第328話麗と佳子の銀座デート

文字数 1,198文字

麗と佳子は、地下鉄を乗り継ぎ、銀座に到着。
地下街を通り、階段をのぼり四丁目の交差点に出た。

途端に、佳子の目が輝いた。
「あーーー!麗様、ここ・・・ほんまですか?」
「はぁ・・・憧れの・・・時計」
「まあ、賑やかで、きれいで・・・キラキラしとる」

麗は、すっと佳子の手を握る。
佳子は、ますますうれしそうな顔になる。

麗は、出来る限りのやさしい声。
「少し歩きます」
佳子の声が弾む。
「はい!もうわくわくで」

その後は、お決まりのウィンドウショッピング。
七丁目ぐらいを目途として歩く。
様々な有名ブランド店が続き、面白くて仕方がない佳子は、一々立ち止まる。
麗も、それには、焦らず付き合う。
「まあ、無粋な俺が、こんなキラキラした街には似合わないけれど」
「佳子さんが迷子になるほうが、面倒」

右手に京都由来の超老舗羊羹店が見えてきた。
佳子は、ここでも驚いた顔。
「へえ、こちらだったんですね、懐かしい名前で」
麗は、一応、声をかけた。
「二階が喫茶部になっていますが、入ります?」
佳子は、笑って首を横に振る。
「まさか、京の人が銀座に来て、京の食べ物など」
麗も、その笑顔には苦笑。
「まあ、それが正解で」
「そもそも京の人が、東京の人に京の美味を伝えようとのお店」

また少し歩いて麗は説明。
「その先に浜離宮公園」
「そこから水上バスが泊まって、墨田川を通って浅草にも行けます」

佳子は、麗の顔をじっと見る。
「その浜離宮公園と、墨田川を見たくなりました」

麗も拒む理由はない。
多少、食事場所への距離が遠くなるけれど、佳子が銀座を歩くなどは今後も滅多にはないと思ったから。
素直に、佳子の願いを聞き、広い浜離宮に入り、ゆっくり散歩。
そのまま、墨田川沿いまで歩き、浜離宮に戻る。
尚、その手はずっとつないだままになっている。

佳子が、また声をかけてきた。
今度は、赤い顔、恥ずかしそうな顔。
「麗様、恋人みたいで・・・ドキドキがおさまりません」

麗は、佳子の表情に、「何か」を求めていると理解する。
ただ、家の中ではない、少ないながらも人が歩いている。
何かをするにしても、少し身体を近くする程度、そこまでが限度と思う。

少し手前にベンチがあった。
麗は、小さな声。
「少し休みます?」
佳子は、頷いて麗の手をキュッと握る。

ベンチに座ると、佳子のほうから、身体を寄せてきた。
麗は自分の腕が邪魔と感じたので、佳子の腰を抱き、密着を強くする。
佳子の身体が、またガクっと震えた。
「麗様・・・うち、危なくなってきました」
そして目を閉じて、麗に顔を近づける。
麗は、佳子の欲求を理解した。
そのまま、柔らかく佳子の唇を、少しだけ奪う。

佳子は、目を開けて、悪戯っぽい顔。
「羊羹より甘いお菓子をいただきました」
「少し人が歩いていて、ますます甘く、ドキドキです」

麗は、佳子の腰を強めに抱く。
「これは、とても京の公園ではできません」

佳子はうれしそうに頷く。
そして、今度は佳子が麗の唇を奪っている。
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