第132話 4ヶ月と7日目 10月2日(金)

文字数 1,644文字

 部屋に居た今日は、昼から夕方に掛けて地上波放送の報道バラエティを見ていた。
 トランプ大統領がコロナウイルスに感染し日経平均株価が下落した今日、次期アメリカ大統領選についてでもなく、ニューヨークダウ下落についてでもなく、また昨日の東京株式市場のシステム不具合による休場についてでもなく、話題の中心は石原さとみの結婚話だった。
 日本と言う国は色んな意味で平和だ。
 良い意味では世界の中でも犯罪が少なく、飢餓などで国民が死ぬことがほぼないこと。
 他方平和過ぎてボケてしまっているのではと思うくらい、日本人は警戒心や危機感が欠如さしている。
 民放各局に於いて石原さとみの結婚話が他のどんなニュースよりも優先して報道されるのが、そんな日本の顕著な例の一つと言えよう。
 国営放送のニュースだけはさすがに石原さとみの結婚話について触れることはなかったが、民放各局は例外なく石原さとみの結婚話を最もホットな話題として取り上げていた。
 無論民放各局でも深夜枠のWBS(ワールドビジネスサテライト)などでは石原さとみの結婚話を扱わなかったが、昼から夕方に掛けて主婦層が中心となるバラエティ番組では石原さとみの結婚話以外は何も論じられなかった。
 オレオレ詐欺が未だに終息を見ないのも、そんな日本人の警戒心や危機感の欠如によるものなのだろう。
 結局石原さとみのバラエティ番組を長時間見ることに堪えられず、テレビの電源を切ったのだか、その際に、ふと、思い出した。
 先日新しい小説の下調べで新大久保韓流街へ行ったときのことだが、書籍や映画のDVDを扱う店に行ったときのこと、二人組の女性の会話が耳に入って来た。

「こないだニュースでやってたんだけど、韓国の大統領って、ほら、習(しゅう)何とかって人いんじゃん」
「あぁ、でもあんた良く知ってるね。以外と頭いいじゃん。私韓国の大統領が習(しゅう)って言うの知らなかった。大統領とかってトランプしか知らなかったよぉ」

 私はその場で嘆息を吐くことさえ出来ず、余りの惨劇にその場を立ち去ることしか出来なかったのだが、恐ろしいことにこれは漫才でもコントでもなく厳然とした事実なのである。
 やはり私は言うべきだったのだろうか。
「韓国の大統領は文在寅(ムン・ジェイン)で習近平(シュウキンペイ)と言うのは、中国の大統領ではなく共産党の総書記です」、と。
 何も言わずに立ち去ったのはどうだったのだろうか、と、一瞬は自戒した。
 しかし今は何も言わなくて良かったと思っている。
 何故なら彼女達に取って韓国の大統領が誰であろうと、或いは中国共産党の総書記が誰であろうと、大した意味はないのだから。
 韓流ドラマのイケメン俳優や韓流アイドルの名前だけ知っていれば、それで事足りるのだ。
 畢竟私が事実を教えたところで、そんなことは大きなお世話にしか過ぎないのである。
 石原さとみの結婚話が最もホットな話題である番組の視聴者と同様。
 とは言えそれ等のことを裏返せば、それだけ日本が平和だと言うことである。
 とか、割とまともなことを考えていたら、今日の競馬の開催時間もパチンコ屋の閉店時間も過ぎた。
 やはり今日の競馬やパチンコでの無事は、日本が平和であることに感謝すべきであろう。
 しかし明日の無事は、私が長きに渡る貧乏生活で得た知識をフルに活かし、今日から三日間超節生活をすることで確実だ。
 急な出費があったのである。
 金を工面することも考えたが食べる米はあるので、食費を明日から三日間500円とスーパーの買い物ポイント500円分で遣り繰りすることにしたのである。
 節約レシピ等明日から披露することにする。
 それと節約を競馬やパチンコ依存症の治療の一環に加えたいとも考えている。
 カウンセラーにも相談してみよう。
 しかし良く良く考えてみると、私の自主治療が出来るのも日本が平和だからこそだ。
 コロナ過ではあるが日本の平和に感謝だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み