第206話 6ヶ月と20日目 12月15日(火)

文字数 1,857文字

 高いも安いも無く、全く相場が動かず、全く予測が外れ、全く何も出来ずに終わった今日。
 忸怩たる思いで1日中何もする気が起こらなかった私だが、不幸中の幸いは実際にもまたシミュレーション上も一銭も損をしていない事。
 無論得もしていない、が。
 全く相場が動かなかったのは、偏にトランプ氏の「まさか」の行動が無かったせいである。
 と、言うか、私自身がトランプ氏の「まさか」を懸念し過ぎたせいだ。
 相場は既にバイデン氏の勝利確定を織り込んでいたのである。
 それに今日知ったのだが、ここに来てトランプ氏が自分自身への恩赦を考えているとか。
 大統領職を失うとなると色んな嫌疑が掛かる可能性があり、また事業での天文学的な金額の借財も大統領職に有ったからこそ元金返済を繰り延べ出来たらしく、今元金返済を求められると彼は破産に等しいらしい。
 そんなトランプ氏が自身への恩赦とは何とも嗤える皮肉な話だが、良く考えるとそれ即ち大統領選での事実上の敗北宣言ではないか。
 また熱狂的な支持層を基盤に4年後の大統領選挙への出馬も考えていて、表向きは訴訟を続けて行くらしいが、それも今更引っ込みがつかないからだろう。
 トランプ氏は終わったのだ。
 私は完全に読み違えたのである。
 個別銘柄シミュレーションの方も大和冷機が1日に73円安の1126円と、買値こそ上回っているもののこれなら昨日売りだったか、と、後悔ばかりの株価予測。
 とは言え、クヨクヨなんかしていられない。
 相場は食うか食われるかだ。
 前を向かなければヤラれるだけである。
 なので明日は元より今週一杯はシミュレーションではなく、実際に日経ダブルインバースが520円を切れば買いに出る。
 今晩11時50分現在のニューヨークダウは30000$少し手前の125$高、$¥レートは103円代と、明日の日経平均の上げを示唆している。
 今晩は早めに寝て明日に備える。
 と、株式予測の方は全然だった今日、小説の方も書くのは全然だ。
 然し悪い事ばかりではない。
 小説も読むのは絶好調だし、競馬依存症治療も順調に今日は一切賭事はしていない。
 やはり推し作者さんの「幻想の坂」は良い。
 一気に読めた。
 で、今日出掛けた時にも良い事が有った。
 地元の駅前に場末のキャバクラが有るのだが、そこは暇な時にキャバ嬢がティッシュを配っていて、親爺の私が前を通ると当然の如くティッシュをくれる。
 無論今迄に行った事が無くティッシュを無料で貰い得しているのだが、今日スーパーに行く往路と復路で夫々違うキャバ嬢が配っていて、往復で無料ティッシュを2つ貰えたのだ。
 このコロナ禍で営業自粛中だと言うのに、お客なんか居るのだろうか?
 それに私は店にも行かないのに、ティッシュを貰っても良いのだろうか、とも思った。
 この寒い中肌も露わなドレスの上にダウンを羽織っただけで、さぞ寒かろう、さぞ辛かろう、と、私はキャバクラには行かないが、それでもせめてティッシュを貰う事だけは固辞しようと思ったのである。
 往路ではティッシュを貰ったが、復路では違うキャバ嬢がティッシュを配っていて、固辞すべくスーパーからの復路キャバ嬢の前を通ったのだが、馬鹿らしくて固辞するのを辞めた。
 何故ならそれまで買えていた私の同情を、そのキャバ嬢が買えなくてしまったからである。
 やはりドレスの上に羽織るダウンは、絶対に安物の方が良い。
 今日復路でのキャバ嬢は、何とフランス製の「MONCLER」のダウンを着ていたのだ。
 それ客に買わせた訳?
 そんなに儲かってんの?
 と、そして私は悟った。
 幾ら小池都知事や菅総理が自粛してコロに打ち勝とうと呼び掛けても、コロナに対してはいざ知らずおっさんは色仕掛けに勝てないのだ。
 つまりティッシュを配る意味はある。
 おっさんはキャバクラに行くのだから。
 今日程貧乏で良かったと思えた日はない。
 ん?
 て事は、金が有ったらキャバクラに行くの、否、そんな事を詮索するのは止めて戴きたい。
 とか、言っている間に、今日も競馬の開催時間もパチンコ屋の閉店時間も過ぎた。
 やはり今日の競馬やパチンコでの無事は、キャバ嬢にティッシュを2つも貰えたお蔭か。
 否、株価予測が外れはしたが、1日中部屋に居たからか。
 で、明日の競馬やパチンコでの無事は、株価予測が的中する事で確実としたい。
 それと仮に株価予測が的中しても、決してキャバクラには行かない事をここに宣言したい。

 追伸・日向君元気が良過ぎて、少し態度がデ
    カく見えます。


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