第139話 4ヶ月と14日目 10月9日(金)

文字数 1,337文字

 何と言っても今日のモチベーションは、余すところ明日と明後日の二日間で超節約生活に別れを告げれると言うことだ。
 また台風14号が近付いていて明日は暴風雨になるとのこと、そう言う訳で僅かな残金で明日明後日の食料を買い込みに行った。
 その往路並びに復路とも雨に降られたのだが、この節約生活のお蔭で僅かながら投資している株式を売らずに済んだことを思い出し、節約もやってみるものだと感慨に耽っていたのだが、ふと或ることに気付き嫌な気分になった。
 この台風14号で動く株が有ろうことだ。
 前回九州に台風が直撃したときは、九州のインフラ関連の会社の株価が下がった。
 JR九州や九州電力と言う銘柄を始め、何銘柄かの九州関連の株価が下がったのである。
 自身も若かりし頃は空売りで稼いだ時期もあったのだが、儲かっても後味が悪いので最近は一切止めている。
 罹災で不幸に遭った人も居るのに、それを金儲けのネタにするのは不謹慎極まりないし、正義に反する行為と考えるからだ。
 逆に3・11以後応援の為に関東電力は買ったが、空売りは絶対しないようにしている。
 その代わりにどうか災害が逸れるようにと、祈るようにはしている。
 しかしノーベル賞は別だ。
 ノーベル賞受賞のご祝儀相場に乗れれば、自身の運気も上がりそうな気がするからである。
 毎年9月から10月に掛けてはノーベル賞銘柄を物色する。
 今年は対コロナウイルスのペプチドワクチン開発でオンコセラピーが、またips細胞技術開発のリプロセルが注目されていた。
 しかし今年はどうも違う気がしてどちらも手を出さなかった。
 正解であった。
 今年の日本人受賞は無かったのだ。
 先年はオプジーボ開発で本庶さんの小野薬品を、リチウムイオン電池開発で旭化成をノーベル賞発表までに仕込んで発表後に売却し、若干の利益は得たのであるが、今年は日本人の受賞が無いような気がしたのだ。
 そこで今年のノーベル賞について勘が当たったことと同様、台風14号の影響が大したこと
にならないようにと祈念する。
 と、割とまともなことを考えている間に競馬の開催時間もパチンコ屋の閉店時間も過ぎた。
 なので今日の競馬やパチンコでの無事は、節約とノーベル賞に感謝だろう。
 そして明日の競馬やパチンコでの無事は、台風14号の被害が出ないことで確実としたい。
 儲けがなくとも正義は絶対に勝つのだ。
 しかし空売りをしている人達に取って、私の言っていることは正しくないのかも知れない。
 或いは唯の負け犬の遠吠えかも知れない。
 しかし何と言われてもいい。
 そんな不正義を働く者達に褒めて貰いたくはないのだ。
 何なら言ってくれ、「そんな餓鬼みてえな綺麗事言ってるから、お前は何時まで経っても貧乏なんだよ」、と。
 そして私は大きい声で答えてやるのだ。
『そうだよ。貧乏だよ。だから何だよ!』、と言いたいところをグッと堪えて、「すいません。反論出来ません」、と。
 そうなのだ。
 貧乏は仕方ないのだ。
 何かを得る為には何かを諦めなければならないのである。
 私の場合は貧乏でなくなることを諦めるしかないのだ。
 それも正義が勝つ為なのだから。

 

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