魔王達の結論
文字数 7,652文字
「胸に手を当てれば解ることだろうに?」
ハイの目の前で、両親の首が一気に掻き消える。母の近くにいた実の父は喉から無様な悲鳴を上げ、小便を漏らし地面に突っ伏していた。死霊に対抗する術は持ち合わせているだろうに、抵抗することなくやはり頭部を食われてしまった。
数多の断末魔が耳に届くが、興味を持たずハイは心穏やかにその場を悠然と歩き回る。眼球がずるりと抜け落ちる、髪が抜ける、腕がもげる、腹に穴が開く。こうなってしまっては聖職者だろうがなんであろうが、関係ない。ただの、肉片でしかない。
心底、愉快だった。充血した瞳で、引き攣った狂気の雄たけびを繰り返す。血の匂いが立ち込めていようが、空気自体は清浄化された気がした。
けれども。
不意に声を止め、ある方向へと歩きながら静かに拍手をした。次第に大きく手を叩き、辺りに小気味良い音が響き渡る。
「素晴らしいな、君。立派だ」
一人の人間に向かって、言葉を投げかける。驚くべきことに、この場でたった一人、生存者が存在した。喰われながら、もがき苦しみながら死んでいった人間達ばかりかと思えば、正常に脳が働いた聖職者が存在したのだ。
彼女は懸命に防御壁を張り巡らせ、迫り来る亡者達から身を護っている。宴の酒を飲まず、浮かれていた者達と離れ一人で居た故に、すぐさま状況把握が出来たようだった。
明るい金髪、全てを見透かす様な碧い瞳、髪を後ろで一つに束ねた、質素な衣服の少女が立っている。歳はハイと同じくらいだろうが、化粧もせずにいるため、子供に見えなくもない。足元に転がっていた高等な神官の銀の杖を右手に、首から提げていた十字架を左手で掲げ、死に物狂いで亡者を撃退していた。彼女自身の魔力はそう高くはないだろう、だが、手にしている装備品が優れている為に亡者と対等に戦っているようだ。
しかし相当の疲労が身体中を覆い尽くしている、現在は辛うじて立っているのだろう。
近寄ってきたハイに気づいた彼女は、力なく微笑むと全神経を杖へ集中させた。それから意を決した様に、ハイ目掛けて杖を突き出す。
「何の真似だ」
解ってはいたが、ハイは念の為訊ねた。無謀にも元凶である自分と一戦交えようというのだろう、ただハイはこんな娘にやられるつもりはなかったので、反撃の態勢はとらなかった。彼女の意思が正気か確認する為に口を開いた、全くの無駄足であるのだと教えるために。瞳を硬く閉じていれば、一瞬で死霊に喰われるだろう。何故自ら苦行を選んだのか。
「勝てないのは百も承知。ですが、残った神官としてこうするのが義務だと思います。例え、ハイ様が巨大な魔力の持ち主であると痛感していたとしても」
「尊敬に値する程に立派だな。成程、“神官の義務”……そうか、腐った神官しか存在しないと思っていたよ。まっとうな君には失礼だったね」
彼女は威勢よく腹から声を出して叫び、渾身の力で杖を振り下ろした。周囲の亡者が一瞬で掻き消えていったが、ハイは酷薄な笑みを浮かべて佇んでいる。全神経を集中させ希望に賭けた彼女の一撃は、確かに亡者らには抜群の効果があった。けれども、対峙している相手には全く効果がない。
長い黒髪を風に遊ばせながら、ハイは敬意を持って右手を前に突き出した。
「さようなら、名もなき神官の娘。最期に良い言葉を有難う」
全く効果がなかったと判り、少女は唇を強く噛みしめ悔しさから涙を流した。そうして、切なそうに顔を歪める。一瞬だけ低く呻き、力なくずるりと倒れこむ。
ハイの後方から新たな亡者が疾風の様に現れ、無常にも少女に襲い掛かった。無数の黒い塊が、懸命に張られた防御壁を幾度も打ち付け、彼女に負荷をかけていく。手にしていた最後の拠り所である十字架をハイ目掛けて投げつけたが、苦肉の策は意味をなさず。今のハイは確かに闇の属性だが、神官である彼にはそんなもの効果がない。穏やかに微笑むハイを脳裏に焼き付けた彼女の絶叫が、周囲に響き渡った。
徹底的に防御壁は破壊され、無数の亡者がわらわらと彼女を取り囲むと、汚れのない魂を喰らう。清冽な聖職者の魂は、亡者にとって麻薬のような馳走である。しかも、滅多にお目にかかれない処女の魂である。
死に際に彼女は唇を動かしたのだが、気の毒な事にハイには届かなかった。
彼女が遺した言霊は、「ハイ様、お慕いしていたのです」。
猜疑心でしか人間を見ることしか出来なかったハイは、彼女の澄んだ心を汲み取ることが出来なかった。彼女の両親は確かに堕落していたかもしれない、けれどもその娘までが堕落しているとは限らない。彼女は両親を反面教師とし、誠意から弱き者を助け共にし、常に感謝の心を忘れず神に祈りを捧げていた。ハイを数年前に見かけ、その綺麗な容姿と優しそうな瞳に一瞬にして心を奪われた。
昨今の神官が堕落していることは、彼女とて知っていた、故にハイに期待をしたのだ。彼ならば、正すことが出来るのではないか、人々を導けるのではないか、と。彼にはそう思わせる風貌があった、出来ればその近くで今後も神に身を捧げたいと願った。ハイへの想いを、その胸に秘めたまま。
つつましい彼女は、その場で死に絶えた。
彼女の思った通り、確かにハイは人々を導くこととなる。それは、破滅の道であったが。
屍が散乱したその場をつまらなそうに一瞥すると、ハイは踵を返す。用意されていた祝いの食事を館で食べた、譲り受けた聖衣を羽織ってみた、受け継がれてきた銀の杖を手にしてみた。
嗤う、ただ、嗤う。一人きりの館で、ハイは嗤った。
外は、夥しい死体の山だった。
十四歳の誕生日、ハイはこのようにして暗黒神官に即位した。
暗黒面が強かったが、聖なる力も多少は兼ね備えていたため、特に弱点が見当たらず、悪魔すらその力量に魅了されて数名が集ってきた。
幾度か人間が攻めてきたのだが、数年経過した後のことであり、その時はすでにハイの元に有能な悪魔達が揃っていた為、人間達は手も足も出すことが出来ず惨敗。こうして魔王ハイという呼び名が、ハンニバルへと流れ始める。
それでも、彼の生活はあまりにも退屈だった。夢も希望も、何もない。
ある日、ハイは館の一角で封印された異空間への道を発見した。両親からその存在を教えられることがなかった、作為的に閉鎖された場所。もしかすると、成人の儀後、ハイに教えるつもりだったのかもしれない。しかし、今となっては不明だ。
好奇心ではなく、単調になっていた生活に何か変化を、と思いその封印を解除した。別に死を怖がることはなかった、むしろ死を望んでいたハイにとって何も恐怖はなく、真っ暗なその道を進む。
辿り着いた先でハイの瞳に飛び込んできた風景は、見るからに不気味な城だった。目の前には薄い青白い膜のようなものが張っている。それに手を伸ばすと、奇妙な感覚に襲われた。肌に纏わりつく生暖かいへどろのような、決して気分の良いものではない感覚に眉を顰める。けれどもその膜に身体を投じ、怯む事無く突き抜けた。
この場所が何処かは解らなかったが、その威圧感に包まれた城が、この場所の支配者の住処でありハイと同等、もしくはそれ以上の力の持ち主であることは理解した。
城の正面の扉を開き、中へと進入する。
階段までの通路の左右に、数人の人間、いや、魔族だろうか、微動出せずにそこに佇んでいたが、その前をハイは臆することなく通り抜けた。
関心を示す者はおらず、態勢を崩すことなく、ハイを空気としているように見て見ぬフリをする。
階段を上って達したのは大きな広間であり、そこにこの城の所有者が居た。
「客人」
遠い場所で、豪華な椅子に深く腰掛けていた人物が、一言そう呟いた。静か過ぎるその場所は、声が良く通る。椅子に座っている男は、自分と同じ漆黒の瞳と長髪だったが、頭部から二本の角が生えている。
雰囲気的に何か似たものを感じたハイは、値踏みするようにその大広間を歩き回りながら彼を鑑賞した。真紅の簡易な衣に身を包んでいるが、整った顔立ちと品格の漂う仕草に、久方ぶりに興味が沸く。彼が一目瞭然で人間ではないことも、ハイの感情刺激に手伝ったのだろう。
「茶菓子でも、どうぞ」
男が椅子を立ち、ハイから向かって右側の一角を指した。そこには小さなテーブルがあり、上に何か乗っている。テーブルへと移動した男は、ティーポットから液体をカップに流し入れると、まだ突っ立っているハイを手招きした。
折角なので、と疑いもせずハイも同席する為近寄る。これで毒薬を盛られたならば難なく死ねることだし、どう転んでもよかった。
「私は、リュウ」
近寄ってきたハイにカップを差し出したリュウは、にこやかに微笑んでいるものの掴みどころがない。着席はしなかったが丁重に受け取り、躊躇することなく口を開いた。
「私はハイ、惑星ハンニバルの神官」
聴くなり、瞳を丸くして興味深そうにリュウは小さく笑う。
「神官? 暗黒神官の間違いだろ? 久しぶりに可笑しな冗談を聴いたよ。そうか、惑星ハンニバルの魔王かな。私は惑星ネロの魔王なんだ。多分同質で同位」
瞳を細めて腕を組み、壁にもたれたハイは居心地良さそうに笑みを浮かべた。まさかここが惑星ネロとは思いもしなかったが、当面退屈しのぎは出来そうだった。ようやく、生きる為の糧を見つけた気がした。それがいつまで持つのか解らないが。受け取ったカップの中身を口に含むと、やたらと甘くて眉を顰める。
リュウが、申し訳なさそうに肩を竦めた。
「あぁ、ごめん。私は甘党なんだ」
「これはなんだ?」
「すり潰した苺にお湯と砂糖をたっぷり混ぜ込んで、さらに蜂蜜を多目に投入。あ、勿論原型をとどめた苺もあるよ、つまみにどうだい?」
「…………」
屈託のない笑顔でカゴに盛り沢山の苺を勧めてきたリュウに、引きつった笑顔を向けたハイは丁重に断った。
不服だとして唇を尖らせたものの、やはり彼も退屈をしていたのだろう。話し相手が出来て嬉しかったのか、リュウは自身のことを語り出す。
「人間っていう種族が大嫌いでね、城を攻め落とした。ここは主力国だったカエサル城。勇者の称号を得たナチスという若者と、その妻のマリーという姫がいたけれど、思ったより弱くて全く歯ごたえがなかったよ」
淡々と語るリュウを凝視していたハイは、虚偽がないか注意深く聞いていたが、不可解な点はなかった。
「人間って身勝手だなー。勇者が殺されては不甲斐無いって、彼の墓を作るどころか弔いもなくてね。流石の私も、勇者の彼に同情したよ」
「人間は堕落すると、底まで落ちる。心が病んでいるのだよ」
「ハイとて人間だろう? 君も病んでいるのかい?」
「私は人間だが、人間ではない。人間という種族を放棄した、ハイという名の生物だ」
「へーえ、面白いな。でも、謎が解けたよ。私は人間を酷く軽蔑しており、正直関わるのはごめんだけれども、ハイは平気だ。それは君が人間ではなく、ハイだからなのだね」
けたけたと笑うリュウに、ハイはどことなく違和感を覚えたが口には出さなかった。
こうして出逢った二人の魔王は、特に張り合うこともなく意気投合し、他愛のない話を楽しんだ。互いに退屈していたのだろう、偶然見つけた新たな玩具によって、二人は行動力に火を灯す。
未練などない惑星ネロのカエサル城を後にして、ハイが通ってきた異空間を使用し、リュウは興味本位で惑星ハンニバルへと移住した。その際、あの微動出せずにいた従者達を全員連れて来た。館の部屋は腐るほど余っていた為、ハイは幾つかの部屋を彼に貸した。
こうして、リュウは勝手気ままに暮らし始めたのである。
惑星ネロの魔王であるリュウが移住してきた、という噂は流れなかった。しかし、ネロが壊滅状態である、という真実は流れ始める。人間達の中には絶望し、自ら命を絶つ者も増えてきた。
特に人間を殺すこともなく、日々欠伸をしながら昼寝をするリュウを尻目に、ハイは退屈しのぎにと、残り少ない聖職者達を抹消すべく、集ってきた魔族や魔物に主要国を襲わせ始めた。人間達も抵抗していたが、ハイ率いる邪悪な軍と対等に戦える力量は持ち合わせておらず、統括された魔王軍の前にはなす術がない。
故にハイは、いとも簡単に三つの主要国を攻め落とした。残りは二つだが、うち片方は時間の問題だった。砂浜に作った砂の城を波が崩して持ち帰るように、容易く攻め滅ぼせてしまう。各国の王子らが集結し、悪あがきをしていることも知っていた。彼らが束になろうとも敵ではない事など、ハイは承知の上だった。けれども、今後の楽しみを失くさない為に、苦戦しているわけではなかったが放置した。断じて、慈悲ではない。
また、風の噂で耳にした“伝説の勇者”の存在も確かめたかった。そのような存在など信じていなかったが、ネロの勇者は、魔王リュウの元へ現れたという。ならば自分の前にも現れても良いはずだ、と思ったのだ。
神官だったハイとて、勇者の話は聞かされていた。子供だましの御伽噺であり、神と同等の偶像に過ぎないと鼻でせせら笑っていたが。
もし、本当に存在するのならば。神官大量虐殺の際に出現しても良かっただろう。神の慈悲も、勇者の加護もないまま死に絶えた人々は、運が悪かっただけなのだろうか。当然の報いだったのか。
「勇者、ねぇ?」
ハイには、新たな愉しみが出来た。人間達に最大の屈辱と絶望を味わってもらう為、勇者を見つけ出すことにしたのである。ハイは残った二国を極稀に襲わせ、しかし壊滅させることなく様子を見た。人間である彼らに、希望の象徴である勇者を捜してもらう算段である。手間が省けるし、何より捜す過程を観察する事は楽しく思えた。
もし、本当に勇者に出逢えたのであれば。彼らは十中八九喜びに打ち震えるだろう、その笑顔からの転落を見たい衝動に駆られたのだ。
勇者が見つかったら、公開処刑をするつもりだった。勇者の力など信じていないし、まして怯えてもいないが、芽が伸びる前に潰してしまえと考えていた。負ける気はないが、勇者が成長するまでの時間が、勿体ない。それ故に。
「でも、勇者を葬り去れば、本当に私はすることがなくなってしまう」
妙な葛藤を感じたが、ハイは深く考えない事を決めた。見つかった時の状況で、殺すかまだ泳がすかを決めれば良いと。人間に煩わされることこそ、愚かな事だと。
勇者は出て来ない、彼らが諦めるのが先なのか、それとも何も知らずにぬけぬけとした勇者が単独でここに乗り込んで来るのか。暇な時間を弄ぶ事に疲れ、二人の魔王は別の星への移住計画を思いついた。
ネロとハンニバルが通じていたのだから、他の惑星にも行ける気がする、と二人は思っていた。思惑通り、二人の力量からなのか偶然にも異界への道を難なく手に入れてしまった。見つけたのは、チュザーレ、そしてクレオへの通路であり、二人は他の惑星の魔王達に遭遇することとなる。
「魔王、という存在は、何処にでもいるものなんだな。いやぁ、実に愉快愉快」
そして現在、この場に集結した魔王は、四人。正確には、三人と一体となる。
惑星ネロのリュウ、惑星ハンニバルのハイ、惑星チュザーレのミラボー、そして惑星クレオのアレク。
人型のリュウ、ハイ、アレクに反し、ミラボーだけは異形。イボ蛙が巨大化したような容貌をしており、その皮膚は腐敗した緑色、毒々しく光る真紅の瞳。背丈は人間の少年程だが、横が広く肥満なのかそういう種族なのか、幅をやたら取る。頭部の触角らしきものが、時折何かを探るように動くのが不気味である。しかし、身にまとう衣装は最高級の染物で作られた美しいもので、光り輝く大きな宝石をこれでもかと身につけている。
アレクは非常に美男子で、正真正銘魔族の長であり正当な魔王だ。後に魔王と呼ばれることになったハイとは、経緯が違う。
魔王を名乗るには歳が若いのかもしれないが、それでも残った王族はアレク一人であり、従兄弟がいたのだが消息不明となっている。血筋から成り行きで即位した魔王かと思えば、類まれなる魔力も兼ね備えており、無口で虚無の瞳、静かに佇む沈黙の魔王。威厳と風格は兼ね備えていた。
「美しいだろう、可愛いのだ、この娘」
描かせたアサギの肖像画を手にし熱弁を止めないハイに、いい加減うんざりしてきたリュウは苺を食べていた手を休めると、話をする為に向き直る。聞き流すことが苦痛になったようだ。アレクは窓から外を見下ろしているばかりで、ミラボーは自身の洋服に縫い付けてある煌びやかな宝石を、うっとりと見つめていた。
つまるところ、誰も話を聞いていない。
けれども、勇者に興味は湧かずとも、勇者に興味を持った魔王には興味をそそられる。リュウがようやく身を乗り出した。
「で、名前はなんだぐ?」
「……知らん、寧ろ知りたい」
「今、何処にいるぐ?」
「知らん、寧ろ知りたい」
「ハイは以前、勇者を見つけたら公開処刑とかなんとか言ってたぐ。するんだぐーか?」
「しない、寧ろ逢いたい」
含み笑いで会話していたが、堪えきれなくなった為腹を抱えてリュウは弾かれたように笑い狂った。
ハイは青筋を立てて、悔しさから眉を顰める。拳を握り締め身体を小刻みに震わし、歯軋りして怒鳴りたいのを辛うじて堪えた。
存分に笑い転げたリュウは、涙を流しながらハイの背を勢い良く平手打ちする。
「絵を見る限りでは、壮健そうで美しい娘だぐー。いや、ハイに色恋事があるなんて思いもしなかったぐー」
「……だが、彼女は勇者なのだろう?」
不意に、無関心であると思われたアレクが外を見つめながら会話に参加してきた。どうやら、一応関心は有り、聞いてはいたらしい。
一室は、静まり返った。普段、アレクは自ら会話に参加しない。名指しで問いかけても、半分ほど無視されるのが日常だ。
好奇心を丸出しにしてアレクを見つめていたリュウだが、どう返答するのかとハイに視線を移す。
「あぁそうだね、公開処刑よりもっと魅力的で愉快な出来事が起こりそうだぐな」
リュウは口元に悪童のような笑みを浮かべると、妖しく光る瞳でハイの言葉が口から飛び出るその前に先手を打つ。
「勇者を手に入れてみるのも、一種の余興なんじゃないかなー、なんて思ってみたりしたぐ?」
退屈凌ぎに、魔王が勇者を手に入れる。
それは、考えただけで非常に愉快な事だった。
まさか、魔王らだけでなく、全てを巻き込む引き金になるとは思ってはいなかったが。
いや。
筋書き通りなのだけれども。
※2020.7.7 白無地堂安曇様から頂いたリュウのイラストを挿入致しました。
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