第122話 3ヶ月と28日目 9月22日(火)

文字数 1,360文字

 シルバーウィーク最終日の今日であったが、
このコロナ禍だと4連休もあったことを終わるまで意識せずに過ごしてしまった。
 まぁ、東京都民に取っては旅行どころではないし、私のように普段と変わらないシルバーウィークを過ごした人も少なくないと思う。
 郷里に帰る人こそ幾らか増えただろうが、本格的な人の動きはまだ先のような気がする。
 感染者数も大して減らないしワクチンも未だ開発途上とあらば、無理からぬことであろう。
 新宿でも銀座でも外国人旅行客の姿を見掛けることも稀だ。
 外国人と言えば新宿などで見掛けた、中国人のあの圧倒的な人数と甲高い声も今は聴くことも稀である。
 街に中国人がいないと何となく寂しい。
 あの中国人の醸す喧騒は何時になったら戻るのだろうか。
 思えば私が生まれて初めて馬券を買ったのも、今は中国に返還された香港であった。
 1997年以前の未だ英国領だった時代だ。
 あの頃はまさか香港が今のようにデモで治安が悪化するなど思いも寄らず、毎週2回九龍サイドの沙田競馬場と香港サイドのハッピーバレイ競馬場に足繁く通ったものだ。
 マカオのカジノにも行った経験がある。
 香港には三年程仕事で駐在していたのだ。
 依存症真っ最中だったあの頃今考えれば私の賭け金のうち外れた分は、最終的にイギリス政府並びにポルトガル政府に行っていたのだが、今賭ければ中国共産党政府に行ってしまうことになる。
 香港で民主主義を圧迫する中国共産党政府に金を渡さなかったのだから、今でなくてまだ良かったのかも知れない。
 そうして依存症真っ最中の頃の私は、自分の賭け金が外れた後何処に行くかなど考えもしなかったのである。
 しかし今の私は違う。
 外れた賭け金の行先は最重要事項なのだ。
 実は一瞬パチンコを打ちたい衝動に駆られたのでスクラッチくじを削ってみたのだが、当選金が2000円以上になったので、もう10枚スクラッチくじを買うことにしたのである。
 そこでいつもの新宿の宝くじ売り場へ。
 そして窓口に並んでいる際に中国人の少なさを感じ香港競馬のことを考えていたのだか、今日自分の成長を感じたのは、順番が回って来た際にこのスクラッチくじを買って外れた際の賭け金の行先を考えたことだ。
 社会貢献度の低いJRAと比べると、宝くじ協会の社会貢献度は高い。
 震災や台風或いはコロナ禍で苦しむ人に自分の金が届くと思うと、宝くじを楽しみつつ社会貢献をしたと言う充足感も得られる。
 競馬依存症の人もそうでない人も、馬券を買う際に是非外れた後の金の行先を考えて戴きたいものだ。
 とか、今日は珍しくまともなことを言っているうちに競馬の開催時間もパチンコ屋の閉店時間も過ぎてしまった。
 してみると今日の競馬やパチンコでの無事は宝くじ協会に感謝、と、言うことになる。
 しかし明日の無事は連続で宝くじが当たることもないだろうから、冷静で成長した自分がいるので確実と行きたいところである。
 ところで今日新宿へ出掛ける際の往路では、最寄り駅不動屋の営業マンでビリケンさん似の男性には会えなかったものの、復路ではばったり会うことが出来たのだ。
 明日またスクラッチで当たりを引くかもなので、やはり明日はビリケンで確実と行こう。

 
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