第121話 3ヶ月と27日目 9月21日(月)

文字数 1,558文字

 今日突然だが銀座に行きたくなってしまったのである。
 昨日に引き続き最寄り駅の駅前で、或るラッキーアイテムならぬラッキーマンに会ったので、西銀座で宝くじを買いたくなったのだ。
 実は最寄り駅近くの不動産屋さんに「ビリケンさん」そっくりの男性営業マンがいるのだが、なかなか店に居ない。
 やはり福々しい彼は人気があるのだろう。
 滅多に会えない彼なのだか、幸運にも今日お店の中に座っていたのてある。
 以前彼と会った日にバイトの時給が上がったし、部屋に蜘蛛出現+ビリケンさんに会うで、その日に宝くじで一万円当たったこともある。
 思わず柏手を打ちたくなる彼なのだ。
 しかし折角ビリケン効果を狙うも、西銀座に着いたらチャンスセンターが閉まっていたので、残念でならない。
 次回最寄り駅のビリケンさんにあった際は必ず買わなければ。
 昨日夜勤バイト明けだったので起きたのが遅く、現地に到着したのが夜7時くらいになってしまったのだから仕方がない。
 そうして宝くじは買えなかったが、収穫は大いにあった。
 以外なことなのだが銀座にあるオートクチュールやテーラーと言われる金持ち向けのオーダーの洋服の仕立て屋は、その多くが路面店ではなく空中階にあることが分かったのである。
 思うにルイヴィトンやエルメスなど銀座の目抜通りの路面にある有名ブランドショップは、超高額な家賃を払ってその店単体で利益が取れるとは考えていない筈である。
 ほぼ宣伝の為なのだ。
 翻って金持ちだけを相手にする仕立屋さんが、路面店を構えて無駄に高額な家賃を払って宣伝などする必要はない。
 それが証拠に子ども服まで仕立てている店が多いのだ。
 これは代々家族を取り込んできたのだろうことの証左であり、また今後もその家族を取り込んで行こうとする意志の表れでもあろう。
 そんな銀座の仕立屋さんはほぼ老舗で、恐らく金持ちの心理や行動など熟知している筈だ。
 つまり無駄な宣伝は無用なのである。
 例えばワンピース一着に五十万円出すとしよう、一般人ならシャネルやエルメスのロゴが付いていないと損だと思うところだが、金持ちなら質の良い仕立てのワンピースを選ぶ。
 何故なら金持ちは良質な物には金は出すが、無駄な金は出さないからである。
 つまり路面店で服を買う場合、回り回ってその服を売る為の路面店の高額な家賃を消費者が支払うことになり、当然生地などの素材や仕立ての質が路面店の家賃分は落ちることになる。
 自分が調査したオートクチュールの店もビルの七階にあり、全店調査したわけではないがテーラーやオートクチュールで路面店舗の場合、殆どの店が代々そこで商売をしていて土地を持っている大家のようだ。
 つまり大家なので路面に店を構えていようが当然家賃は支払わない。
 で、オートクチュールのお客の場合は、結果服を買う為に間接的に家賃を支払わない。
 金持ちは余計なことに金を払わないのだ。
 同じ五十万円でも恐らく既製品よりはオートクチュールの方が仕立ても丈夫で長持ち、また素材も良いし身体にフィットする筈である。
 と、取材の効果が大いにあった今日であるが、今日の競馬やパチンコの無事はオートクチュールに感心だっけ。
 否、違う。
 ビリケンさんに感謝だ。
 否、ではなく。
 ビリケンさんそっくりの男性に感謝だ。
 明日の無事もビリケンさん似の男性に会うことで確実だろう。
 しかしもし明日もビリケンさん似の男性に会うようなことがあれば、明日も銀座に行く。
 綺麗事など言っていられないのである。
 誰に何と言われようと、明日は絶対取材より宝くじだ。
 あ、その為には、ビリケンさん似の男性に絶対会わなければ。
 もし会えたら柏手を打って拝礼しようっと。
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