第252話 勝家の一門(3)室の座②

文字数 403文字

 何の機嫌が良かったものか、
駄弁を好まぬ信長がこの時は、

 「権六さえ望むなら、
我が妹の誰ぞ輿入れさせても良いのだが、
当人があの様子で衆道を好み、
最近では毛受(めんじゅ)庄助勝照であったか、
かつての寵童にして今や小姓頭の若衆が
家中を仕切っておるからな、
今更、於犬であれ於市であれ、
たとえ再嫁とはいえ易々と入れられはせぬ。
庄助に隙がないだけに、
権六でなくとも用が足りるわ。
庄助が元服を終えた今、
褥は褥で、
次の小姓が温めておるようだしな」

 若衆とは小姓勤めを経て、
主君の側近を務める者を指し、
織田家で言えば現在は秀政を指し、
仙千代、竹丸がそこに続いた。
 男色に食指を動かさぬ秀吉とはいえ、
羽柴家であれば頭抜けて賢い石田佐吉が頭角を現し、
若衆的な役割に近付いている。
 若衆は主の名代であり、
通常時、家臣は当然のこと、
若殿や奥方であろうとも、
若衆を通さないでは殿に目通りすることはできず、
主の信がある限り、立場は甚だ強かった。

 
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