第234話 越前国(5)勝利の分け前⑤

文字数 470文字

 堀久太郎秀政と近藤源吾重勝は、
共に二十三歳だった。
 縁あって袖触れ合い、
秀政は仙千代のみならず、
市江兄弟や重勝を目に掛けてくれていて、
中でも重勝とは同齢ゆえか、
気が合うように見受けられ、
家中で日が浅く知る相手も少ない重勝を思えば、
仙千代は有り難さが募った。

 「(きゅう)様、お口が過ぎます。
そもそもこの万見仙千代、
けして底意地悪くはございません」

 「良いではないか、
意地が悪い位でなければ近侍は務まらぬ。
しかも鋭さを朴直で包んでおるのも
よう似ておるな」

 無論、仙千代は誉め言葉だとして受け、

 「では、源吾が申すに、
久様も同意なさるのですね」

 と確かめた。

 秀政は、

 「まあ、誰から如何に見ようとも、
一色殿に信があるとは思われぬ。
振り子とは、源吾殿、よう言うた。
三年、五年の後の一色家、
()の地で健在なれば良いのだが。
 一色家が織田家に臣従し、
逃げ落ちた足利義昭とは縁を切り、
国衆共々、
上様に尽くせばそれで話は終わるのだ。
ただ、それだけのことなのだ……」

 と嘆息を吐き、今一度、
 
 「それにつけても明智殿の猛烈ぶりよ。
文字通り、席の暖まる(いとま)も無い」

 
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