ・ライハラ!」
少女の隣にいる役人が横へ振り向き
「魔族にお知り合いですか?」
魔族ではなかった。
「いや、あいつイルミ・ランタサル──
アイリがなかなか来ないのでイルミ・ランタサルは
「アイリ! イルベ連合を我がノーブル国に併合ですって!?」
問われた少女はそんな話より、あの翼竜どうしたんだよと