第256話 勝家の夢(1)願い①
文字数 408文字
鬼柴田と言われるだけはあり、
戦に於いて敵にも己にも厳しい勝家だった。
武人としての矜持は無双であって、
長島の合戦で馬印を奪われるという不覚を取った勝家は、
不名誉を恥じ、
その場で腹を掻っ捌こうとしたものを忠臣、
毛受 庄助勝照が討死覚悟で敵中に飛び込んで、
無事に旗を取り戻したことから命を繋げたという、
純な激情家でもあった。
仙千代が市江兄弟と岐阜へ出仕した頃、
勝家は既に宿老として君臨しており、
信長より年長であることから、
十代の仙千代には祖父とも言える世代にあたった。
勝家は仙千代が知る限り、
身辺に女人の気配はなく、
姉妹や小姓、若衆が勝家の世話を請け負っていた。
勝家が紅潮し、拳を握って顎を引き締めた様に、
仙千代は、
柴田殿のことだ、
たとえ上様の仰せであっても、
室 は要らぬとまたしても仰るのであろう、
きっぱり、厳かな口調をもって、
国の統治や合戦に忙しく、
室に時を割いてやれぬと理由を付けられ……
と確信していた。
戦に於いて敵にも己にも厳しい勝家だった。
武人としての矜持は無双であって、
長島の合戦で馬印を奪われるという不覚を取った勝家は、
不名誉を恥じ、
その場で腹を掻っ捌こうとしたものを忠臣、
無事に旗を取り戻したことから命を繋げたという、
純な激情家でもあった。
仙千代が市江兄弟と岐阜へ出仕した頃、
勝家は既に宿老として君臨しており、
信長より年長であることから、
十代の仙千代には祖父とも言える世代にあたった。
勝家は仙千代が知る限り、
身辺に女人の気配はなく、
姉妹や小姓、若衆が勝家の世話を請け負っていた。
勝家が紅潮し、拳を握って顎を引き締めた様に、
仙千代は、
柴田殿のことだ、
たとえ上様の仰せであっても、
きっぱり、厳かな口調をもって、
国の統治や合戦に忙しく、
室に時を割いてやれぬと理由を付けられ……
と確信していた。