第235話 越前国(6)勝利の分け前⑥

文字数 587文字

 期待の大きさ、出世ぶりで、
秀吉と双璧をなす光秀だった。
 秀吉はこの後、働き盛りを迎える。
一方、仙千代からすれば、
祖父の世代と言える光秀だった。
 家中で似た齢の現役武将といえば、
信長の父に若くして仕えた金森長近が居て、
長近は先の長篠城奪還戦で鮮やかな戦功をあげ、
悦んだ信長が、
長の一文字を与えて可近(ありちか)から長近となり、
今回は越前大野を短期の間に平定し、
大野郡を賜った。
 ここに至るまで、長近でさえ、
三十年以上を要している。
 やはり代を継いでの織田家の家臣で、
先代 信秀の小姓出身であり、
信忠軍副将という栄えある役を帯びている河尻秀隆は、
武田との最前線、肥田城を任されたことはあるが、
警固の為であり城主ではなかった。
 
 それらを鑑みても、
光秀の出世は光の如く速かった。
 仙千代は、
信長が光秀の能力を極めて高く評価し、
働きに応えてやろうと思えばこそ、
次々任務を与え、
成果を上げさせているのだと理解した。
 身も蓋もない言い様に聞こえはするが、
光秀の優秀を買えばこそ、
光秀の齢は弱点であり、
青い仙千代から見てさえ、
大局的といえば聞こえが良いが
ある種、大雑把なところのある秀吉と比べ光秀は、
完全を求め、徹底し、
万事、四角四面に受け止め、動く人物で、

 あれではお疲れが取れますまい、
時に気鬱とでもいうような顔を
されている時がある……

 と案じずにはいられないことが、
ないではなかった。




 




 
 


 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み