【前奏曲】

文字数 1,262文字

 雪が降る、降って積もって凍えてしまった
 強かに雪は降り積もった、儚げに見えて牙を剥いた
 温かさで解ける雪、空から舞い降りる小さきもの
 けれども、地面に降り積もった雪は狡猾で
 緑の息吹を、その純白で覆い隠す
 息が出来ぬようにと覆い被さり、緑を凍えさせた
 美しき白は、何れ泥に塗れて見苦しく
 雪が降る、降って積もって凍えた緑
 雪が解け、息を吹き返すために待ち侘びる
 暖かな太陽が降りそそぐ時まで、凍えながら耐え続ける
 
 春の息吹が運ぶもの、暖かな日差しのその季節
 奏でる音は、天上の調べ
 眩いばかりの光が、恋人たちに降り注ぐ
 愛しい、君よ
 どうか君の歩く路が、光溢れるものでありますように
 全ての闇を跳ね返し、明るい路を進めるように
 ここから願い続けよう

 健やかに全ては育つ、生命の息吹をその身に受け
 現実の残酷な冷たい空気に晒されても
 強かに大きく伸びゆく生命の力強さよ
 全ての命あるモノは、一つの夢を抱き
 懸命にもがいて生きていく、美しき世界
 繰り返す輪廻の渦に流されようとも
 行き着く先は、物語の終焉
 自分が決めた、たった一つの世界
 願わくばそこが、自身が願ったものでありますように

 大樹となりし、もとはか弱きただの芽は
 幾多の数奇で過酷な運命を乗り越え
 それでも必死に足掻き、干からびた大地から芽を出した
 大いなる生命の源
 全ては芽の一途な思いゆえ
 何度も輪廻し、魂を回帰し
 神秘の宇宙に飲み込まれ
 唯一の救いを求め、愛しいモノに手を伸ばす
 永遠の想いをここに、心はそこに
 時は止まりはしない、残酷で愛おしいこの世界で

 実は、恩恵を受け幾つもならせたもう
 至上の楽園に育つ大木、誰しもが欲し手を伸ばす
 魅惑で甘美なその実を、惜しげもなく人々に分け与えん
 一口齧れば笑み溢し、二口齧れば涙溢れ
 三口齧れば生命湧き出る
 全ての生命の根源を、ただ皆に分け与える
 実を口にし、幸せそうに微笑む生命たちを
 この上ない喜びだと思い、大木は歓喜した 
 風に乗って声を出し、多くの生命を呼び寄せる

 浅葱色した、綺麗な花が咲き誇る
 不思議な色合い、幻想の扉
 触れたくとも触れられない、魅惑的な異界の花
 触れた者には幸福有りと、広がる噂に皆奔放する
 けれども花は見つからない
 たった一輪の花を探し、人々は滑稽に駆け巡った
 真か嘘か分からぬのに

 焦がれて欲する私の楽園
 浅葱色した花と共に その花の隣に芽吹きましょう
 そこで咲きましょう 永遠に咲き誇りましょう
 勇気を下さい そこで咲き誇れる勇気を下さい
 摑めない空虚な花ではなく 誰からも触れられる花を目指しましょう

 所詮は御伽噺 手にした者など一人もおらず

 者は極き、臆病の者
 弱くて、強く、反した者達の楽園を

――何もなき宇宙の果て 何かを思い起こさせる
 向こうで何かが叫ぶ 悲しみの旋律を奏でる
 夢の中に落ちていく 光る湖畔闇に見つける
 緑の杭に繋がれた私 現実を覆い隠したまま
 薄闇押し寄せ 霧が心覆い 全て消えた
 目覚めの時に 心晴れ渡り 現実を知る
 そこに待つのは 生か死か――


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登場人物紹介

アサギ(田上 浅葱) 登場時:11歳(小学6年生)

 DESTINYの主人公を務めている、謎多き人物。

 才色兼備かつ人望の厚い、非の打ち所がない美少女。

 勇者に憧れており、異世界へ勇者として旅立つところから、この物語は始まった。


 正体は●●の●●●。

ユキ(松長 友紀) 登場時:11歳(小学6年生)

 アサギの親友。

 大人しくか弱い美少女だが、何故かアサギと一緒に勇者として異世界へ旅立つ羽目になった。

 トモハルに好意を抱いている。

ミノル(門脇 実) 登場時:12歳(小学6年生)

 アサギのことを嫌いだ、と豪語している少年。

 アサギ達と同じく、勇者として異界へ旅立つ羽目になったが、理不尽さに訝しんでいる。

 トモハルとは家が隣り同士の幼馴染にして悪友。

 多方面で問題児。

トモハル(松下 朋玄) 登場時:11歳(小学6年生)

 容姿端麗、成績優秀であり、アサギと対をなすともてはやされている少年。

 同じく異界へ勇者として旅立つ。

 みんなのまとめ役だが、少々態度が高慢ちきでもあったりする。

 なんだかんだでミノルと親しい幼馴染。

ダイキ(中川 大樹) 登場時:11歳(小学6年生)

 剣道が得意な、寡黙な少年。

 人づきあいが苦手なわけではないが、自分から輪の中に入っていくことに遠慮がち。

 同じく、異世界へ勇者として旅立つことになる。

 やたらと長身で目立つことがコンプレックス。

ケンイチ(大石 健一) 登場時:11歳(小学6年生)

 ミノルと親しい可愛らしい少年だが、怒らせると一番怖い。

 同じく異世界へ勇者として旅立つことになった。

 従順だが、意に反することには静かに反論する。

リョウ(三河 亮) 登場時:11歳(小学6年生)

 作品のメインである一人。アサギは「みーちゃん」と呼んでいた。

 アサギと親しく、出会ってからは常に一緒だったが、勇者に選定されず、地球に取り残されてしまった。

 常にアサギの身を案じ、地球で不思議な能力を発揮している。

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