第171話麗からの返事に蘭は大泣き 奈々子の心に光が差し込む。

文字数 1,106文字

蘭は麗が予想した通り、大泣きになっていた。

「我慢できなかった」
「九条様になっても、麗兄ちゃんだもん」
「本当はメチャやさしい麗兄ちゃん」
「余分なことは決して言わないけれど、困った時は必ず助けてくれた」
「ありがとうって言うと、小さな頃は頭を撫でてくれた」

メッセージを送ったまま、スマホを握りしめていた蘭に、メッセージが返って来た。
「都内に来たら、遊びに来い」
麗らしい、シンプルなメッセージだった。

蘭は、また大泣きになる。
「麗ちゃん・・・逢いたい・・・声が聴きたい・・・」
「一緒のアパート、一緒に住みたい」
「早く行きたいよ」
蘭は、しばらく泣き止まなかった。


さて、奈々子には、五月から「麗のお世話係」についての連絡が入った。
五月
「九条家としても、麗ちゃんの健康管理が何よりも大切」
「そのため、お屋敷から麗ちゃんのお世話係を一緒に上京させて、住まわせる」
「連休中に決めるよ」

奈々子は声が震えた。
「ごめんな・・・うちが無力で引っ越しも遅れて」
「でも、すでに九条麗様や、口出しも出来ん」

五月も辛そうな言い方になる。
「麗ちゃんは、奈々子さんとは距離を置きたいとのこと」
「まあ・・・やっと一人になれたのに・・・ということやろ」
「奈々子の引っ越しが遅れるということもあるけど」
「折を見て、顔出したら?」

奈々子は困った。
「うーん・・・余計なことは・・・この間も拒絶されたし」
「犯罪者の妻やったし」

五月は、その話を続けたくなかった。
そのため、話題を切り替える。
「蘭ちゃんの転校手続きは、どうや?」

奈々子の声が明るくなった。
「ああ、それは麗の先生の日向先生と九条の大旦那様が動いてくれて」
「中野にある高校に」
「麗ちゃんの大学の付属高校で、書類も届いた」
「久我山からも近いらしくて、よかった」

五月も奈々子の明るい声にホッとした。
「麗ちゃんのお世話係は、うちと茜に任せて」
「奈々子と蘭は、まずは新しい生活に慣れんとあかん」
「まあ、あくまでも、嫁さんやない」
「お世話係兼秘書と考えとる」

奈々子も、少し落ち着いた。
「そやな、麗は気難しいから」
「明るく出来る子がいいと思う」
「本当は、やさしい子やけど」

五月は、また話題を変える。
「まあ、関係筋とも応対は立派やった」
「何しろ、言葉が全部深い」
「相手を喜ばすよ、特に仕事では」
「面会していた全員から、お礼の電話」
「全て麗ちゃんに感心して、安心しとるし、もっと協力したいとか、話をしてみたいとか」
「あの対応には、大旦那もうちも茜も感激や」

奈々子は、その話に涙が出てきた。
「麗・・・うちも逢いとうなった」
「いつのまに、そんな立派に」
初めての東京暮らしに実は不安を感じていた奈々子の心に、光が差し込んでいる。
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