第153話 雷神と山中の猿(4)天誅③

文字数 427文字

 「まさに。己の大和支配の終焉を見て、
興福寺はつくづく面白くないのでありましょう」

 「寺社であろうと従うべきが天下布武。
旗印への面従腹背ぶりに業を煮やした雷神が、
興福寺に鉄槌を下したとは考えぬのか」

 「足利家、鷹山家、興福寺、そして高山。
誰もが知るその結び付き。
よりにもって高山が雷で燃えた。
興福寺は世に示しが付かず、
口惜しまぎれの言い訳で、
左様な流言を飛語するのでありましょう」

 「それ程に儂の政策が痛いと見える」

 「仰せの通りにございます」

 時に天変地異は、
為政者の不徳や失政の表れだとされていた。
 興福寺が流した妄言は、
信長に対する興福寺の歯噛み、
負け惜しみだと秀吉は言うのだった。

 御耳に届く流言を一早く(しら)せておいて、
尚且つそれは、上様には敵わぬと、
興福寺が口惜しがっておるのだという切り口……
上様が憎からず思うのも無理はない……
羽柴殿……

 襖の向こうに、
仙千代、佐吉、市松、夜叉若は、
それぞれの思いを胸に、
信長、秀吉主従の声を聴いていた。

 









 

 

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