2022/04/10 【実録】凶悪な侵入者との命懸けの戦い

文字数 1,778文字

部屋に日の光が差し込むと、その光の中にキラキラふわふわと、浮かび漂う大量のほこりが見える。気温が下がる冬場には、窓を開ける頻度は極端に減少し、そのため自然と室内はほこりっぽくなる。

ああ、こんなに汚れた空気を吸って生きているのか、私は。肺の中は無数のほこりにまみれているのか、私は。胸中が絶望感で満たされる。
大型の空気清浄機が欲しいところではあるが、季節はもはや春。太陽からの暖かな日差しの恵みにより、草木は芽吹き、生き物たちは眠りから目覚めて動き出す。
凍てつく冬が終焉を迎え、すっかり春らしい暖かな季節となった。窓を開放しても寒くはない。おまけに春先の不安定な大気のせいで、時々強風が吹いたりもする。
それならばと、部屋のすべての窓を開け放ち、天然の風をクリーナーの代用として使い、ほこりを外に追い出してしまう事にしよう。
私の部屋から解き放たれ、飛散して大気中を漂うほこりたちが、近所のご家庭の室内にまで到達する可能性は充分にある。しかし、その点については平に御容赦願いたい。この行為は私にとって、健康面と精神衛生上、どうしても必要不可欠な行ないであるのだから。

そして窓を開け放ち、しばらく放置したのち部屋に戻ってみると、いきなりそこに“奴”がいたっ!
「おおっ⁉ 君はどこの誰だっ‼ 勝手に許可なく他人の部屋に入ると、住居不法侵入罪になるぞっ!」
だが奴は、そんな私の警告を受けても、まったく動じる様子がない。
奴は自分の強さに絶対的な自信を持っているのだろう。私の事などまったく眼中にはなさそうな、不敵な態度をしている。私を見下しているのだ。
確かに奴は強い。私は奴の強さを知っている。戦いになった場合、私の力で果たして奴に勝てるのかどうかは分からない。
だが、奴と対峙してしまった以上は、この戦いは避けて通るわけにはいかない。最悪どちらかが命を落とす結果となるかもしれない。しかし、戦いとは常にそういう物だ。死ぬか生きるかの非情の世界だ。ならば覚悟を決めて戦おう。私の全能力、私のすべての力をふり絞って!

だが、奴は最凶最悪の武器を持っている。素手で奴に勝てるとは到底思えない。
私も何か武器を、武器を持たなければ。 素早く室内を見渡す。
あったっ! この武器だっ! この武器ならば、奴の武器の有効範囲外からの攻撃ができるっ!
奴の武器は強力だが、近接戦特化型だ。そこに私のつけ入る隙、勝機は必ずあるっ!

「私の攻撃を喰らええっ!!」
私は渾身の力で武器を振るったっ!
奴の身体がぐらりとよろめく。よしっ! 効いているっ! 私が選んだこの武器は正解だった!
だが油断してはいけない。奴は変幻自在の戦法を得意としている。素早い動きで翻弄されて懐に跳び込まれ、必殺の武器を使用されたらそれで終りだ。奴の動きを良く見るんだ。決して接近させてはいけない。あくまでも奴との距離を取り、離れた位置からの攻撃を加え続けるんだっ!

私は奴に攻撃を浴びせ続ける。奴は何度もよろめいた。それでも時おり、こちらに向かって来ようとする素振りを見せつけられた。しかし、私はそのたびに攻撃を確実にヒットさせ、奴の前進を阻み続ける。
だが、前進を阻むだけでは防戦一方だ。このままではらちが明かない。私は決意した。私の全身のパワーを一気に高め、最高出力の攻撃技を放つのだ。
私は体中の気力を集中させ、燃え上がるようなオーラを放ち、瞬間的に爆発させたパワーを奴にぶつけるっ!!

「うおおおおおおーーーっっ!!! ひっさあーーつっ! げったぁぁああああーーーっ、さいくろんんんっっっ!!!」
よしっ! 奴が後退したぞっ! 今がチャンスだっ! 攻撃を畳みかけろっっ!!
「くああああっっ!! るすとはりけええええーーーんっっ!!!」
やったぞっ! 奴は必殺技に翻弄され、たまらず一目散に窓から逃げ去った!! 私の完全勝利だっ!!!

ふう~、しかし、でかいハチだったな。
オオスズメバチよりは小さかったが、アシナガバチよりは遥かにデカかった。キイロスズメバチだったのかもな。
しかし、咄嗟に手に取った『うちわ』を使ったのは効果的だった。強力な風で吹き飛ばしただけだから、あのハチも特に怪我などはしていないだろう。どっかで元気に生きているはずだ。もう私の部屋には入って来るなよっ!

あ~、うちわを振りすぎて、ちょっと腕がだるい~。

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