第117話 3ヶ月と23日目 9月17日(木)

文字数 1,558文字

 ツキがあるのかツキがないのか微妙なところだが、スクラッチくじで1600円当たった。
 昨日新しいスクラッチくじを買ったので、一週前に買ったスクラッチくじを今日削ってみることにしたのだ。
 そうすると宝くじポイントが現在100ポイントあるので、今度スクラッチくじを買うときは、都合300円の出費で1セット10枚を買えることになる。
 実際300円のマイナスと言えばマイナスなのだが、パチンコを回避する為の治療費と考えれば高くはない。 
 そこで思い立ったが吉日で、今日再度スクラッチくじを買うことにした。
 無論次回競馬やパチンコをしたくなったときに削るので、今日は買って保存するのみだ。
 悲しいかな銀座行きは次回別途収入があるときでないと行けないし、かと言って丸一日部屋に居るのもどうかと思ったのである。
 そんなこんなでスクラッチくじを買いに行く道中ずっと考えていたのが、競馬依存症治療を始めて得た知識を、他に応用出来ないのかと言うことだ。
 ことに射幸心と恐怖心の関係についてだ。
 例えば「競馬で勝ちたい」と言う射幸心があった時期は、「買えぱ絶対負けるし、破産して人生がボロボロになる」と言う恐怖で射幸心を抑え込むのだか、これが治療が進み時間の経過と共に「競馬を止めたい」と言う射幸心に変化するとする。
 そうなると恐怖心も、「もし馬券を買わずに、そのレースで予想した馬が馬券になれば損をする」と言う風に変化する。
 それだと競馬を止めたいと思っていても、馬券を買わないと損をすると言う恐怖心により、
馬券を買ってしまうことになる。
 所謂ギャンブルの負のループを彷徨うことになるのだ。
 そこから抜け出す為には競馬以外に興味を持てる何かを見附け、競馬に興味が失くなる必要がある。
 それと同じ理論で「プロの作家になりたい」と言う射幸心がある時期は、「プロにならなければ一生素人で、お客で、一読者のまま」と言う恐怖心があり、仮にその人がプロになり時間の経過と共に「休みが取りたい」と言う射幸心に変化したとすると、恐怖心も「このまま休みが貰えなければ倒れてしまうのでは」と言う風に変化する。
 結果「素人で、お客で、一読者だったときが一番幸せだった」、と、言うことになる。
 しかし小説はギャンブルではないし、一生好きなままで良い訳だし、また他に興味を持てることを探す必要もない。
 何より私が小説や本読むことに興味が失くなるとは思えない。
 で、あるとすれば、素人で、お客で、一読者である今が最も幸せなのではないか。
 好きな小説を読み、また書きたいと思う小説が書ける今が、或いは。
 物は考えようである。
 貧乏なことだけを除けば、プロなんかになれなくとも今が一番幸せなのだ。
 と、言うことで、今日の競馬やパチンコでの無事は、生きる為だけに小説を書く、素人で、お客で、一読者の私に感謝なのだ。
 明日の無事は・・・・。
 そう言えば部屋が汚い。
 よって明日の無事は部屋の掃除をするので確実と言うことにしよう。
 と、言っても今日の私の小説の進捗状況と同じく、少しずつかも知れないが。
 それでも掃除しないよりはいい。
 それに何より部屋に居れば金を使わない。
 貧乏な私に取ってそれ以上のことはないし、掃除をすればこの前みたいに、ひょっとして500円玉が出て来るかも知れない。
 何と言っても今の私に取っては、授賞出来るかどうか分からない新人賞の賞金より、カーペットの下に隠れている500円玉なのだ。
 とは言え明日こそ小説の進捗状況が好転することを祈っている私でもある。
 が、やはり、500円玉を探している時間の方か長い気がする。
 そして明日はそれこそが最も確実なことのような気がする。

 
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