第106話 3ヶ月と12日目 9月6日(日)

文字数 1,076文字

 今日ほ朝からアメリカドラマの「エレメンタリー」と言う、推理物のDVD を観ていてのだが、そのドラマの主人公ホームズが大富豪の息子で謎解きの天才と言う設定なのだ。  
 それだけでもかなり無理のある設定なのだが、その上薬物依存症だった時期があり現在もリハビリ中で、報酬もなく無償で事件の謎を解くべく警察の顧問を引き受けている、と、言うずば抜けて有り得ない設定。
 しかし観ているうちにあることに気付いたのである。
 主人公のホームズは金の為に推理をしているのではなく、自分が生きる為に事件の謎を解いているのだと言うことに。
 つまり彼の生きる意味は、事件の謎を解く為だけにあるのだ。
 だからこそ物語の中での彼は潔く、美しい。
 これを自分に置き換えてみると。
 まったく潔くも、美しくもない。
 先ず第一に私は貧乏なのである。
 それ故に小説や文章で食べれたらいいなぁ、と、言う下心が大いにある。
 従って金の為ではなく、生きる意味が小説を書く為だけにあると言う、潔く、美しい私ではない。
 そこで今日からは心を入れ替えたいと思う。
 金の為てはなく、生きる意味が小説を書く為だけにある自分に。
 そして今日から潔く、美しい私に生まれ変わるのだ。
 以前は負け惜しみで金が欲しいから小説を書いているんじゃない。
 とか言ったこともあるが、ここ迄来たらデビューの可能性を探って女々しく生きるより、潔く、美しく、だ。
 と、そんなことを考えているうちに、競馬の開催時間も、パチンコ屋の閉店時間も過ぎた。
 従って今日の無事は生きる意味が小説を書く為だけにある、潔く、美しい、明日の自分に感謝なのだ。
 そして明日の無事なのだが、潔く、美しい私になれれぱ確実なのであれぱ、それじゃまったく貧乏なままではないか、と、言うことに気付いた。
 そこで懸案の宝くじスケジュールを考えて計画を立ててみたのだが、出来上がったスケジュール表を見ながら思ったのである。
 確かに依存症治療にはなっているし、また生きる意味が小説を書く為だけにあるのだとしても、これでは金への執着が捨て切れていないではないか、と。
 従って明日の無事は潔くも、美しくもなく、金への執着を小説から宝くじに変更しただけの自分のお蔭で、確実と言うことになる。
 だって貧乏は嫌でしょうよ。
 でもそのことだけ秘密にしていれぱ、たとえ潔く、美しくはなくても、私の生きる意味は小説を書く為だけにある、とは言えよう。
 嘘は言っていないでしょうよ。
 嗚呼、でもそれより宝くじ当たらないかな。
 

 
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