2023/01/08 20:23

文字数 889文字

レターの返信の再掲(みんなに読んでほしいので)
南ノさん、最後までお読みいただきありがとうございました。

作家というのは、「この作品を書くためだけに、この作家は生まれてきたのではないだろうか」と思える作品を書くことがあります。僕にとってこの作品は、太宰治の『人間失格』です。一応モチーフとして青春を扱うので、えぐいシーンはいくつもカットしていますが、まとわりつく「死」は、太宰や芥川の全作品を何度も通読したことが大きいです。

高校時代から太宰と芥川が大好きでしたが、全集を買うお金も青空文庫もその頃はなく、ずっとあとになってからの全集の、何回にもわたる通読で、僕はこの『密室灯籠』をどう描き出すかを考えていました。書く力量がなく、執筆出来たのがいい歳した今ごろになってしまいましたが(タイトルの元ネタは太宰治『ろまん灯籠』というわけです)。僕は、でも、まだ生きています。

夏目漱石の遺作に『明暗』があります。暗い部分だけ執筆して、明るい後半を書く前に、彼は亡くなってしまいました。また、太宰治にも『グッド・バイ』という絶筆があります。これも『明暗』と同じく、作品の内容が転調を迎えるちょうどそのあたりで終わっています。

でも、僕はどうやら、また生き残ってしまったようです。死にたがりのクセに、結局生きています。僕は正直、この作品を書いたあとの人生のことを考えていなかったのです。20年間ある意味構想を練っていた小説が終わったあと、どう生きるか、まるで人生設計すら考えていなかった。でも、僕は漱石の『明暗』の続きも、太宰の『グッド・バイ』の続きも、読みたかった。これらのレターや友人たちとのやり取りが芥川の『或る旧友に送る手記』になってはいけないと、思うのです。

傑作と仰っていただけて身に余る光栄です!! そして「代表作」ではなく「代表作の一つ」と仰っていただけたことも、嬉しいです。まだまだこれからも、生きて、書いていこうと思います。本当にありがとう、そしてこれからもよろしくお願いいたします。がんばるぞーーーー!!

2023/01/08 20:23 コメント(-)| るるせの殺伐☆飼育箱
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み