文字通り、寝込みを襲う
文字数 1,428文字
アサギの室内はぬいぐるみに雑誌、そしてクッションが地球から持ち込まれ随分と華やかになった。こちらで購入したトモハルと揃いの机は、時折勉強に使っている。
広くはない部屋だが、アサギとトランシスにはこれで十分だった。そもそも常に寄り添っているので、狭くても問題ない。
五日ぶりにトランシスに逢えるので、アサギは弾んでいた。しかも、明日は祝日なので一日中一緒にいられる。今日は一緒に夕飯を食べただけだが、明日は二人で出掛ける予定だった。
「今日の飯も美味しかった。アサギが作ってくれたんだよね?」
「お野菜たっぷりのスープとサラダは私が。他のは、近くのお店で買ってきたよ」
「そっか。汁が一番美味かった、あれならいくらでも飲める」
前回と違い、今日は二人きりの食事。露店でメインとする炙り肉を購入したアサギは、作れるものだけ自分で用意した。もともと料理好きだったが、最近は成長がめざましい。
「毎日食べたい。本当に美味しい。幸せだなぁ」
「頑張って料理の勉強するから、待っててね。それで、明日だけど行きたいところはある?」
「アサギとなら、何処へでも」
くすぐったそうに笑い、軽く抱き締め合う。
まだ数回しか沈んだことのない寝台は、アサギ一人では広くても二人なら多少狭い。しかし、限られた空間に閉じ込められたようでそこがまたよい。「おやすみなさい」と言葉を交し、布団に潜り込む。
嬉しそうに身体を寄せてきたアサギを引き寄せ抱き締めたトランシスは、顎に手をかけ上を向かせると優しく口づけた。すぐに吐息が零れ、互いの身体が熱を帯びる。
口づけだけでは満足出来ないトランシスだが、これは儀式であり、大事な
今日は次の段階へと進む日だ。
アサギは顔を赤らめ、強く瞳を閉じている。おそらく、以前教えた“深い口づけ”が始まることを予感しているのだろう。
トランシスは重心をかけながら、わざと音を立て唇を吸い上げた。舌先で器用に嘗めると、アサギの身体が引き攣る。
慣れない口づけに戸惑いつつも、いつしかアサギは眠りに入った。
「あぁ、ようやく眠ってくれた」
そうして、トランシスは幼い恋人が眠っている間に、調教するため快楽を与える。
計画通りに事を運び、喜色満面でアサギの頬に口づけると水を一気に飲み干す。外したパジャマのボタンを元通りにとめ、何事もなかったかのように眠りに入る。
「次回も楽しみだねぇ、アサギ」
髪に指を通しながら、愛しそうに呟いた。
アサギから強請るように、毎晩寝込みを襲う。知らない間に快楽の糸で絡め、自ずと足を開くように躾けてしまえば問題はない。
「でも、淫乱になりすぎても困る。ただでさえ害虫が多いから、盗られないようにしないとなぁ。その為には“誰”が“アサギの所有者”か、心と身体で解らせないと」
おやすみ、愛しいオレのアサギ。
耳元で囁き、指を絡めて眠りについた。
翌朝、赤面して飛び起きたアサギだったが、飄々とした様子のトランシスと、自分の乱れていないパジャマに首を傾げた。気になる点といえば、銀杏のような匂いが微かに香っていること。
当惑している様子をみて、意地悪くトランシスは耳元で囁く。
「怖い夢でも見たの? どんな夢? オレは出てた?」
一呼吸置いて、赤面したままアサギは呟いた。
「トランシスは。いた、よ……。嫌じゃ、なかった、よ」