第86話 2ヶ月と23日目 8月17日(月)

文字数 722文字

 しかし今日ほど依存症の自主治療に於いて自身努力をしなかった日もない。
 それもその筈で、まったく競馬もパチンコもしようと思わなかったのだから、何とも努力の仕様がないのである。
 DVDを観たり小説を書いたりした他は、これと言って何もしていない。
 明後日から派遣バイトか始まるのだが、明日準備したので良いだろう。
 などと余裕をブッコいていたら、昨日の競馬依存症の友人から電話が入った。
 私に言われた通り少額競馬を始めたと言うことで、早速今日から1日300円で公営競馬をしたらしく、やはり負けたが300円で済んだことの礼を何度も言われた。
 読者諸兄の中には競馬をしない人も居るだろうし、「昨日競馬やってて、少額かもしんないどけまた今日もすんのかよ」、と、思う人も居るかも知れない。
 しかし競馬依存症の人間にしてみたら、1日300円で済ませることは快挙なのだ。
 後はどこ迄持彼がそれを持続出来るか、或いは反動にどれだけ耐えられるかである。
 その他も自身が自主治療を始めた頃のことを思い出しながら、友人には出来得る限りのアドバイスをした。
 電話でも話したのだが電話を切るとき師匠とまで言ってくれた。
 何だか照れ臭いが、今日迄の競馬依存症に対する自主治療が報われた気がする。
 自分以外にも競馬地獄から抜け出せる人が出てくれれば、これ程嬉しいことはない。
 凄く良いことをした気分で、今日の無事に感謝しつつ明日の無事も確実だ。
 あ、それと、やはり彼は来月借金を一万五千円返してくれるらしい。
 何度も言われて、何度も何時でも良いと言ったのだが、面倒臭いので、それは授業料だと思うことにした。
 やはり今日も自主治療に感謝である。

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