第173話 蹴鞠の会(11)長秀の名誉⑤

文字数 401文字

 信長の吉法師時代から付き従い、
信長の姪にして養女である(つま)を持つ長秀に、
新たな称号が加わって、
九州の古い名族である惟住(これずみ)の姓を与えるとは、
信長の長秀に対する別格の寵愛が、
またしても知れた。

 官位を授かる他の方々は、
誰もが年配の長老衆で、
かつ、幕府や朝廷との交渉に大きな功のあった皆様、
そう考えれば丹羽様は、
武に(まつりごと)に長年携わってこられたものの、
お一人だけ、突出してお若く……

 仙千代は目を剥いた。

 長秀は喜悦して、
恐縮しつつも有り難く受けるはずだった。

 「もったいなくも、拝辞致しまする」

 毅然とした口ぶりだった。

 他であれば激昂の可能性さえある信長が静寂だった。

 「この五郎左、生涯、一五郎左で結構。
佐和山を賜って、
これ以上何を望みましょうか」

 十分だと長秀は言うのだった。

 信長と長秀の仲であれば、
言葉遣いこそ主従だが、
真の真では遠慮はないはずで、
長秀がもったいぶって固辞しているとは思われなかった。

 
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