第166話麗の女性扱いは冷たい

文字数 1,166文字

学園長は、隣に座る妙齢の娘を紹介する。
「我が娘の詩織です、麗様と同い年になります」

紹介された詩織は、明るく御挨拶。
「詩織です、今日は麗様にお逢いするのが楽しみで」

麗は、その明るさに、少し引く。
「これは苦手なタイプだ、無理やり押しまくってくるタイプ」
「目の動かし方が、桃香に似ている」
「となると、激情タイプか」
と思うので、麗らしい地味な返事をする。

「そうですか、それはありがとうございます」
と答えるのみで、詩織は少し見ただけ、何の関心も示さない。

しかし、麗が予想した通り、詩織は積極的なタイプだった。
「麗様にも、源氏を教えていただきたくて」
「どうでしょうか」

隣に座る学園長の父親、そして理事たちも、笑いだすほどの積極性を見せる。
麗は、その積極性が気に入らない。

「私は本来は都内の大学で源氏を学び始めた段階」
「そもそも、教えるほどでもなく」
「詩織さんは、京都の大学ですね」
「地理的にも難しいのでは」
「それよりも、まずは先生の教えの通りに」
と、冷淡に返す。

しかし、詩織は気が強い。
言い出したら後には引かないタイプのようだ。
「麗様、そんなことを、おっしゃらないで」
「楽しみにしております」
と、にっこりと笑う。

麗が、困っていると大旦那が笑う。
「麗、女の子を、そういじめるもんやない」
「可愛がるんや、それが大事」

麗は、大旦那に言われては仕方がない。
「わかりました、出来る範囲で」
「お互いの勉強ということで」
と、懸命に理屈をつけて返す。

そんな話となり、学園側は笑顔、詩織は麗に握手まで求めて帰っていった。
今日の予定の面会を終えて、リビングに戻った麗は、かなり疲れている。

その麗を大旦那が笑う。
「ほんまに、女子に厳しいなあ」
「それ以外は、完璧やけど」

五月も麗を見て笑いをこらえきれない。
「何人、女の子をふったんやろね」
「桃香ちゃん、美里ちゃん、葉子もそうかな」
「さっきの銀行の直美ちゃん、学園の詩織ちゃん」
「明日も、あの冷たい言葉が楽しみや」
「聞いていて快感になってしもうたもの」


茜はクスクス笑う。
「麗ちゃんを射止めようと狙ってくる女の子たち」
「みんな可愛くて頭がいい子たちばかりや」
「それを、崖から突き落とすような気のない返事」
「で、落とされた女の子は、諦めきれないから、必死で這い上がる」
「それはそうや、九条家の後継者の嫁なんて、玉の輿そのものや」

麗は、ぼんやりと話を聞きながら、思った。
「そういえば、面会した女の子が二人とも京都出身か」
「それも、ここの九条家の遠縁」
「だから、何も心配なく、射止めようとするのか」
「となると、俺は差し出された女の子を選ぶだけ?」
「俺の気持は、どうなる?」
「そうかといって、こんなお世辞一つ言えない俺のことを本当に、九条など関係なく求める女などいるのか?」

そんなことを思い、麗の表情は暗くなるばかりになっている。
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