2022/04/18 主人公には必ず弱点を持たせろと言われていた時代

文字数 1,032文字

大昔の漫画雑誌に、編集者による漫画講座みたいなやつが載っていた。
その編集者が言うには、「『主人公には必ず弱点を持たせろ』そうすれば必ず面白くなる」だそうだ。
例として「ウル○ラマンは地球上で3分間しか戦えないという弱点を持つ。ピンチになると面白いだろう?」って書いてあった。
いやいや、その設定は最初のシリーズを初めて見た人は面白いと感じるだろうけれど、タイマーがピコピコ鳴って本当にピンチになるなんて話は数回しかできないでしょ。あとの話はピコピコ鳴っても特に問題なく敵を倒してしまうし。敵が弱点を解析してそこを狙って来るなんて話もせいぜい2回くらいしか使えない。
3分間しか戦えないって設定は面白いけれど、それを実際にストーリーにどう生かしてどう面白くするのかってのは難しいと思う。何度も使える手ではない。
その弱点はネタ的には面白いからあったほうがいいけれど、弱点話が数回しか使えないのならば、無くても物語上そんなに困らない気がする。数話しかない短編だったらその弱点は生きると思うけれど、何話もある長編や、シリーズ化されてしまったら必要ないように思う。事実、他のヒーローは特別な弱点を持っていなくても充分に面白いし。

その編集者がいる漫画雑誌に当時掲載されていた漫画には、その編集者の意見が強いのか、編集部の方針なのか、編集長命令なのか、弱点を持った主人公がやたらに多かった。
弱点とは言っても、ほとんどが取って付けたような弱点だった。犬が怖い。猫が嫌い。女性が近くに来ると動けなくなる。女性に触られようものなら気絶するか発狂する。
その弱点をうまくストーリーに組み込んで生かせれば良いけれど、ほとんどの作品が生かせていなかった。ただこんな弱点を持っている主人公ですよって設定だけに終わっていた。
漫画家も編集者が弱点を持たせろとうるさく言い続けるから、弱点なんかいらねーよと思いつつも、仕方なしにどーでもいい弱点を付加していたんじゃなかったのかとも思う。

別に特別に目立つ弱点なんか必要ないだろ。強い奴には弱いし、ニガテな事はニガテってくらいで。
その後その雑誌の漫画には意味のない弱点を持つ主人公はぜんぜんいなくなった。あの編集者が人事移動か辞めたのかでいなくなったからかもしれない。

弱点を持たせるのならば、どーでもいいヘンテコな弱点ではなくて、藤田先生がおっしゃるように欠けた心が弱点とすれば良い。
『欠けた心が埋まるのがドラマ。ドラマの無い物語は物語では無い』との事。

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