第80話 2ヶ月と17日目 8月11日(火)

文字数 837文字

 一昨日もそうだが、今日も朝から何か神懸かっていた。
 朝から何かしなければ、と、派遣バイトの下見に行く為の回数券を、バラで数枚買うべくチケットショップに行ったのだが、いざ会計をしようと一年ぶりに着ることになったベストのポケットに手を突っ込むと、何とまったく身に覚えの無い金が入っていた。
 8000円も入っていたのだが、よくよく考えると一年前に本業の職場の飲み会で酔っ払い、自分の記憶の中でその金は失くしたことになっていたのだ。
 1年もの間失くした筈の8000円が、ベストのポケットに眠っていたのである。
 ジャケットの中にならまだしも、間違えてベストのポケットに突っ込んでいたとは我ながら思ってもいなかった。
 しかもこのクソ暑い日にベストなんてまず着ないが、半袖のワイシャツが少しよごれていてそれを隠す為に仕方なしに着たのだ。
 派遣と言えど下見でバイト先の上司にもしも姿を見られるようなことがあったらと、念の為にネクタイをしようとしたことが功を奏し、総てが棚ぼたの8000円に繋がっだのだ。
 そこでメトロの切符だけを買って下見は明日に回し、外食でステーキを食べてお土産を買った上に宝くじなども買った。
 また百貨店では「ジュウニブンベーカリー」とか言う、高級菓子パン屋で一個500円くらいする馬鹿高い菓子パンも買った。
 旨かったぁ。
 何年かぶりである。
 そんなこんなで一昨日返して貰ったのか貰ったのかは釈然としないが、友人からの1万円は貯金に回すことにした。
 給料日前日としてはあり得ない贅沢だ。
 しかしそれもこれも依存症の自主治療を始める前には先ずなかったことだ。
 何故なら棚ぼたの金は、総て競馬やパチンコに回っていたのだから。
 なので今日は無事にも感謝だが、依存症の自主治療に感謝だ。 
 そして明日の無事も確実だ。
 悪いことは言わない。
 競馬やパチンコは止めるべきた。
 逆に競馬やパチンコを止めれば、きっと良いことがある。
 絶対に。
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