第169話 5ヶ月と14日目 11月8日(日)

文字数 1,311文字

 肉体労働の派遣バイトに入っている今日。
 首から上は使わないので、仕事中脳内で他の事を考えるのは自由だ。
 小説や書評の構想を細部迄練る。
 そんなことが出来るのも肉体労働のお蔭だ。
 これが事務系の仕事の場合は時間内或る程度脳は使うので、そうはいかない。
 やはり肉体労働は良い。
 と、安心しきっていたのだが、今日の派遣先は別だ。
 現場の責任者が最悪だった。
 やたら金切り声を上げて怒るので、いつもの現場のようにはいかなかったのだ。
 何かの精神疾患を抱えているのだろうか。
 何れにしても今日の現場に行く事は金輪際無いから、自分には関係の無い事である。
 と、言うのも、派遣の最大のメリットは嫌なら「二度と行きません」、で、済む。
 その分何の権限も無いが、それが派遣の特権である。
 まあ、次の良い派遣バイト先を探しつつ、暫く小説を書くことにする。
 話は変わるが帰りのメトロの中での事た。
 推し作者のチャットノベルでも言ったが、隣
席の恐らく帰国子女なのであろう女性の声が耳に入った。
 何と、「ストゥマックエイク」と言った後、
「ドゥラッグスゥトア行く」と言ったのだ。
 再度チラ見したのだが、顔はどう見てもガチガチのベタな日本人にしか見えない。
 それに所々単語だけはそんな風だが、全体的な日本語は訛っていない。
 仮に帰国子女であったとしてもここは日本だし日本語話せるんだから、「お腹痛いから薬局行きたい」、で、良くないかぁ。
 つい英語が出てしまうとか、習慣でとか、そう言うんじゃなくて、何かザァとらしいのだ。
 しかしよくよく考えると、たとえばオレンジジュースをドイツ語で「Orangensaft」と言ったりとか、フランス語で「du jusd'orange」とか言われても腹が立たないのは何故なんだろう。
 やはり占領されたアメリカの言葉だから、英語を聴くと敗戦国民の劣等感が芽生えるのか。
 しかしそれならばフランスも連合国だ。
 なら、単に欧州の言葉だと許せるのか。
 否、英語は欧州である英国の言葉でもある。
 しかしこう考えると自ずと答えは出てくる。
 そもそも日本人は英語を英国の言葉として認識しているのか?、と。
 そうではなく英語は英国でなく、米国の言語として認識している筈だ。
 つまり英語に腹が立つのは、米国の言葉に劣等感を感じているからなのだ。
 もっと言うと英語ではなく、米語に対しての劣等感だ。
 やっと答えが出た。
 以後英語を米語とすることにする。 
 米語として考えると総ての辻褄が合う。
 そうなのである。 
 米語に劣等感を感じているのだ。 
 それが正解だと思う。
 と、やっと、尤もな答えを見付けた所で、今日も競馬の開催時間も、パチンコ屋の閉店時間も過ぎた。
 今日の競馬やパチンコでの無事はやはり派遣バイトのお蔭だが、明日の競馬やパチンコでの無事は英語と米語の違いを研究することで確実としたい。
 しかし、とは言っても、米国に滞在経験の有る推し作者は取っても良い人だ。
 やはり、人によるのかもだ。
 鼻にかけたりされると腹が立つ。
 それは英語でもフランス語でも一緒だ。
 それこそそれが最良の答えのように思う。

 追伸・餌を求める日向君。
 
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