2022/05/10 同級生だったA子さんに、ある事を今さら打ち明けるべきか

文字数 2,059文字

その後は選択科目になったが、高校一年生の時に美術の授業があった。
美術室に移動しての授業だったが、自分の席の二つ前にA子さんは座っていた。
ふとなにげなく彼女の席に目を向けると、机の上にスケッチブックが広げられていた。そこには様々な物が描かれていたが、その中のひとつを見てドキっとした。
それはとある生き物のマンガチックなイラストだったが見覚えがある。見覚えがあると言うよりはよく知っている。
しかしこのイラストはある人物が考案したオリジナルイラストのはずだ。それがなぜ彼女のスケッチブックに描かれているのか疑問が沸き上がる。
A子さんに尋ねてみたかったが、彼女はクラス内カーストの上位グループの存在であり、それまであまり会話を交わした事がない。シャイボーイだった自分には彼女に声をかけにくい。結局なぜそのイラストがスケッチブックに描かれていたのかの謎は、聞けずじまいに終わってしまった。

自宅に戻ってから調べてみた。A子さんがどこ中出身だったかは知っている。その中学はいくつかの小学校出身者で構成されているが、あのイラストが描かれていたのなら、どこの小学校に通っていたのかは明白で特定できる。
その小学校は自分も高学年までは通っていた小学校と同じはずだ。クラスが違っていたからA子さんの存在は知らなかったが。
自分は高学年の時に引っ越しをして、別の通学区になってしまって転校したのだが、直線距離にすれば元の小学校のほうが近い。運動会の時期になると、元の小学校から音楽や歓声が聞こえてくる。しかし転校した小学校からは聞こえてこない。でも小学校の近くに建つ高校からの野球部の金属バットの打撃音や、吹奏楽部が練習している楽器の音色は聞こえてくるけれど。

転校前に通っていた小学校の卒業文集がなぜだか家にある。これは自宅の郵便受けに入れられていた物で、誰かが気を利かせて親切に届けてくれた物らしい。
さっそくA子さんのページを開いてみる。するとそこにもあのイラストが描かれている。
本文を読んでみると、そのイラストを考案したB子さんとの思い出が綴られていた。二人は小学校の高学年の時のクラス替えで同じクラスになり、親友同士であったようだ。だがB子さんは小学校を卒業する前にまた転校してしまったようだ。
また転校と言うのは、自分が元の小学校の低学年だった頃に、同じクラスに転校してきたのがB子さんだったからだ。親が転勤族だったのだろう。小・中学の時も親の都合で転校してきたり転校して行ったりのクラスメイトは何人かいた。(自分もだけど)

B子さんは一風変わった少女だった。自分の事を『ボク』と称していた。『ボクっ娘(こ)』などと言う存在がこの世にまだ現れていないはるか大昔の時代だ。超大昔のテレビタレントで、自分の事をボクと言っていた女性タレントがいたことはいたが、小学生女子が『ボクは』などと話す姿に衝撃を受けた。
B子さんの家と自分の家はわりと近かったらしく、休みの日に遊びに行った先で出会ったりもしている。
彼女はクラスの女子と二人でいたのだが、その手に握られていた物を見て驚いた。彼女は銀玉鉄砲を持ってバンバン撃っていたのだ。
女子なのに銀玉鉄砲!? それまでの自分の常識がひっくり返ったようで、またもや衝撃を受けた。
髪型はベリーショートだったと思う。こんなにボーイッシュな女子なんて、現在までに漫画やアニメの中の架空の世界でしか見た事がない。現実世界で生で目撃したのは、この時代の一度きりだ。
B子さんは小学校低学年の頃、ノートなどに自分が考案したある生き物のイラストをよく描いていた。すごく上手だった。
そのイラストをA子さんは、小学校高学年時代に親友だったB子さんに習って、自分でも描けるようになっていたのだろう。


高校時代にイラストを目撃した事や、そこから共通した人物を知っていた事実などをA子さんに伝えるべきかどうかを、数年前からずっと悩んでいる。なにせ、そんなに喋った事のない女子だし、今さら高校時代のエピソードを聞いたとて、それが何になる? って思われそうだし、初期は参加していた同窓会も最近行ってないし、あんた、誰だっけ? とか忘れられている可能性もある。
同窓会に二人共出席して会えたとしても、わざわざ話すほどの話題でもない気がするし、一応同窓会関係でメアドは知っているから、伝えるならメールで伝えようかとも思うけれど、それもどうかなー? って感じる。
メールしたとしても、「うっわーっ、キモイ内容のメール来たーっ!」とか思われそうな気もするし、悩む。
多少は面白い話のような気もするけれど、この話は墓場まで持っていくほうが正解なのかな?


(これは余談ですが、そのなぜだか家にある『前の小学校の卒業文集』から、とある人物と偶然知り合いました。そこから偶然に偶然が重なって偶然な事が起こる物語が展開されます。この話を漫画や小説にしたとしても、きっと偶然が重なりすぎて「ウソクセーっ」って思われてしまうほどの物語ですが、それはまた別の話です)

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