第476話政治家候補者たちとの2回目の面談(2)

文字数 1,479文字

大旦那が黙り込む麗に、声をかけた。
「麗、どうや、何かあるか、これ以外に」

麗は厳しい顔、その厳しい顔に大広間に集まった全員の注目が集まる。
仕方ないと思ったのか、麗は口を開く。
「あの・・・言い方がきついようでしたら、ごめんなさい」
少し冷たい口調なので、大広間全体に緊張が走る。


「その程度のことでしたら、誰でも考えつきます」
「行政と観光業者に意見するだけなので、それほど努力もいらない」
「それで、一定の効果もあるかもしれない・・・あるだろうの予測程度と思う」

麗は政治家候補者4人を見て、また話す。
「大切なことは結果です」
「生活している人は、すぐに結果が欲しい」
「家の前にゴミが落ちている状態、誰が捨てたかわからない状態を、今すぐにもなくしたい」
「誰だって辛いと思います」
「仕事で疲れて帰って来て、家の前に観光客が投げ捨てたゴミが落ちていれば、辛くなると」
「あるいは、自分自身が楽しい旅行に出かけて、帰って来たら、家の前にゴミ」

麗は、困惑する政治家候補者4人をしっかりと見て、続けた。
「結果のモニタリング、継続的なモニタリングが必要なのではないかと」
「モニタリングを誰がするのか、行政なのか、自治会なのか、観光業者なのか。あるいは特定の業者に委託するのか」
「その手法、どこまでやるか、そういう細かい立案が必要なのではと、思うのですが」
「必要に応じて、ゴミ拾いまで、委託してしまうのも、問題はあるけれど、手っ取り早いかもしれない」

麗の厳しめの指摘に、まず街衆が反応する。
「当たり前の話で・・・でも、その視点が欠けとった」
「政治家が行政や業者に意見する、それだけなら、簡単過ぎるしな」
「下手をすると、言うただけで、効果がないかもしれん」
「結局、観光客のゴミ拾いを泣く泣く・・・」
「それを、家の前に捨てられたゴミを拾ってくれるだけでも、助かる」

大旦那も口を開いた。
「声掛けなら、誰でもできる」
「でも、最後まで、仕事はしっかりと始末せんと」
「それが、京都人の丁寧な仕事なんやと思うな」

総務省官僚の高田が恥ずかしいような、麗に感心したような顔。
「いや・・・当然の視点を欠いておりました」
「まずは、結果と」
「具体的には、行政と観光と自治会と相談して・・・専門の外部委託も検討しましょう」

大学教授の佐藤も口を開く。
「今まで泣き寝入りしていたけれど、それで解決が進みます」
「もちろん、観光客がマナーを守ってくれれば、そんな必要もないけれど」
「それも確約できる話ではなく」

麗は、少し表情を崩す。
「これを国政で言うほどのことではないかなと」
「ただ、思いついたままに」

その麗に、弁護士の藤村。
「いや、麗様の考え方は、観光客のゴミ問題に苦しむ地域の参考になります」
「上手く進めば、全国や世界のモデルになるかもしれない」

元銀行支店長の小川も、賛同。
「早速、麗様の意見を入れて制度設計に入れます」
「経費も大してかかりませんし、みんなが楽になる話かと」
「具体的な話は、また、あちこち検討してお話します」

大旦那が、話を締めた。
「やはり、おもてなしの教科書たるべき京都や」
「そうかと言って、住んでおる人ばかりが犠牲になるべきではない」
「少々の努力と、少々の費用で、皆が楽になれば、こんないいことはない」
「細かな話は、地域、行政、観光で相談するとして、まずは一歩前進や」

政治家候補者4人との2回目の面談は、無事に終了した。
また、麗は2回目の面談の発言で、ますます政治家候補者や、理事会、街衆の評価を高めた。
ただ、「きっちりと仕事をする昔の京都人のようや」との評価が耳に入り、麗自身は実に困惑している。
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