第213話 北陸平定戦(5)敦賀城

文字数 730文字

 天正三年、葉月の十二日、
信長に同道し、初秋の越前へ仙千代は発った。
 その日は垂井に泊まり翌十三日は、
旧浅井長政領、小谷(おだに)で新領主 羽柴秀吉が出迎え、
十分な兵糧を差し入れた。
 十四日、敦賀着。
 敦賀では武藤舜秀(きよひで)の城に宿陣した。

 信長は舜秀の軍才を高く評価しており、
評議となると真っ先に意見を言わせた。
 元来、美濃の出である舜秀は、
信長の配下となって戦功をあげ、
やがて尾張へ居を移し、
昨今は勝家を援け、敦賀を拠点としていた。
 
 舜秀は信長の敦賀入城に合わせ、
人々に城下の清掃を命じた。
 清潔を好む信長の気質を知っての振舞は、
崇敬が察せられ、
いかにも爽快だった。

 舜秀は図を広げ、
敵方が立て籠もっている諸城は、
虎杖(いたどり)、木目峠、鉢伏(はちぶせ)
今城、杉津(すいつ)、南越前海岸の新城、
竜門寺砦等など、幾多にわたり、
一揆軍は要所要所に布陣して連携を取り、
堅固に守備をしていると戦況を伝えた。

 「明日、風雨が強いと占断が出ております。
天候回復を待ち、攻撃と致しまするか」

 舜秀が問うた。
 佐久間信盛、柴田勝家、滝川一益、
原田直政、丹羽長秀、梁田広政、
明智光秀、羽柴秀吉、前田利家、
荒木村重、細川藤孝、稲葉一鉄、蜂屋頼隆、
織田信雄(のぶかつ)、織田信孝、織田信澄、
織田信包(のぶかね)ら、
他にも朝倉家、浅井家の旧臣で
信長に降りた諸将や浪人衆はじめ、
参集の大将は総軍三万以上の兵を率い、
海上からも数百艘の軍船が旗首(はたがしら)を立て、
敵の城や砦を包囲している。

 「雨風は敵も同じこと、
障害ではない。
明朝全軍一致、総攻撃とする!」

 昨年の長島一向一揆征圧戦、
今夏の東三河 長篠城奪還戦、
その後、信忠軍の岩村城攻めと、
信長は大規模戦が続き、
兵の消耗を鑑みて、
かくなる大軍で攻め入るからには
電光石火の決着を望んだのだった。

 


 

 



 


 

 
 
 

 
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