第451話麗の桃香への提案 桃香は麗の笑顔や、からかいまでうれしい

文字数 1,242文字

麗は桃香にシンプルな質問。
「桃香さんは、料理の勉強をしているの?」

桃香は、顔を赤くして答える。
「いえ、親方の手伝い程度で、たまにアイディアを」

麗は、ふん、と頷き、少し考える。
「希望があれば、親方と香苗さんと相談して、しっかりとした料理の勉強を」
「費用は、九条グループ全体の研修費用から」
驚いて胸を押さえる桃香に、香苗。
「ここの料亭も、鎌倉の香料店も、京都の香料店も、九条グループ」

麗が付け加える。
「理事会では内々に話が進んでいる」
「財団、銀行、不動産、学園、病院、料亭、店舗などは、大きな九条グループに統合」
「その中で、適宜適切に人事交流をする」
「その時に、確かな力を持っていた方が、本人にも周囲にも、九条グループにもいい」

葵も、笑顔で麗を補足する。
「桃香ちゃんが、財団勤務になるとか、そこで料理特集記事を書くとか」
「病院の看護師とは言わなくても、管理栄養士になるとか」
「不動産の勉強をしたければ、それでいい」
「香料店に出向するかも」

桃香の顔は笑顔になったり、蒼くなったりする。

麗は真面目な顔。
「いろんな仕事をして、また違う角度から、以前の仕事を考える」
「新しい発想が生まれて、自分のためにも、九条のためにも、京都のためにも、よくなるかもしれない」

桃香は、胸のドキドキが収まらない。
「ここで仲居をしていればいいかな、程度で・・・」

麗は、また桃香を真正面から見る。
「あくまでも、現場に混乱を起こしてまでの無理な人事はしない」
「ただ、ずっと九条グループに残る人、残ってもらいたい人には、そういう話をします」
香苗
「うちと、旦那が京都の料亭に戻ることもあるの」
「だから、自らを高めていて、損はないの」

麗は、少し恥ずかしそうな顔に変わる。
「九条グループも、京文化、日本文化の伝統を守りながらも」
「イメージを壊さない程度に、若者文化を取り入れたくてね」
「あまりにも古いものばかりだと、それも文化の先端地だった京都らしくない」

少し、間があった。
「ただ、この私に、どうも、若者文化に疎い部分があって」
「それと、ご存知の通り、やり切れないほどの仕事がある」
「桃香さんは、吉祥寺で、いろんな若者文化を肌身に感じていると思う」
「その中で、これは取り入れたいなあとか、取り入れたら面白いかなあとか、それを探してもらってもいいかな」

桃香は、また真っ赤な顔になった。
「あの・・・蘭ちゃんと一緒でも?」

麗は、クスッと笑う。
「ああ、いいよ、それは任せる」

桃香がホッとした顔になると、麗は一言付け加える。
「二人とも・・・あまり爆食散歩はしないほうがいいかな」

この言葉に、香苗と葵は、口を押えて笑い、桃香はビクッと身体を震わせる。

麗は、また笑う。
「あのね、京都での石仏調査の後、グループで伊豆の温泉で高足カニを食べる計画がある」
「その際に、恥ずかしくないように」

いつの間にか、香苗の旦那の花板まで出てきて、全員で大笑い。
桃香も恥ずかしいと思うけれど、それ以上に、麗の自然な笑顔や、皮肉気味の言葉までうれしくて仕方がない。
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