順序良く……
文字数 1,233文字
二人でいられたので、トランシスはトビィに打ちのめされたことも忘れるほど機嫌がよい。皆の前で口づけを交わし、アサギが誰のものなのか誇示できたことにも満足している。
ただ、アサギからもっと褒美をもらわねば割りが合わないとは思っていた。
先程、『よく眠れる』という茶をアサギに飲ませたので準備は万全だ。
大きな白の水玉が散りばめられた、紺色のパジャマ。湯上りのアサギは、暑いのか胸元をはだけさせている。パタパタと手であおぎ風を送る様子が艶めかしく思え、トランシスは傍らの水を一気に飲み干した。綺麗な鎖骨が見え隠れするたびに、腹の底が疼く。
小動物がゆっくりと歩くように近づいてきて、アサギは恥ずかしそうに微笑む。何かを強請っているように思え、トランシスは喉を鳴らした。
「おやすみ、なさい」
「うん……おやすみ。今日は
見つめ合った二人は、ふふっ、と安心したように笑った。
「……えっと」
アサギはぎこちなく微笑み、じっとベッドを見つめる。自分の部屋の、眠り慣れたベッドだが頬を染め視線を逸らした。二人でいるだけで、違った物に見えてしまう。
その様子に気づいたトランシスだが、そ知らぬ顔をして腕を伸ばした。
一瞬アサギは身体を硬直させたが、おずおずと足を踏み出しその手をとる。そのまま抱き寄せられ、息を飲んだ瞬間に顎を持ち上げられる。
「ん……」
察して瞳を閉じると、すぐに唇同士が触れ合う。
優しく軽く、幾度も。
「っ、ふっ」
小鳥が啄ばむような優しい口づけだったが、何度も繰り返されると眩暈がして胸が弾む。必死にトランシスの衣服に捕まり、アサギは乱れた吐息をこぼした。
アサギが寝静まると、トランシスはこれ幸いと睡姦を始める。
夢だと思わせ、身体に少しずつ快楽を与えていく。
翌朝。
目を醒ましたアサギは慌てて飛び起きた。悲鳴を上げパジャマを見つめると、きちんとボタンで閉じてある。
やはり、夢だったのだろうか。トランシスに脱がされ、色々と“人には言えない、イケナイことをしていた”ような気がする。しかし、妙にリアルだった。
混乱し額を押さえていると、トランシスに引き寄せられた。
「おはようアサギ」
耳元で囁かれ、嬌声が飛び出す。
気まずい空気が流れ、怖々アサギはトランシスを見上げた。赤面して横を向いているので、自分の恥ずかしい声を思い出し蒼褪める。
「そ、その声はオレに刺激的だな……」
「ちがっ、違うのっ、えっと、その」
泣きそうな顔で、恥ずかしさからトランシスの胸に顔を押付けアサギは震える。
「わ、忘れて」
消え入りそうな声で呟くアサギの髪を撫でながら、トランシスは悪魔の笑みで見つめる。
「……よく、眠れたかな? 怖い夢は見なかったかな?」
アサギは昨晩の事を夢だと思っていると確信し、優しく問いかけた。
「だい、じょうぶ……」
ぎこちなく頷いたアサギを抱き締め、トランシスは嗤う。