第282話第一回会議は無事終了 隆の見舞いに

文字数 1,250文字

石仏保存調査についての会議は続く。


「調査に協力していただける方々、お寺衆、街衆は、暑い中でのご協力になります」
「何らかの謝礼、形に残るもの、それでいて必要以上に作為を感じさせないものを渡したいと思います」
「あまり高価なものは、逆に相手が引いてしまうことも」

詩織
「うちも、賛成します、それは皆で考えを出し合って」
麻友
「調査に協力された人に、記念のTシャツとかタオルとか」
「それに加えて記念の小さなお地蔵様の石仏とかは?」


「それはスタッフとしての一体感を出せると思います」
「調査する人も、やりやすいのでは、しかし決して九条の名はいれないように」
「デザインはお屋敷の裁縫スタッフ、美大出身の加奈子さんと真奈さんを中心に」
加奈子と真奈も役目を与えられて目が輝く。

直美
「調査をするうえで、動画で記録を残して、後々映画とかは、どうでしょうか」
「それも記念になりますし、喜ばれると」

「上手に編集できれば動画サイトに掲載して、それが京の人の楽しみに」
「観光客にも喜ばれますね」


「記念誌も作りましょう、せっかくですから」

「日本語だけではなく英語でも、それはこの屋敷の涼香さんに訳をお願いしようかと、英語には堪能と聞いております」
涼香は、本当にうれしそうな顔で頷く。

そこまで話が進んだ状態で、麗は全員に感謝の意を伝える。
「本当に積極的な協力申し出、ありがとうございます」
「これで、組織の基本的な骨格はできたかと」

全員が頷くことを確認して、麗は次回の会議について話を進める。
「次回の会議は、基本的な実施計画について」
「日程は、二週間後の日曜日、この場所、午前9時くらいで」

この提案についても、全く異論はなかった。
そして最初の打ち合わせ会議は、関係筋全てが笑顔で帰宅し、無事に終了した。

全員を見送った麗の肩を茜が揉む。
「出る幕なかった」
「麗ちゃん、すご過ぎや」
麗は、ため息。
「ほぼ、成り行き任せで」
「少し疲れました、珍しく人前で話をして」
五月は目が潤んだまま。
「まあ、立派でした、大旦那にも報告しておきます」

しかし、麗は、軽く頷いただけ。
三条執事長を呼び、「隆さんのお見舞いに」と、休む間もない。
また茜も、一緒に隆の見舞いに行くことになった。

病院に到着、隆の病室に入ると、既に連絡を受けていたらしい晃が頭を下げる。


「葵祭、それから会議の後、お疲れですのに、ありがとうございます」
麗は、晃の肩を抱く。
「いや、晃さんも隆さんも見たくて」

隆は、麗を見て、また泣きそうな顔。
「麗ちゃん、社頭の儀で立派やったって、評判や」
「ああ、見たかったなあ」

麗は隆の手に下鴨神社のお守りを渡す。
「しっかりお願いしてきたよ、来年は一緒に斎王代さんを見られますようにって」
「いい?約束だよ、神様も応援するって話だから、隆さんも元気になって」
「そんな泣いている場合じゃないの、気合入れて」

ようやく涙を拭いた隆の手を、麗はしっかり握る。
「また、来週も来る、今度は東京土産だよ、楽しみに」

隆も、本当にうれしいのか、麗の手を力強く握り返している。
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