第88話 2ヶ月と25日目 8月19日(水)

文字数 723文字

 油断禁物と言うかこれを反動と言うのだろうか、遂に禁を破った。
 と、言ってもパチンコの代わりにスクラッチくじを買ったのだが、今日これが宝くじではないと言うことを完全に把握した。
 何故なら「宝くじやっぱり外れた」、と、言う感覚ではなく、「負けた悔しい」、と、まるで競馬やパチンコをやった後の感覚に陥ったからである。 
 これはヤバい。
 明日以降はスクラッチは禁止だ。
 肉体労働の派遣バイトで脳が疲れ切っていて、近頃では自分の中のジキル(競馬やパチンコをさせない善玉)が完全にハイド(競馬やパチンコをさせる悪玉)を抑えんでいたルーティーンが崩れたのだ。
 反動なのかフラッシュバックなのかは分からないが、4000円を浪費した。
 何とも情けない。
 しかも負けて悔しいと思ったのだから、自分の中ではたとえ4000円のスクラッチくじと言えど、ギャンブルをしたのだ。
 自分に腹が立つ。
 まぁ、せめてもの救いはパチンコではなく、自分がスクラッチくじをチョイスしたこと。
 しかしスクラッチは宝くじではない。
 ギャンブルなのだ。
 やはり依存症の自主治療は一長一短にはいかない。
 昨日の「明日の無事は確実」が幻になった。
 言い方を替えれば嘘を吐いたことになる。
 それと疲労して脳がシャンとしていないときは、ギャンブルを抑制する機能が落ちるのかどうかを、カウンセラーの先生に訊いてみようと思う。
 それにしても千円札の数が少なく念の為と、普段財布に入れない万札を入れていたのが仇となった。
  とにかく明日は万札は持たない。
 今日は無事ではなかったが、明日は絶対に無事を確実にする。
 何としても自主治療だけは止めれないのだ。
 絶対に。
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