2023/12/13 インド映画『RRR』に登場したライフルについて

文字数 3,572文字

インド映画『RRR』に登場していたライフルについての疑問。一般の人は気にも留めないだろうし、ドーデモいーような事。でも自分的にはちょっと気になる事。

劇中の舞台は英国の統治下時代の1920年の『イギリス領インド帝国』です。
英国軍の兵士達と主人公の一人、少年時代のラーマとその父が使っていたボルトアクション式ライフルは『リー・エンフィールド』でした。このライフルは英国軍で1895年から1958年までの間、新型ライフルの『L1A1』に切り替わるまでの長い期間使い続けられていました。

『リー・エンフィールド』が1920年のインドで使われていてもおかしくはないです。でも映画で使われていた銃は同じ『リー・エンフィールド』であっても後期型であり、形状がひと目で分かるほど違っていました。1920年であれば最初期型を使用していなければおかしいのですが、そこまでこだわらなかったのか準備できなかったのか?

映画に登場していた『リー・エンフィールド』は外観の特徴から『Rifle No.4 Mk I*』か『Rifle No.4 Mk 2』のどちらかだと思います。海外のサイトを調べてみてもどちらであるかは自分には判断できませんでした。
『Rifle No.4 Mk 2』はトリガーの回転軸をトリガーガードから銃本体へと移したとあるけれど、見た目で分かるんでしょうかね? 見比べてみても自分にはサッパリ分かりませんでした。

フロントサイトの前方に少し銃身が飛び出しているのが『Rifle No.4 Mk I』以降の特徴ですが、リアサイトの形状が『Mk I』ではなく『Mk I*』以降のようです。リアサイトがV字カットから丸い穴の空いたピープサイトになっているのが特徴です。
でも『Mk I*』はカナダと米国でしか生産されず、英国では『Mk I』しか生産されなかったとあります。カナダと米国の生産分は英国に納入されたのか、それとも他の国に輸出されたのかがよく分かりません。

『Mk I*』なのか『Mk 2』なのかが分からないというのは、そのリアサイトの形状です。どちらも丸型のピープサイトなのですが、ピープサイトを起こすと細かい目盛りの付いた遠距離用のリーフサイトになるタイプと、どちらもピープサイトのL字型で、起こしたり倒したりして300と600ヤードを切り替えるタイプ。(米国のM-16もL字型の同じタイプ)

英語サイトで調べてみても『Mk I*』と『Mk 2』のリアサイトの形状がバラバラで、どれが正しいのかまったく分かりません。どちらも正しい可能性もありそうですけど。「リアサイトなんぞ好きなの付けとけやーっ!」って感じなのかもしれないですね。

『Mk 2』が採用されてからは『Mk I』と『Mk I*』を『Mk 2』規格に改修したとあるので、改修しきれていないタイプもあるのかもしれません。英国以外の国で使われていた『リー・エンフィールド』は改修されたのかどうか。
(あ、『Mk I*』を改修したって事は、カナダと米国で生産されていた『Mk I*』は英国が輸入していたって事かも?)

この映画で使われていた『リー・エンフィールド』はどこでどうやって入手したんでしょうかね。インドの警察では現在でも使われているらしいですけど。
インドでの銃の規制はどうなっているのか知りませんが、米国などの海外から映画用に仕入れたのかもしれません。映画用の銃を貸し出す会社とかありそうですし。


↑の画像は少年時代のラーマとその父が使ったリーフサイトの無いL字型切り替え式ピープサイト付きの『リー・エンフィールド』です。ドイツの『モーゼルKar98k』とは違ってボルトの後退量と回転角が小さいために、素早い連続射撃が可能だったそうです。劇中でも軽く素早い動きでの排莢と装填シーンが見られます。

少年ラーマの応戦シーンでは同じシーンなのにカットによっては違う銃が使われていました。『リー・エンフィールド』の箱型のマガジンは↑の画像のようにトリガーガード前方に密着して装着されていますが、その銃はトリガーガードの数センチ前方に付いているし、リアサイトが付いていない銃でした。空砲を発射しないシーンでは安全を考えて発射機能の無い別の銃を使っていたのかもしれません。


↑の画像は村長を撃とうとしたけれど、インド人の命は弾丸一発よりも価値が無いからもったいないと言われたシーン。
この銃はなんでしょうかね? 一見すると『リー・エンフィールド』っぽくはあるけれど違う銃。空砲を撃たないシーンだから無可動の銃かもしれませんが、アップになるのでちゃんとした本物の銃を使ったほうが良かった気がします。

この銃はフロントサイトの辺りがおかしいです。ハンドガードと密着しておらず隙間があるし、銃身の突き出し量が少ないです。後方の兵士達の銃も銃身の突き出し量が少ないように見えます。
それに箱型マガジンがトリガーガードと接しておらず数センチ前方に付いているし少し長い。リアサイトが付いていない。ボルトレバーの前進停止位置がトリガーガードの先端位置の辺りにある。本物の『リー・エンフィールド』はトリガーガード後端の辺りが停止位置。少年ラーマが使った別銃は、ポルトレバーがトリガーガード後端辺りだったので、この銃はそれとはまた違うものです。

弾倉が突き出たボルトアクションライフルとしては、ロシアの『モシン・ナガンM1891/30』イタリアの『カルカノM1938』があるけれど弾倉の位置と形状が違うし、なんでしょうね?
レバーの形状と位置的に、ドイツの『モーゼルKar98k』の機関部を流用した映画用に作られた銃なのかな? 突き出た弾倉は単なるダミーなのか? ダミーならこんな位置にはしないか? こういう弾倉付きの銃があってそれの改造なのか? う~む、わからん。


↑の画像。青年ラーマが試し撃ちをしたオートマチックライフル『ブローニングM1918』通称『BAR』(Browning Automatic Rifleの略。米国ドラマ『コンバット!』などで有名)
この銃は米国軍が使用していたものですが、なんらかの手段で英国軍が入手していてもおかしくはないかな?
米軍で採用されたのは1917年(1917年採用なのにM1918とはこれいかに。答えはブローニングM1917機関銃との混同を避けるため)。1920年が舞台の『RRR』に登場しても大丈夫だよね。

とはいかない。この映画に登場したのは最終改良型の『M1918A2』で、銃身先端部の消炎器に取り付けられた二脚が特徴。
設計日は書いてないから分からないけど、その前モデルの『M1918A1』の設計が1937年だからそれ以降なのは確実。『M1918A2』が1920年に存在するわけはないけれど、「こまけーこたーいーんだよっ! カッコイイからそれでOKさっ‼」的な感じ?

試し撃ちをしたシーンでは単発で撃っていたけれど、本来はフルオートオンリーの銃。『M1918A1』まではセミ・フルの切り替えができたけれど、『M1918A2』になってからは発射速度300 - 450発/分と500 - 650発/分のどちらかをセレクトする仕様に変更。
単発で撃っていた場面では一発撃つごとに指を素早く放していたので、それでセミオートに見せていたのか、それとも最初からフルオートの機能が使えなくしてあったのか?
(一作目のロボコップの銃のAUTO9〔ベレッタM93Rの改造品〕は本来ならば3点バーストで撃てるはずが、調子が悪くてフルオートを指切りバーストで撃っていたらしい。4点バーストになってしまったシーンもあるみたい)

村人達が訓練で使っていた真っ白すぎる模擬銃。木製だと言っていたけれど、多分あの白い銃床はプラ製なんじゃないかなと思う。大量の模擬銃が必要だから、それを木材から削り出すのは手間とお金がかかりすぎる。プラで作れば一個の型から大量生産できて経費も少なく済みそうだし。で、そのプラ製の銃床に何かの銃の機関部を取り付ける。って感じだったのではないかな~と推測。
(もしかすると本来ならば木目調に塗装するはずが、時間も無いしめんどくせーから白いままでいーやっ! となったのかも?)


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※:この記事は2022年12月9日に書いたけれど、書きかけで放置していたものです。せっかく書いたのに非公開にしておくのはもったいないかな~なんて思って今回公開してみます。(その当時の自分はもっと何か続きを書こうとしていたのかもしれませんが、1年も前の事なのでもはやまったくもって全然分かりませーん!)


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