第101話 3ヶ月と7日目 9月1日(火)

文字数 1,424文字

 今日はテレビの調子が悪く、1日中DVDを見るか或いは余計な昼寝をするか。
 何とも自分は最低な奴で最低な1日だった。
 しかしその最低さが幸いして何故か競馬やパチンコ、おまけにそれ等をやりたいと言う欲望を抑える為の宝くじのことさえ、この日誌を書く迄の間忘れていた。
 嗚呼、今日の無事は何と情けないのだ。
 しかし最低なりにも発見はあった。
 何やらTBSの夜のドラマで多部未華子主演の「私の家政婦ナギサさん」、と、いうのが最終回らしいので最終回だけ、昔の携帯電話端末のテレビで観たのだ。
 私はこのドラマを観る前に「クリミナル・マインド」と「ブラックリスト」を観ていたのだが、この米国ドラマをご存じの人もそうでない人もこれ等がFBI物だと言えば、TBSのドラマとはどれだけのギャップがあるかお分かり戴けると思う。
 その落差たるや正に天と地の差がある。
 兎にも角にも今の日本のドラマ事情を知る上では非常に参考になった。
 良く良く考えれば今の日本の民放各局のドラマと言えば、この家政婦のドラマを始め公に国家権力と連携し、しかも拳銃を携帯する国家公務員が登場するドラマがない。
 池井戸潤のドラマで金融庁や財務省などの組織が登場する程度だ。
 無論日本のそうした省庁の役人は拳銃など携帯しないし、また拳銃を携帯する刑事物のドラマはあっても日本の警察などは警察権を持つに過ぎず、国家権力と連携する所迄はいかない。
 内閣官房や自衛隊を扱ったものもたまに映画では登場するが、家庭で観るドラマには絶対に登場しない。
 それもその筈で戦前我が国に存在した陸軍省や海軍省、或いは内務省も特別高等警察も存在しないからだ。
 我が国にはFBIを始めCIAもNSAも国土安全保障省も、無論ホワイトハウスも存在しない。
 それが日本が米国の51番目の州と言われる所以であり、今だに国家なのか植民地なのか分からないのが我が国の現状なのだが、それだからこそ、あそこ迄毒にも薬にもならないお気楽な「私の家政婦ナギサさん」が製作されるのだろうか。
 否、そうではないと思う。
 そこ迄日本人は阿保ではない筈だ。
 日本人は阿保ではなく阿保になりたいのだ。
 こんな国家とはほど遠い日本と言う名の島に住む島民達は、どんなに足掻いてもアメリカ人にはなれないし、否、それでなくとも欧米では差別される黄色人種なのである。
 阿保になりたくなるのも頷ける。
 と、そこ迄考えて或ることに思い至った。
 そうすると「私の家政婦ナギサさん」の原作者は天才だと言うことになる。
 阿保になりたい日本島民に、阿保になれる、阿保な作品を提供した超天才作家。
 そして競馬依存症に苦しみ、どれだけ書いても認められない作品を書いている私こそが、阿保なのだ。 
 と、シニカルに自暴自棄に陥った芸術家を気取る私は、決定的に「私の家政婦ナギサさん」の原作者に劣っている或る点に気付いた。
 収入の差だ。
 今頃原作者先生はザギンでシースー(銀座で寿司)でも摘まんでいることだろう。
 それに引き換え私は今日も一食数百円の冷凍食品である。
 悲しいかな今日の無事は「私の家政婦ナギサさん」と超天才の原作者先生に感謝だ。
 それと明日こそザギンでシースー。
 それでこそ明日の無事は確実である。
 嗚呼、そうなりたい。
 しかし私には「私の家政婦ナギサさん」を書けるだけの才能がない。
 何とも悲しい。
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